※緑谷出久先天性女体化
・十五歳以上推薦
・折寺中の時に爆豪が緑谷♀を強姦(?)しています
・処女喪失による出血表現注意
・緑谷♀が子供を産めません
15歳未満の方は目が潰れます
◆Gordius -act.1- ◆
そんなふうに思ってたのか。
出久は勝己からの攻撃に反撃しながら、彼の言葉を受け止めた。
今までの数々を振り返れば、受け入れるにはまだ気持ちの整理が追いつかないが、彼が感じていた疎ましさを知れたのは、良かった。
彼が、あんなことをしたのも、僕を遠ざけたかったからなんだ。と、出久はようやく腑に落ちた。
あんなこと……雄英高校受験の合否結果が出た後。
担任の先生から二人だけ呼び出されて激励された。折寺中学から初の雄英合格者が二人も出たのは喜ばしいことだと。
しかし、担任の目は出久だけを不審げに見ていた。
その後、出久は真っ直ぐに家に帰ることが出来ず、勝己に校舎裏へ連れ込まれた。
「クソナード、てめェどんな汚い手ぇ使いやがった!」
壁に追いやられている出久は勝己の威圧に条件反射で震えて萎縮するも、眉を立てて反論する。
自分は、勝ち取ったのだとその瞳に宿して。
「何もしてないよ!」
「生意気な口きくんじゃねェよ!」
そばかすの頬を片手で挟み押さえ、まともに喋られないようにする。
「ッハ、ブサイクな面」
涙目になる出久を前に勝己は自身の苛立ちを少し薄れさせる。
少しだけ冷静になった頭が、出久を見る担任の目を思い出していた。出久に向ける苛立ちに隠れていたが、思い出したら目の前が真っ赤に染まった。
「かっちゃん?」
出久は自分の顔を掴んでいた勝己の手が緩んだことで、声を出せた。しかし、彼への反論や弁解の言葉は口から出なかった。勝己の様子が変だと感じたからだ。
勝己はまた出久に苛立った。首を僅かに傾げて、心配そうな顔で覗き込んでくる。
「大丈夫?」
また。まただ。
川に落ちた自分に何も出来ない木偶の坊が助けてあげると手を差し出す。
「煩ェ!」
過去をぐちゃぐちゃに塗り潰すように、勝己は出久を突き飛ばした。
「い、たっ」
痛みを訴える声が耳に届いていたが、勝己は無視して家路に向かった。
次の日、他のクラスから下級生にまで雄英合格者が出たと知れ渡っており、勝己は教室の外に群がる人集りに舌打ちした。
「カツキのことだから、注目されたら威張ると思ってたんだけどな」
「お前それは、あれだろ?自分だけじゃないからだって」
ほら。と、勝己の周りにいるクラスメイトが出久を指差す。
教室の外からの視線が勝己ばかりにではなく、自分にまで向けられていることに出久はおどおどとビクついている。
「緑谷が合格するとはねー。まあ、すごいけどさ、無個性のはずじゃん?」
「どうやって合格したんだって話だよな。普通科ならまだしも、ヒーロー科だぜ?」
勝己もクラスメイト達と同様に疑問を抱いたままだ。何故、無個性の出久が名門校の雄英に合格出来たのか。
今時、無個性の人間は珍しい。地味で目立たない出久だが、この中学に通っている者で無個性なのは出久だけであり、学内では有名であった。教室の外に群がっている彼らも出久の存在は知っていたわけであり。
「あれが無個性なのに雄英に合格した緑谷だろ?」
「地味な子。ヒーローに向いてないんじゃない?」
「ああ。でもさ、見ろよアレ」
「うわ。おっきい」
「クラスで一番ってより、学内でも一番デカいんじゃね?」
彼らの視線は自分の席についている出久の胸に集中していた。
服を着ていても制服を押し上げる膨らみは平均よりもいくらか大きく、クラスの女子の中でも一番の大きさだった。
出久は外からの視線に顔を赤くして胸を隠そうとするが、腕で抱え込んだら余計に主張してしまった。慌てて、机に額をくっ付けるようにして俯く。
こんなになるはずじゃなかったんだけどな……。と、出久は俯いたまま、自身の胸を恨めしく見つめる。
オールマイトとの特訓を始めた頃は大きくなかった。むしろ貧乳に分類される大きさで、特訓を続ける中で大きくなっていき、オールマイトには「少年じゃなくて少女だったの?」と吃驚されてしまった。出会った時は出久が男子学生服を着ていたから勘違いさせていたのだ。
出久が日々書き溜めているヒーローノートを勝己に爆破され、校内で飼育している鯉の野外水槽に捨てられた。それを拾おうと思って、自分も落ちた。不本意ながらワンチャンダイブしてしまった。
それでずぶ濡れになった出久は、体育の授業もない日で体操着を持ってきておらず、保健室の先生に着替えを貸してもらった。男子学生服を着ていたのはそのためだ。
男の子扱いしててごめんねと謝るオールマイトを思い出して出久の気持ちはちょっと綻んだ。
オールマイトの言によれば、食事メニューなどの大幅な改変で急成長しちゃったかもね!とのことだ。かなり適当だった。
動きづらくて邪魔だなと思うし、他人からの視線も嫌で、出久は更に蹲る。
「身体で合格してんのかも」
「枕営業かよ。雄英も地に落ちたな」
下世話な会話が耳に入り、勝己は席を立つ。
声が聞こえてきた方、教室の外に群がる彼らの近くまで歩み寄り、睨みを効かせた。
ザッと、彼らが身を引いた。
「騒いでる暇があんなら、他人じゃなく自分に費やせや」
怒鳴らず、静かに声を低めているからこそ、余計に恐ろしさがあった。眼光も鋭く、誰もが息を呑んだ。
人集りはばらばらと散っていき、教室の外はがらんと誰一人いなくなる。
鼻を鳴らして勝己は自分の席に戻るが、途中で視線に気が付いた。出久だ。
間抜けな顔をしていたが、気に留めずに席についた。
自分の席に戻って、友人達と雑談している勝己の背中を出久は見つめていた。
ヘドロ事件以降、勝己が自分に突っかかってくることはなくなったから、さっき目が合っても何もしてこなかった。昨日は本当に久しぶりに突っかかってきた。
馬鹿にされたり、叩かれるのは嫌なのに、今日は何もされなくて……寂しかった。
けど、さっきのは自分のために外の人達を追い出してくれたんじゃないかと、少しだけ自惚れたくて、ずっと彼を目で追いかけていた。視線に気が付いてくれたことが嬉しくて、出久は頬を染めた。
だから、自分の気持ちを打ち明けられるかもしれないと、授業が終わった帰り道で前を歩く彼を呼び止めていた。
「かっちゃん」
面倒そうに苛立った顔だったけれど、呼び掛けを無視されたことは今までなかった。
振り返る勝己に出久は家に来ないかと誘った。
出久は緊張で一杯一杯だ。心臓が早鐘を打っていて痛いほど煩い。勝己が家に来るなんて幼稚園の時以来だ。
「お母さん今日遅くなるって言ってたからいないんだ。い、今、お茶出すね」
「いい。話ってなんだよ」
単刀直入に来ましたか。出久は冷汗を流す。
心の準備がほしい。
「ぅ。じゃあ、僕の部屋に」
せめてもの時間稼ぎに、自室に勝己を通した。
オールマイトのポスターやフィギュアだらけの部屋に一瞬眉を顰める勝己だが、何も言わなかった。内心でクソナードと呟くだけだ。
「座っていいよ」
「どこに座れって?」
言われ、出久は固まる。床にはヒーロー雑誌が何冊も散らばっているし、ベッドの上には今朝制服に着替える時に脱ぎ捨てた寝間着用のTシャツがのっていた。バッと慌てて片付ける。けれど、雑誌を纏めるのは時間が掛かる。先に整えたベッドを指差して出久は勝己を見上げる。
「ベッドに座ってください」
鈍臭い出久に溜息をついてから、勝己はベッドに座った。まだ雑誌を片付けている出久の背中が届くところにあったので、勝己は蹴った。
「イタっ」
床に突っ伏した出久は鼻を押さえて勝己を振り返る。
「何すんだよ」
「話があるって言ったのはてめェだろ。待たせんな」
「うぅ」
片付けでもう少し長引かせられると思ったのだが、出久は落ち着かない胸を押さえて勝己の隣に腰を下ろした。少しだけ間をあけて。
「あのさ……一緒の高校に行くんだし、かっちゃんとその、なんていうか、関係をね、えと、だから」
「清算したいんか」
「え?あー、うん、そんな感じになるのかな?」
言い淀んでいる出久に勝己の言葉が挟まれ、出久は頷いていた。これから新しい関係になるために今までの清算は必要だと思ったからだ。だから、今までの、勝己からの暴力も暴言も嫌だったけれど、許せないわけじゃないことを伝えようとした。
けれど。
「え」
出久は勝己に押し倒されていた。
出久は顔を赤らめるが、痛みに気付いて眉を歪めた。両手首を勝己の分厚い手がギリギリと掴んでいる。
「痛いよ、かっちゃん」
離して。と、出久はもがいたが、勝己はビクともしなかった。十ヶ月も身体を鍛えたのに、勝己にはまだ到底足元にも及ばないことに悔しやが募る。同時に、勝己の凄さも思い知らされて、やっぱり彼を追いかけたいとも思う。
「話、まだあるんだ」
痛みを堪え。出久は、今日こそ勝己に告白するのだと、彼の目を真っ直ぐに見据える。
「その目がムカつくんだよ」
「っ、」
苛立たしい勝己の唸り声に出久は萎縮する。嫌われているのは判っていたことだ。けれど、少しだけ期待したのだ。ヘドロの事件から彼の態度が少し変わって……。今日だって、野次馬を追い払ってくれた。
全部、勘違いだったっていうのか。
涙が溢れた。目尻を流れ、シーツに染みをつくる。
勝己に女を泣かせた罪悪感はない。出久はいつも泣いているし、泣きながらもあの目をする。生意気な目を。
「言いたいことがあンなら、言えよ」
「ない、よ」
出久は勝己に刃向かう目を向けていた。勝手に期待していた自分が悪いのだと理解していたけれど、往生際悪く納得出来なくて。
「じゃあ、清算してやるよ」
「な、なんで」
「話はもうねェんだろ。なら、清算だけさっさと済ませて終わりだ」
何を清算すると言うのか。出久には見当が付かず、瞬きを繰り返す。
この状況で何も察しないどころか、疑いも抱かない幼馴染に勝己は眉間を詰める。
出久の体付きが変わったことにさして興味などなかった。勝己の中で出久は出久であって、変わってなどいないのだから。
けれど、出久の雄英合格を褒める担任の含みを持った嫌らしい目付きに始まり、教室前で騒いでいた野次馬達の下賎な卑しい目。あれに胸糞悪くなった。
それらの原因は出久だ。全部、出久がいるからだ。
クラスの男どもが触ってみたいと言っていた出久の膨らみに勝己は手を伸ばした。
セーラー服の上からだが、勝己の手に胸を触られた出久はビクッと身震いする。
「え。え?」
混乱する出久は勝己の手を止めることなく、不思議そうに上に乗っかっている彼を見上げる。
意図的な触り方ではなく、初めて揉むとばかりにちょっと辿々しくて、勝己でも何でも最初から思うようにこなせない時もあるのだなと妙に感心していた。
けれど、片手だけだったのが両手になり、だんだん大胆に揉み始めるものだから出久の息があがってくる。
想像していたのは、ボールみたいにパンパンの感触だったが、触れた瞬間にふわっとした柔らかさであったことに驚いた。指が沈み込むような感覚に勝己は躊躇う。
しかし、ここで逃げるなんてことは出来なかった。出久から逃げるなど、出来るわけがない。自分のプライドが許さないと、勝己は驚いて困惑している出久を見て見ぬ振りをして、彼女の胸を揉み続けた。
両手で触り初めてから、それほど経ってもいないとき。出久の荒い息遣いに気付いて勝己は顔を上げた。
胸から、彼女の顔に視線を移せば、瞳を潤ませて頬を染めていた。眉を悩ましげに寄せ、唇は半開きになって乱れた吐息を零している。
「は?」
そんな顔は知らない。自分の知っている出久じゃない。
わからないヤツが、余計にわからない顔をしている。勝己の頭に血が上った。
「いッ、たぃ、かっちゃん」
胸を力の限り掴んだ。すれば、出久はよく見せる顔をした。怯えて痛がる顔を。
出久は痛みを訴えている。その事実に勝己は酷く安堵した。
こうすればいいのだと、理解した。
出久の母親にバレないように、セーラー服を丁寧に脱がしていく。
「ま、待ってよっ」
当然、出久が制止の声をあげるが、勝己は構わずに手早くスカートも脱がせた。
下着だけになった出久は自分の身体を抱き込む。勝己がどうするつもりか、なんてこの先はそれしか思い付かないのだけれど、自分は気持ちを伝えただろうかと疑問する。いや、していないと自答した。
「その、す、するなら、順序を」
「クソデクの意見なんざ知らねェよ」
「や、だって、さ」
勝己とするのは厭ではない。彼は馬鹿にしてくるし、暴力も振るうし、正直とても嫌な奴だ。だけど、出久は彼を嫌っているわけではなかった。
小さい頃からずっと羨望の対象だった。その気持ちは嫌悪なんか凌駕している。だから。
「待って」
言っても、勝己は聞く耳を持たず、触れてくる。
そう簡単に壊れるものじゃないと胸を触って判ったのか、勝己は加減をせずに出久の足を掴み、引っ張る。体制を崩した出久に再び馬乗りになり、勝己は彼女の首筋に顔を寄せる。
近付いてくる勝己の顔に出久は緊張してしまう。この流れは許してはならないのだが、先を期待している自身を止められなかった。順番が違うけれど、勝己は後で想いを告げてくれるのではないかと。だって、嫌いな相手にこんなことしないよね?と出久は首のこそばゆさに身じろぐ。
「ん」
濡れた感触がある。勝己の舌が舐めているのだ。
言い知れぬ高揚感があり、出久は抵抗しようと持ち上げた手をシーツに下ろした。
天井にまでポスター貼るんじゃなかったな……。と、出久は少し後悔しつつ目を閉じた。勝己が舐めている湿った音が耳朶に響く。舌が素肌を這う感触もクリアに感じて、びくびくと身体が震えた。
一度、勝己の気配が遠退いて、出久は瞼を持ち上げた。けれど、勝己は再び首筋に顔を埋めてきて、噛んだ。
「痛っ」
右肩を思い切り噛まれた。
勝己が顔を離したところで右肩を見る。血が滲んでいる。痕になることはないだろうけれど、もっと加減してほしかったと、恨みがましく勝己を見上げる。
「抵抗、しないんかよ」
ここで今更、と思わなくもない。けれど、出久はとうに抵抗を諦めている。自分は、この先を望んでいるのだから。
「かっちゃんが、したいなら……いいよ」
勝己の顔を見ては言えず、出久は視線を横に投げながら言った。
だから、勝己がどんな顔をしていたかなんて知らないのだ。
傷ついた顔をしていたなんて。
自暴自棄な出久の言葉に勝己は苛ついた。初めてなら、もっと違う言葉が出ていたはずだと。
教師や野次馬達の妄想が本当なら。こいつは。
やったのか?本当に?
「おい」
出久は勝己に呼ばれて視線を戻した。彼は眉間に皺もなく、綺麗な顔だった。けれど、それが余計に怖かった。
「かっちゃん?」
「大人しくしてろ」
確かめるから。
いつにない勝己の様子に出久はゾッとした。
抵抗しようにも、彼の大人しくしてろが呪詛のように出久を縛っていた。暴れたら、もっと酷いことになるのだと。
ブラジャーの下に手を差し込んで、勝己は直に出久の膨らみに触れる。指に引っ掛かるものがあり、両方摘んだ。
「ひぁ!?」
出久は変な声を出してしまったと自分の口を手で塞ぐ。
勝己はずっと胸の先端にある色づきを摘んだまま、コリコリと指の腹で弄っている。そこが硬くなっていることが恥ずかしくて堪らず、出久は目に涙を溜める。
「ん、ぁ……ゃ、やだぁ」
「うるせェ」
もうやだと、出久は勝己の肩に手を伸ばしたが、彼に振り払われる。
勝己の手はブラジャーをずらし、乳房を外気に晒した。
「や、やだ、見ないで、やだ」
ブラジャーを元に戻そうとする出久の手を勝己は掴み、動かなくする。
出久は勝己の唇が自分の胸に降りていくのを視界に捉えて固まる。
「待って、ゃ、やだ、かっちゃん」
先端から口に含まれた。舌に転がされて出久の身体が跳ねるが、勝己に乗られていて殆ど動けていない。行き場のない感覚が下半身に集中する。
口に含んでいない方の乳房を手で捏ねながら、勝己は出久の顔を見る。嫌な表情だった。
イライラするからこれは嫌な顔だと決めつけ、勝己は歯を立てた。出久の表情が歪み、勝己は落ち着く。
さっきからこれを何度も繰り返していた。嫌な顔をしたら嫌じゃない顔をさせるのを。
口を引き剥がし、乳房を両手で掴む。勝己の手には余るほどたわわな果実は零れ落ちそうなほどの大きさだ。こんなに大きい意味があるのか不明だが、挟んだら気持ち良さそうだと思った。
勝己は好奇心で、出久の谷間に顔を埋めた。悪くない。
「かっちゃん?何してるの?」
出久から問われ、勝己は動きを止める。バッと顔を離して出久の頭をギリギリと鷲掴む。
「いたいいたいいたいいたいいたい」
「うっせェ!喚くな!」
痛みにのたうちながらも、出久は勝己の顔を盗み見る。真っ赤だ。
初々しい勝己の反応に可愛いと思ってしまった出久は彼につられて自分も真っ赤になる。
「……なに赤くなっとんだ。キメェ」
それを君が言うか。出久は赤い顔を隠すように両腕を交差させる。
「だ、だって、そこに挟むなら、下の、でも」
「下?」
「だからさ、下の」
ごにょごにょと要領を得ない出久に勝己は苛立ち、彼女の頭に再び力を入れた。もうそれは勘弁してくれと、出久は片手を顔から離して、自分の腹、に乗っている勝己の下半身に恐る恐る触れた。
出久の指先が僅かに触れた場所を勝己は見下ろす。
「これ、です」
指で少し触れただけだが、勝己の中心は硬かった。つまり、これは……僕の身体で興奮していると思っても良いのでしょうか?と、出久は胸を高鳴らせる。
恥ずかしさに目を伏せる出久の表情が勝己には物欲しそうにしているように見えた。
「淫乱」
侮蔑の眇めで吐き捨てられ、出久は身を縮める。
その間にも、勝己はズボンの前を寛げて下着から自身を取り出し、出久の胸に触れさせた。
「てめェのお望みのもんだ」
自分の谷間に勝己のものが挟まれている状態は出久にとって凄い光景だった。
彼を包み込むように自分の胸を手で外側から持ち上げれば、勝己の両手が此方の肩を掴んできて出久は唇を震わせる。
「う、動いていいよ」
「…………」
無言の勝己に出久は身構える。罵倒されるのではないかと。しかし、彼が口を開くことはなく、苦虫を潰したような顔をして、腰を揺らし始める。
勝己の表情が耐えているものならまだ良いのだが、そうだとは感じられず、出久は不安になった。
谷間から頭を覗かせたり隠れたりする逸物が硬さを増すにつれ、胸が焦がれるのに、出久の不安は消えなかった。
「ッ…………ハ、」
勝己が食いしばるような息を吐き、彼の先端から粘り気のある白濁が飛んだ。
顔に掛かったそれに出久は顔を歪める。
「ク、さ……」
青臭い。
精液が飛んできたことよりも臭いの方が強烈で、出久は頬に付いた白濁を指で拭う。
出久の反応が気に入らず、勝己は自身を彼女の口に突っ込んだ。
「うぐッ」
「オラ、しっかり残り汁も吸いやがれ、クソデク」
「お……ぐぅ、ぅ」
独特の粘りと臭いに吐き気が襲う。それに苦い。
えずこうにも、口の中がいっぱいで吐き出せない。苦しさに出久の大きな目に涙が溜まる。
「デク?」
首を傾げる勝己に気付いて出久は舌を動かした。窒息しそうになっていると思われたら勝己のことだから内申に傷がつかないよう止める。折角、雄英に合格したのだ。下手なことは絶対にしない。
出久は今、やめてほしいわけではなかった。
舌で裏筋を舐め上げて吸えば、口の中の肉棒はビクビクと震えた。意思を持って動いているようで、出久は必死に舌を絡める。
再び勃ち上がり始める自身を勝己は出久の口の中から引き抜いた。自分の手が触れるより先に出久の手がそれを捕らえてしまう。
両手で愛おしそうに撫でる彼女に勝己は息を呑む。
「かっちゃん、かっちゃんのすごい」
亀頭を指先で円を描くように撫でられ、勝己は身を引いた。得体の知れないものを出久から感じて。
「かっちゃん?」
自分に手を伸ばして来る出久の手を勝己は振り払った。
「いたッ」
「なんなンだよ!てめェは!!」
「な、何?どうしたの、かっちゃん」
「うるせェ!喋んな!」
それから、ショーツも剥ぎ取られ、慣らしてもいない秘部にいきなり突き上げられた。出久は混乱したまま乱暴に揺さぶられて悲鳴をあげる。しかし、すぐに勝己の手に口を塞がれて声をあげられなくなった。
「……ぅ、……ぐ、ぁ」
隙間から洩れる喘ぎはか細く、室内には湿った音と肌を打ち合う音が鮮明に響き続けた。
よく判らないまま出久は果て、勝己もまた、彼女のなかに果てを注いだ。
荒い息を吐きながら勝己は自身を引き抜き、出久を見下ろした。引き抜いた場所から血が流れていた。
目を見開いて固まる勝己を出久は気怠げな顔で見上げる。ことりと首を傾げれば、汗で湿った髪が頬に張り付く。
「……かっちゃん?」
この期に及んでまだ純粋な目でどうしたの?と尋ねてくる出久に勝己は狼狽える。
「てめェ……初めてなんか……」
「ん?……うん」
ゆっくり背を起こした出久は自分の足の間に赤い染みがあることに気付いて、勝己が何を訊いているのか理解した。
「そうだよ」
へらりと笑った出久に勝己は悍ましいものを背筋に感じて、自分の鞄から筆記具を取り出した。
出久の頭を押さえつけてベッドに戻す。
「いっ」
顔を顰めて目を閉じた出久だが、左耳にザクッと音がして目を見開く。
横目に左を視認すれば、首から数センチ離れた場所にカッターの刃が突き立てられていた。
ヒッ、と息を呑んだ出久は怯える目で勝己を見上げた。震えでカチカチと歯が鳴った。
怖がる出久に勝己は満足しなかった。苛立ちも消えなかった。
「動くなよ。切れるぞ」
感情のない勝己の忠告に出久は小さく頷いた。
勝己は大人しく横になっている出久の足元に座り込み、筆記具から適当なものをいくつか一掴みで手に取った。
シャーペンやボールペンなどを握れるだけ握る。十本以上あれば、勝己のそれよりも太いものが出来上がった。
出久の足を左右に広げて身を寄せる。勝己の手にあるものを目にして出久は身体を硬くした。
「かっちゃん!や、やだやだ!それ、やだ!そんなの入らない!やだよ!」
勝己に出久の声は届くことなく、彼は慈悲もなくそれを秘部に突き入れた。
全てが終わった後、勝己はチクッたら殺すと吐き捨て、出久に釘を刺した。
あの時の、あんなことを思い出した出久はフゥと息を吐き出す。自分に本気で攻撃を仕掛けてくる勝己の一撃をガードし、激情を聞き入れる。
わからない。目障り。
それが勝己の本音だ。何を考えているのかわからないから、殴って遠ざけた。なのに、追い掛けてくるから目障りだった。
だから、あんなことまでしたんだ。
あれは、勝己にとって不本意な行為だったとしたら――――だとしても、自分は曲げられなかった。
出久は五パーセントを維持していたフルカウルのチカラを引き上げ、八パーセントまでギアを上げる。
君が、凄い人だったから。追いかけていたんだ。
出久の本音だ。ずっと憧れていた。オールマイトへの憧れとは似て非なるものだ。
ずっとずっと、身近にいた凄い人。彼に近付いて、触れたかった。
「好きだったんだ!」
「!」
出久の左拳が勝己の右頬に入る。しかし、勝己は緩まず、出久の身体を地面にねじ伏せ、押さえ込んだ。
決着がつき、勝己が勝利した。
何を敗けているのだ。あの人から個性を譲り受けておいて、何故敗ける。
呻いている出久に馬乗りになっている勝己は、奥に仕舞っていた過去を重ねた。自分が出久に覆い被さる、部屋に散らばるセーラー服、シーツを汚す赤色。
咄嗟に離れようとしたところで人影が近づいてきた。
骸骨のようなその姿は、オールマイトだ。
出久から離れるが、彼に負い目がある勝己は視線を投げた。しかし、オールマイトが歩み寄ってくる。君も少年だったと、慰められる。
歯を食いしばって俯く勝己を、出久は静かに見つめていた。
勝己が出久を呼び出した当初の発端は、出久の個性に関してだった。
出久の個性はオールマイトから譲り受けたものであると見抜いた勝己には、これ以上隠し通せない。オールマイトは自身の秘密とワン・フォー・オールについて、勝己に語った。
勝己の理解は早く、混乱もなく全てを咀嚼した。適応力の高さにオールマイトは目を瞠る。だが、これがいけなかったのだと自分を叱咤した。勝己はまだ大人ではない。同列に扱うことは失礼にあたる。
全寮制の説明と今までの謝罪のために各家庭を周り、勝己の家庭にも頭を下げに行った。ご両親、特に母親からの言葉と態度に勝己が両親にとって大事な一人息子であることを痛感させられた。
三人で相澤の元に向かう道すがら、勝己の背中を出久はじっと見つめていた。その様子に気付いたオールマイトは出久にこっそりと耳打ちする。
「緑谷少年、言っちゃったけど、どうするの?」
「え?」
オールマイトは出久のことを今も少年と呼んでいる。最初の勘違いからずっと出久が訂正しなかったからだ。出久本人は憧れのオールマイトが目の前にいることに意識が持っていかれていたために、気にしていなかっただけなのだが。
胸の急成長で、ようやく出久が女の子だと気付いたオールマイトは少女と呼び直そうかと提案したが、出久は彼を煩わせるのも気が引けて今まで通りでとお願いしたのだ。
だから、少年と呼ばれたことに疑問したのではなく、オールマイトが気にするようなことを自分は何か言ってしまっただろうかと出久は首を捻った。
「ほら、爆豪少年に好きだって言わなかった?」
ごめん、聞こえちゃった。と、続けられて出久はボンっと音をさせて真っ赤になった。
「あわ、わわ、わ、わ」
あれは勢いで言ってしまったのだと弁解したかったが、言ってしまったものはもう取り返しがつかない。
慌てふためいている出久にオールマイトは自身の顎を掴む。
出久から勝己の話は何度か聞いている。彼が自尊心の塊であるだとかは、そこから導き出した答えだ。しかし、別のことにも気付いていた。出久が勝己に好意を持っていることに。
応援したいところだが、勝己の方がどう思っているのか全く見当がつかなかった。オールマイトが勝己へ視線をやれば、彼は此方を振り返っていた。
ずかずかと近付いてくる勝己は出久の左手を掴み、引っ張る。
「てめェら、何ちんたらしてんだ。朝になっちまうだろうが!」
「ご、ごめん」
二人の背中にオールマイトは目をぱちぱちさせる。そんなオールマイトに勝己の罵声が飛んでくる。
「オールマイト!置いてくぞ!」
「あ。待って待って。先生を置いていかないで」
三人で相澤の元に行けば、早速相澤が勝己と出久を捕縛武器の布で拘束した。慌ててオールマイトが止めに入る。
喧嘩の原因を問い質し、オールマイトが無難な答えを説明してその場は凌いだ。相澤には個性譲渡の件などは秘密だ。
勝己には四日、出久には三日の寮内謹慎及び寮の共有スペース清掃が言い渡された。
拘束を解いた相澤は溜息を零し、救急箱を二人の間に置いた。
「応急処置はここでしていけ。またすぐ喧嘩を始めないか監視させてもらう」
「は、はい」
「…………」
ビンから消毒液を染み込ませた綿をピンセットで摘み、勝己は出久の傷に押し当てる。
「ん。沁みるぅ」
「我慢しろや」
「う、うん。……いた……ぁ、ぁ」
相澤とオールマイトは変な顔をした。
勝己は青筋を立てる。
「キメェ声出すな。殺すぞ」
「え。ぁ、うん」
一通り消毒してもらった出久は、今度は自分の番だと勝己からピンセットを受け取ろうとしたが、彼は渡してくれなかった。
「かっちゃん?僕がやるよ?」
「下手くそだから嫌だ」
自分でやったほうがマシだと、勝己は新しい綿を摘んで、自身の傷を消毒する。
しょげる出久にオールマイトは「相澤君、相澤君」と相澤に助け船を求めるが、不器用な出久が勝己を手当てするより本人がやってしまったほうが「合理的でしょ」と取り合ってもらえなかった。
幼馴染である勝己が下手くそだと言うのだから、出久はまともに手当て出来るほど器用ではないということだ。
けれど、右頬を消毒するのは勝己も手間取った。鏡がないと見えない場所だ。
「かっちゃん、顔だけやらせてくれないかな」
「……チッ」
ピンセットを渡してもらえた出久は喜ぶ。
新しい綿がいいかなと、ビンの消毒液に浸かっている綿を一つ摘むが、上手く掴めずにポロっと落とす。ビンの中に何度も落とすので、オールマイトと相澤は顔を見合わせる。
流石に口出ししようかと相澤が口を開くが、勝己が動くのが早かった。
ピンセットを持つ出久の手に自分の手を重ね、綿を摘む。
「力抜くなよ。そのまま持ってろ」
「う、うん」
勝己が手を離しても、出久は綿を落とさなかった。
気を抜かないように息を止めて、出久は勝己の頬を消毒し始める。沁みるのか、勝己が右目を閉じて僅かに顔を顰める。
ビクッと手を引っ込める出久からピンセットを奪い取り、勝己は横に置いた。
「もういいわ、下手くそ」
「ごめん」
勝己は謝る出久の顔を見ずに湿布と絆創膏を救急箱から取り出す。
腕や足に互いに貼り終え、出久は勝己を見遣る。
「背中とか肩も蹴っちゃったと思うんだけど、貼ろうか?」
「…………」
勝己は無言でシャツを脱いだ。それから出久に背中を見せる。
背中の筋肉も綺麗だと見惚れていたが、いけないいけないと、出久は湿布の保護シートを剥がして、色の変わっている場所に貼り付ける。
数カ所貼り終え、勝己はシャツを着る。振り返れば、出久が自分のシャツを胸前まで上げており、勝己は咄嗟に彼女のシャツを下に引き下げた。
「馬鹿か!てめェ!」
「え?」
「男の前で脱ぐんじゃねェ!麗日あたりにやってもらえ!」
「で、でも、相澤先生が手当ては二人でしろって……それに」
出久は勝己を上目に見遣り、唇を尖らせた。
「僕、かっちゃんがいい」
「クソ我が儘をッ」
ギンッと勝己に睨まれた相澤は頭を掻く。怪我は二人でどうにかしろと言ってしまった手前、訂正しにくい。
ここで自分達の目の前で出久に脱がれても面倒だし困る。
妥協案を出した。
「俺とオールマイトさんは後ろ向いてる。さっさと手当てしてやれ、爆豪」
「な……!」
サッと相澤は背中を向け、オールマイトも背中を向けた。
「脱いでいい?かっちゃん」
「……後ろ向いて脱げ」
「わかった」
背中を見せてシャツを脱いだ出久の背中を勝己は見下ろす。
滑らかな曲線を描く背中から腰のラインをまじまじと見つめそうになって、視線を逸らす。
湿布を手に取り、腰のあたりに貼る。
「ひゃっ、ぁ」
「声出すな」
「だ、だって、かっちゃんがいきなり」
「じゃあ、次だ」
「っ、んひぁ!」
「だから声出すなっつってんだろ!」
相澤とオールマイトは後ろを振り向くわけにもいかず、互いに目配せする。
「おい、爆豪。いかがわしいことしてないよな?」
「ああ!?俺をブドウ頭と一緒にすんな!」
「あー。悪い」
疑ってはいないのだが、どうにも会話だけ聞いていると変だったので、口を挟んでしまった。
「デクがキメェ声出すからだ!クソが!」
「いってぇ!」
相澤に変な勘違いをされて苛立った勝己はバチン!と出久の背中に湿布を叩き貼った。
今のは見ていなくとも、二人が何をどうしたか想像に難くなかった。
「ああー、爆豪。先生が悪かったが、そういうのはやめなさい」
「チッ」
相澤に窘められ、勝己は舌打ちした。
苛立っている勝己を出久はおずおずと振り返る。目が合うと、勝己は息を吐く。
「はよ着ろ」
「いや、その前にさ。背中の湿布、ブラジャーのホックの上に貼ってない?」
「外して貼れってか!?何様だてめェ!」
「う……いいよ、これで」
出久はいそいそとシャツを着る。
勝己は治療薬などを救急箱に戻して閉じ、それを相澤に返すために背中に近付く。
「終わった」
「よし。戻っていいぞ」
振り返った相澤は救急箱を受け取り、勝己に視線をやってから出久にも反省しろよと声を掛ける。
返事をして立ち上がる出久は扉に向かう勝己を呼び止める。
「待って、かっちゃん。あ、後で話があるんだけど」
「あ?」
振り返る勝己の視線の先には思い詰めているが、何かを決意した顔の出久がいた。
「後って」
「緑谷、爆豪に話があるなら今言え」
勝己を遮り、相澤が前に出た。
後で話し合って再び喧嘩を始められては此方も困るのだ。謹慎だけで済ませられなくなるぞと、相澤は出久に厳しい目を向ける。
「い、今ですか!?」
「謹慎中に互いを呼び出すのは禁止だ。掃除中の会話までは禁止しないが、無駄口は控えろ」
「……分かりました」
出久は勝己へと一歩前へ進み出る。
今、言う決断をしたらしい。
紅い瞳を真っ直ぐに翠の瞳が見つめる。
「付き合ってください!」
言い切ってから頭を下げ、出久は傷だらけの右手を差し出した。
勝己はその手を見下ろし、自分の手を持ち上げ――振り払った。
パシッと乾いた音がして、出久は痛む手を震わせて勝己を見上げた。
「断る」
話は終わったとばかりに勝己は扉の向こうへと行ってしまった。
出久はダメージを受けてその場に膝と両手をついた。
「……ちくしょう!」
落ち込む出久に相澤は片膝をつく。
「すまん、緑谷」
まさか交際を申し込むとは思いも寄らず、無神経だったと相澤は自分の非を認める。
後ろにいるオールマイトから喧嘩中に出久が勝己に勢いで好きだと言ってしまったんだよと小声で教えられた。それ故の告白だったらしい。
ふらふらと立ち上がった出久は相澤のせいではないと、かぶりを振った。
それから頭を下げて出て行こうとしたが、待ちなさいと相澤に止められる。
「座れ」
「はい……」
何だろう?と出久は疑問顔で向かいに座る相澤を見つめる。横に立つオールマイトも不思議そうな顔だ。
「教師が口出しすることじゃないけどな、注意だけは聞け」
「えと、何でしょうか?」
「恋愛は自由だ。だがな、授業に集中出来なかったり、成績に響くようなことがあれば除籍する」
「あ、相澤君!?」
オールマイトが相澤の肩を掴んでそこまで言わなくとも、と抗議する。だが、相澤はきつい目付きでオールマイトを見遣る。
「統計の話です。恋愛感情が邪魔をしてヒーローを諦めた生徒は多い。原動力になったのは一握り。俺たち教師が把握出来ていない例もあるが、一番不味いのは何か分かりますか?」
「不味いのって、ええっと」
「生徒の妊娠です」
ガタっと硬直するオールマイトに相澤は額に手を当てて、更に告げる。
「その場合は学校側にも責任問題が問われます。貴方も他人事ではありませんよ。生徒の性教育もまともに出来ないのかと世間から糾弾され、外も歩けなくなります」
平和の象徴引退に加えて、教師としての責任問題が発生すれば雄英に多大な迷惑を掛けることになるのだと、相澤はオールマイトに諫言する。只でさえ、世間からは雄英の敵に侵入される現体制に関して不満と不審が募っている。
「あ、あの」
先生達が話し合っているところ悪いのですが、と出久は小さく手をあげる。
「僕、子供産めないので大丈夫です」
「は?」
「え?」
相澤とオールマイトが固まる。
二人からの視線に出久はだらだらと冷汗を流す。説明しないと納得してもらえないよな、と出久は意を決する。
「前に……入学前に、レイ、プ……されて、その時、傷付いてたらしくて、すぐに病院行かずに放って置いたら、手遅れになってて」
いつの間にか俯いていた出久は顔をあげて、あははと笑う。
「子供産めない身体になってました」
ふわりと浮いたような気がした後、出久はぎゅっと抱き締められていた。
「オールマイト?」
「……辛い思いをしていた時に、側にいてやれなかった」
役に立てなくてすまなかったと謝るオールマイトに出久は視線を下げる。
貴方が気に病むことなど何一つないのだから。これは、自分が招いた結果だ。
「僕が頑張ってこられたのはオールマイトがいたからです。だから、謝らないでよ、オールマイト」
出久の様子に目を細めた相澤はオールマイトに席を外すように言う。
躊躇うオールマイトだが、担任として出久に大事な話があると断言されれば、彼も従うしかない。
「先に失礼するよ。おやすみ、緑谷少年」
「はい。おやすみなさい」
扉からオールマイトが出ていき、相澤と二人きりになった出久は背を正す。
「緑谷」
「は、はい!」
「嘘ついたな」
「はぃ……あー」
狼狽える出久は視線をあちこちに彷徨わせる。
「嘘をつくとき、人は後ろめたさから相手の目を見られなくなるんだよ」
流石、イレイザーヘッドだと、出久は諦めの溜息を洩らした。視線が左右する個性を持つ相澤を誤魔化すことは出来なかった。
相澤は出久の視線の動きを始めに嘘だと気付いたが、他にも引っ掛かりはあった。
強姦なんてされれば、多少なりとも男に恐怖心を抱くものだ。それが出久には一切ない。
厭な記憶だと心に傷を負っていない。出久に限って言えば、彼女は痛みに鈍感なところがあるが、それを差し引いても可笑しかった。
「全部が嘘じゃありません。子供が産めないのは事実だし」
「爆豪か」
肩を跳ねさせた出久に当たりだなと相澤は嘆息した。出久が庇う相手で思い付くのは勝己くらいだ。入学前なら尚のこと。
「かっちゃんが悪いわけじゃないんです!合意、ではなかったかもしれないけど、無理矢理ってわけでも……」
「それで片付けていいのか?お前は」
「かっちゃんには、言わないでください」
「爆豪がどう思ってるかは知らないが、緑谷が一緒になりたいなら、それ言わずにってのは虫のいい話じゃないか?」
「……それは」
判っていると俯く出久に相澤はまだ一つ判らないことがあった。
「お前なら、爆豪の個性を子にのこしたいと考えると思ったんだがな」
相澤は知らない。出久が本当は無個性であることを。
一番、出久が恐れていたのは、自分の子供も無個性で産まれてきてしまうことだった。
だから、その恐怖がなくなったことに感謝していた。無個性の子供は産まれてこない。
「僕は、何も後悔していません。むしろ、恵まれすぎているから」
オールマイトからワン・フォー・オールを授けられて、雄英高校にも入学出来た。女としての将来の不安もなくなった。
引き換えに綺麗な右腕と母になる身体を失ったけれど、それでも、出久は払うものが少なかったくらいだと感じている。
「最高のヒーローになる夢は諦めていません。かっちゃんのことも諦められません」
強く、瞳の色を濃くして告げる出久の言葉は本物だ。
相澤は参ったなと、目を伏せる。どちらかを選び取るのではなく、どちらもだと出久は譲らない。
フラれていたのに。
「爆豪のあの様子だとそう簡単にいかなそうだし、まあいいか」
「せ、先生〜」
望みは薄いと言外に言われて出久が涙目になる。
「頑張れ。解散」
「えええええ!?」
出久は真面目な会話を投げ捨てられたことに椅子から立ち上がって抗議するも、俺も眠いから寝ると相澤に追い出された。
言い忘れていたけど。
これは僕が最高の幸せを掴む物語だ。
◆後書き◆
にょた。
思っていたより明るい話になってしまいました。かっちゃんヒドイけどそれ以上に出久ちゃんがポジティブすぎてヒドイ。開き直ってシリアスギャグラブコメディにします!シリアスは合いの手のように入れる。
猛アタックする緑谷♀、攻略できない爆豪。な感じで続き…ます?
原作読み返したら相澤先生ちゃんと二人手当てしてから捕縛武器で拘束しててやっちまったんですけど、書き直す部分多くなるのでこのまま(汗)。
更新日:2018/01/08
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