◆疑惑≠信用+MARGINAL◆










紅葉の季節がやってきた。
東京という都会の地と無縁ではないかと思われるかもしれないが、何処にだって穴場ってものはある。
公園より更に奥の細道を抜けると、綺麗な楓通りが広がっている。
二日前のジョギング中に見つけた。いつもと違う道を曲がってみるのも良いものだ。

コンビニの仕事帰りにふらりと立ち寄る。
夜中から働き詰めの身体に太陽の光は眩しいけれど、昼時の長閑な空気は心地良い。色付く楓も風情があってとても見応えがある。
女の子はこういうの好きな気がする。和歩やマコト先輩にも散歩コースにどうかと勧めてみるのもありかな。ベンチでもあれば、紅葉狩りにも最適なんだけど。

前に来た時は隅々まで眺めなかったから見逃しているかもしれない。腰掛ける場所がないか確認するためにも散策あるのみ。
俺はトコトコ歩き進め、遠目に誰かが並んで座っているのを見掛ける。どうやらベンチがあるらしい。

歩き進んでいるうちに、俺の足は止まった。ベンチに座っていたのが緑谷君と爆豪君だったからだ。
まだ少し遠いところから声を掛けようと手をあげた……んだけど、空中で止まった。不自然に手をあげたままの姿勢で俺は二人の雰囲気に言葉を失う。

なんていうか。あまりにも綺麗だったんだ。

紅い楓を一つ指で摘んで持っていた緑谷君のもさもさの髪に新しい楓が一枚だけ上から舞い落ちた。
彼の髪に引っ掛かった楓を隣に座る爆豪君が手に取る。
爆豪君の口が開かれ、何かを言いながら悪戯っぽく笑った。そんな無邪気な顔は今まで見たことがなくて吃驚した。
そんな笑顔を向けられた緑谷君にとくに驚いた様子はなく、見慣れた自然なものと受け入れているような雰囲気があった。

まだ爆豪君が何か言っているけど、ちょっとだけ表情が変わった。次に緑谷君の表情が大きく変わる。頬を染めて、恥を少しでも隠そうとするかのように、自分が持っている楓で唇を塞ぐ。
楓で見えないが、緑谷君の口が動いているらしい。爆豪君が耳を傾けている。
それから、彼は緑谷君の頭から取った楓を指先で摘んでくるくるさせながら、また笑った。

絵になるっていうのかな。
楓が包み彩る中で、二人の姿だけが幻のように俺の目に映っていた。

邪魔しないほうがいいかな?
俺は中途半端にあげていた手を下ろす。回れ右をしようと決意した直後。

「あ!灰廻さん!」

緑谷君が俺を見つけた。
俺は前に進み出て、やあと手をあげ直して彼らに近付く。

「こんにちは、緑谷君」
「こんにちは!」
「爆豪君も」
「おー」

二人それぞれから挨拶をもらう。二人共いつも通りだ。
さっきのは、本当に幻だったのかな……。

「私服だけど、オフ?」
「はい。そんな感じです」

緑谷君が断言しないのは、事務所もなくフリーで活動しているためにヒーロースーツをいつも大きなリュックに詰めているからだ。

「俺がオフならテメェもオフだろーが」
「だから、それは横暴だって」

シェアハウスしてるなら休日一緒の方が気兼ねなくていいよね。緑谷君は横暴って言ってるけど俺は爆豪君の意見に賛成。

「二人はよく此処に来るの?」
「いえ、買い物に出掛けようって話になって外に出てきたんですけど。たまたま此処を通りがかったら見つけて、地元の楓並木思い出して懐かしいねってかっちゃんと話してたんです」

今の時期って紅葉が綺麗ですよねって、へらりと笑う緑谷君に俺も笑って頷き返した。

「そうだ!僕、灰廻さんに聞きたいことがあるんです」
「何?」
「前のことで羽根山さんにお礼が言いたいんですけど、灰廻さんにお願い出来ないかなって」

前のことって、緑谷君が爆豪君から逃げて家に来た時のことだ。それ以外は思い当たらない。
羽根山って名前に一瞬きょとんとしてしまったが、和歩の苗字が確かそんな名前だったはずだ。
俺の家で二人で留守番をしている最中に色々会話を交わしていたんだろう。苗字とか、緑谷君が言うお礼に繋がることとか。

「連絡先が分からなくて。図々しくて申し訳ないんですけど、灰廻さんにお取り次ぎしてもらえないかと」
「遠慮しないでよ。それに今なら路上ライブしてるんじゃないかな?和歩。時間大丈夫なら案内するよ。近くだし」
「お願いします!」
「面倒臭ぇ」

すくっと立ち上がる緑谷君に呆れている爆豪君だが、彼もまた立ち上がるので付き合ってくれるようだ。
思っていたより、爆豪君は優しい。

「路上ライブってことは、羽根山さんはアイドルなんですか?」
「そもそも、許可取っとんのか?」

歩きながら二人から重ねて問われ、俺はちょっと説明に困った。

「あ〜、そうだね。和歩はまだアイドルじゃないかも。フリーアイドルだから、昔流行った地下アイドルってのに近いかな」
「成程」

ふむふむと緑谷君は頷いてる。緑谷君はオタクだけど、アイドル系は得意ではなさそうだ。まあ、種類が違うもんな。ヒーローオタクとアイドルオタクじゃ。
先に緑谷君の疑問に答えた俺は次に爆豪君からの質問に答える。

「爆豪君が察してる通り、許可は取ってないから違法になるんだよね……」
「止めろよ」
「分かってるんだけど、和歩楽しそうだし。居場所奪っちゃうのも可哀想だと思わない?」
「知るか。それで面倒ごとに巻き込まれたら自業自得だぞ」

うう。正論。
俺は何も言い返せなくなって口を閉じてしまう。静かになった俺に爆豪君が舌打ちする。
緑谷君は前みたいに爆豪君を咎めず、ちょっとだけ苦笑していた。

「俺たちの管轄じゃねぇから取り締まりはしねぇが、下手したらテメェらで尻拭いしろ」

俺の知ったことではないと吐き捨てる爆豪君に俺は瞬く。
こっそり、緑谷君に尋ねてみた。

「もしかして、見逃してくれた?」
「そうですね」

緑谷君の苦笑が濃くなり、彼からフフっと笑い声が漏れた。

「かっちゃん全然素直じゃないから」
「デク、テメェ聞こえてっからな。後で覚えとけよ」
「……あー、はい」

爆豪君からの凄みに緑谷君は顔を赤くして横を向いた。
何でだろう。俺は身体が痒くなった気がして、首の辺りを指で掻いた。

程なくしてポップ☆ステップが頭上に見えた。ライブ場所には到達していないが、ビルの高さまで跳躍しているポップは遠目から確認出来た。俺はポップを指差す。

「あれが和歩だよ」
「え!あの子、羽根山さんだったんですか?」
「ポップのこと知ってたの?」
「知ってるっていうか。ただ、この辺ってフィギュアとか売ってるお店が多いから良く通るんです。だから、彼女も見掛けること多くて」

羽根山さんだったのか!と緑谷君は大層驚いている。

緑谷君が言うように、この辺りはアニメやアイドルのグッズを取り扱う店がとても多い。ヒーローグッズを目当てに緑谷君は買い物に良く来ているってことだ。……プロヒーローがヒーローグッズ物色しているってどうなんだろう?って疑問は持っちゃ駄目だ。緑谷君だから仕方ない。悩んだら負けだ。

それでまあ、ポップもこの付近で路上ライブするメリットってものにも繋がってくる。オタクが集まる場所だからライブをするのに理に適った条件が揃ってるってこと。

「すごいですよね!いつも歓声がたくさん聞こえてくるし、楽しそうだなって思ってたんです」

流石にあの熱狂的ファンの中に入っていく勇気はなかったけれど、遠くから何度か見ていたと緑谷君は教えてくれた。

「でも、和歩って歌下手でしょ?」
「僕も歌は得意じゃないので、そこは。かっちゃんは上手いけど」
「爆豪君は何が苦手なの?」

むしろ出来ないことを聞きたいくらいだ。
爆豪君を振り返れば、彼は何でも出来て当たり前だとばかりに顎をしゃくった。
少しくらいは底辺の気持ち慮っていただきたいなー。

「ねえ、緑谷君。爆豪君といるとさ、自分が惨めに感じることってない?」
「あはは。そんなのしょっちゅうですよ。でも、かっちゃんは性格の部分で損してるし」
「あ、それ分かる」
「ですよね。羨ましいところはたくさんあるんですけど、嫌なとこも多いから」
「…………デク」

静かだった爆豪君が地を這う声で緑谷君を呼んだ。ギギギ……と青い顔で緑谷君がゆっくり振り返る。
爆豪君は青筋を浮かべていた。

「黙ってりゃあ、いけしゃあしゃあと駄弁りやがって」
「や!で、でも、かっちゃんだって僕がどう思ってるか知ってるだろ?」
「おお、知っとるわ。知ってっからムカつくんだろーが。マジで後で覚えとけよ!立てなくしたる」
「ご!ごめん!は、灰廻さん!早く行きましょう!」

真っ赤な顔で緑谷君は爆豪君に謝ると、俺の背中を押してライブの近くまで進む。後ろで爆豪君が「コラ!ナード共!」と怒鳴っていた。もしかして、俺も含まれてる?

ビルとビルの間に出来ている影の中で法被を羽織っている人達が踊り狂っている。それに混じるのはなかなか勇気がいるので、熱狂的な人達の後方で自分のペースで楽しんでいるファンの後ろに並ぶ。

俺は相変わらずポップは歌が下手だなぁとぼんやり彼女を見上げていた。そんな俺とは対照的に緑谷君はポンポン跳ねるポップに結構ノリノリになっている。近くにいたポップファンが「新入りかい?」と声を掛けてきて緑谷君にサイリウムを二本渡していった。
緑谷君から一本サイリウムをもらってしまった。うーん。今更ポップのライブにファンの顔をして参加もしづらい……。

「爆豪君、あげる」
「……」

いらないって顔をされたけど、爆豪君はサイリウムをもらってくれた。不本意なのにごめんね。有り難う。

「皆さんのやつはこれ光ってますけど、どうすれば良いんですか?」
「ああ、これ折るんだよ」
「折る!?」
「本当に折っちゃ駄目だよ。ポキッて音が鳴るまで曲げるの」
「こ……こうかな」

緑谷君がサイリウムを両手で慎重に曲げていけば、ポキッと鳴った。力を抜けばサイリウムは真っ直ぐに戻る。
横の爆豪君もサイリウムを折って光らせた。ちょっと物珍しそうに視線を落としているから、初めて使ったみたいだ。

「それ、使い捨てのやつだから三時間もすれば光らなくなっちゃうかな」
「そうなんですね。綺麗なのに勿体ない」

安いから仕方ないんだよね。もうちょっと高いやつだと一日保つけど。
今はサイリウムよりペンライトが主流かな。最前線にいるファン達が持っているようなペンライトなら電池式だから何度も使えて便利。

緑谷君はポップが跳ね飛ぶリズムに合わせてサイリウムを振り始めるけど、爆豪君は手の中で弄ぶだけだ。全然合ってない二人にらしいなぁと思う。
俺はもう緑谷君と爆豪君の性格をある程度把握してしまっていた。

五曲くらい歌ったかな。それでポップのライブは終演だ。

「有り難う〜!今日は夜にまたここでミニライブするからみんな待っててね〜!」
「ポップちゃーん!今日も最高だったよ!」
「夜のライブも絶対行くよー!!」
「楽しかったよー!」

古参のファンが多いけれど、たまたま通りかかって足を止めたらしい若い子や親子連れなんかもいる。
前より人気が出ているようで、素直に凄いと感じた。ポップが本物のアイドルになる日も近いかもしれない。なんてことを思ったりして。

「バイバーイ!」

と笑顔でファンに手を振るポップは俺に気付いたみたいで手振りをちょっと変えた。後でスマホに連絡するって合図だ。

ポップの姿が彼方に消え、ファン達は解散する前にライブの余韻をハイタッチで同志と分かち合っていた。その中に緑谷君が巻き込まれてる。俺と爆豪君は巻き込まれないように移動済みだ。

スマホが鳴ったから、俺はポケットから取り出す。案の定、ポップからメールが届いた。
今からそっちに向かうと返信している間に爆豪君が緑谷君をファンの人集りから引っこ抜いてきてくれた。

「有り難う、かっちゃん」
「鈍臭ぇ」

俺は苦笑しながら、ポップがこの路地裏の奥にいることを伝える。三人で奥へ進んだ。

「おっそい!」

ポップの衣装の上に長いジャンパーを羽織っている和歩が待ち構えていた。
そんなにもたもたしていたわけでもないのに愚痴られた。理不尽だ。
しかし、いつもならまだグチグチ言われるのだが、和歩はアイマスクで隠れている顔を驚かせる。

「あれ。デクさんじゃん」
「こんにちは!」
「ゲ、爆心地」
「ああ?」

緑谷君と爆豪君に気付いて和歩は二人に向かって別々の反応を返す。

「緑谷君が和歩にお礼が言いたいんだって」
「お礼?何の?」

和歩はアイマスクを取って素顔で緑谷君と顔を合わす。
和歩ってこういう礼儀はしっかりしてるんだよな。ライブ中に知り合いを見つけても、その場で声を掛けたりはせず、今日みたいに人目につかない場所で落ち合うようにするし。
話があるって緑谷君にポップとしてではなく、和歩として話を聞くって態度を改める。

「この間……かっちゃんとのこと、相談に乗ってもらって。それで、そのおかげで仲直り出来たので、ちゃんとお礼を伝えたくて」
「いいのに、そんなの。私も話聞いてもらったし」
「いえ、言わせてください。その節はどうも有り難う御座いました!」

頭を下げる緑谷君に和歩はキョロキョロと周りを見渡して、俺と顔を見合わせるとどうしたらいいのかと視線で訴えてきた。俺はほらほらとジェスチャーした。役立たずって顔をされた。

「そ、そういうのはいいわよ!デクさんの気持ちだけで充分だから!顔あげて!」
「有り難う御座います、羽根山さん」

やっぱり良い人だ。と、緑谷君はほわほわ笑っている。和歩は調子が狂うみたいで視線を彷徨わせてる。
けど、和歩が突然何か気付いた様子を見せて緑谷君をちょっと向こうに引っ張る。

「まさかとは思ったんだけど、爆心地と……なのよね?」
「ッ……あの、それはっ」
「まあ、いいんだけどさ。私も誰かさんと一緒で人の性癖は自由でいいって今は思うし。度を過ぎてなければだけど」
「せ、せいへ……すみません……気を遣わせてしまって」
「でも、趣味悪いわよ」
「あ、あはは。僕もそう思います……」

声は聞こえてくるんだけど、話の内容はいまいち判らなかった。判るのは和歩が言う誰かさんが俺だってことくらい。性癖を尊重すべきだと考える俺は、過去にスカート捲り抜き取りパンツ泥棒の疾風怒濤三兄弟の拘りを親身になって聞いていたことがある。泥棒はいけないし、彼らに共感したわけじゃないけど、彼らの理想と理念は重んじてもいい気はした。

そんなことを思い出している間に、乾笑いしている緑谷君に爆豪君が近付いていく。

「かっちゃん?」
「ムカつく」
「い!ったあ!」

緑谷君の足を爆豪君が踏みつけた。
俺はいつもの光景に驚かないけど、和歩はワッて驚いてる。でもまあ、目の前でやられたらそりゃ驚くよな。俺も眼前でやられるとまだちょっとビビる。今は少し離れてるから平気なだけ。

「何すんだよ!」

涙目で緑谷君は爆豪君を睨み上げる。しかし、その態度が余計に爆豪君の怒りを買ったらしく、彼の表情が凶悪なものになる。うん、顔怖い。

「その目が目障りだっつってんだろ!」
「足踏んだのはそれじゃないよね!?」

ご明察と鼻を鳴らした爆豪君に余計なこと言ったかもって緑谷君は冷汗を垂らす。
爆豪君は額を突き合わせられるほど緑谷君に迫って唾を飛ばした。

「趣味悪ぃとは何様だテメェ!」
「うわ!聞こえてた!?」
「それはこっちの台詞なんだよ!クソが!!」

一度仰け反った爆豪君は勢いをつけて緑谷君に頭突き。
緑谷君は赤くなった額を両手で押さえてるけど、額以上に頬が赤くなってた。

「かっちゃんも趣味悪いって思ってたんだ……」
「どこの世界に趣味の良いクソナードがいると思っとんだ!いるわきゃねーだろ!」

爆豪君は緑谷君の胸ぐらを掴んで尚も凄んでいる。
止めに入ろうかどうしようか迷っている俺の横に和歩が寄ってくる。

「痴話喧嘩」
「え。それは違うんじゃない?」

和歩の視線は緑谷君と爆豪君に向けられていたから、二人のことを指していた。けど、痴話喧嘩って恋人同士とか夫婦にしか使わない。日本語の使い方間違ってるよって俺は教えた。

「……コーイチって間抜けよね」

あからさまに残念な人を見る目を向けてくる和歩に俺は何だか馬鹿にされた気がして臍を曲げる。なんで俺が間違ってるみたいになってるんだ?

「それよりさ、夜までアンタのとこで休ませてよ」
「う〜ん、いいけど。ご飯の買い出し今からだよ」
「じゃあ、ついてくわ」

和歩はジャンパーの前を閉めて、ツインテールに結ってる髪を解いて下ろした。ポケットから取り出した丸眼鏡をかければ、いつもの和歩だ。

「あ。灰廻さん買い物に行くんですか?」
「うん」

爆豪君から逃れてきた緑谷君に尋ねられて俺は頷く。緑谷君は爆豪君を振り返ってから、再び俺に視線を向けた。

「僕達もついていって良いですか?この辺りのスーパーとかお惣菜屋さん教えてもらいたいんです!」

手を合わせてお願いしてくる緑谷君に俺は「いいよ」と快諾した。すれば、爆豪君が「ッス」と軽く頭を下げる。

四人でスーパーに向かいながら、緑谷君と爆豪君に話を聞けば、住まい周辺は見張られている気配があって通い慣れた店に行きにくくなってしまったそうだ。もしかしてソーガさん達かもしれないな。
二人は店に迷惑をかけてしまうのを避けるためと、気配を振り払うために行動範囲を広げることにしたそうだ。本当にソーガさん達だったら知り合いとして申し訳ない。

俺に出来ることならスーパーでも惣菜屋でもオールマイトショップでも教えるよ!あ、緑谷君ならオールマイトショップ網羅してるか。案の定、近辺のショップを彼は全て網羅していたし、来月から始まるフェアまで把握済みだった。俺だって知らなかったよ。フェア限定のパーカーが発売されるって聞いて緑谷君に感謝した。絶対買いに行こう。

スーパーに着くと俺は買い物カゴを手にする。緑谷君はカゴを乗せたカートを押す。
俺の家にあるのは一人暮らし用の冷蔵庫だから、入れられる量が限られててあまり買い込めない。緑谷君と爆豪君は二人暮らしだし、謎の気配を避けるために食料を買い込んでおくのが得策だ。プライベートの時間はあまり頻繁に外に出ないほうが良いだろうし。

「ここのスーパー、安いわりに質が良いな」
「店は小さいけど種類が少ない分こだわってるって、知らないお喋りなオバちゃんが言ってたよ」
「ふぅん」

爆豪君はあれこれと吟味しながら良いものの中でも上質な品を見分けて、緑谷君が押してるカートのカゴにどんどん入れていく。

「夜になると値下げで一気になくなるから、今の時間が狙い目かな。安さより良いもの優先するなら」
「覚えとくわ」

なんだか、爆豪君とこんな話をする日が来るとは思わなかった。
彼にもプライベートがあるのは判っているし、学生の時から顔見知りだけれど、活躍目覚ましいヒーローだ。
雲の上の人のはずなんだけど、所帯染みた面を見ることになるなんてなぁ。

「やっぱり爆豪君が料理するの?」
「ああ。けど、やっぱりって何だ」
「君が高校生の時さ、お母さんと一緒にコンビニ来たじゃない?」

一度だけ。顔立ちがそっくりな母親にジョギング中の爆豪君は捕まったようで、頭を掴まれてコンビニに再び来た。その前にスポーツ飲料買いに来てくれたんだよな、確か。爆豪君とお母さんのやり取りが印象強くてその前後の記憶が曖昧だけど。

「あー。あん時か。ナード顔だったか、レジの奴」
「うん。俺だった」

なんで早朝にシフト入ってたんだっけ。まあいいか。

「爆豪君、料理出来るんだなーって思ったんだよ」
「登山行くときは包丁扱えねぇとやべぇからだ」
「そうなんだ。へえ〜」

そういえば春のなんたら大運動会で爆豪君は登山が趣味だって情報を得たんだった。登山とかアウトドアが趣味の人って野外料理するイメージがある。俺は大いに納得した。

「……チャーハンはテメェの方が旨ぇ」
「え」

爆豪君の発言が信じられず、俺は首を傾げた。褒められてる?

前に爆豪君がヴィラン退治中、俺の家がある古ビルに大穴を開けてしまった。修理不可能だからそのままにしてたんだけど、後日、爆豪君が再び様子を見に来た。
爆豪君と緑谷君が一緒に謝りに来てくれて、その後にベストジーニストが謝罪に来てそれでお終いだと思っていたんだけど。

一人で来た爆豪君は大穴の上に竹編みの板と青いビニールシートを被せて、雨風で飛ばないように固定までしてくれたんだ。
話を聞くと爆豪君は仕事で様子を見に来たわけではなく、自主的に俺のところに来たみたいだった。はっきりそうだとは言ってくれなかったけど、爆豪君ってそういうとこあるよね。丁度お昼時でもあったから、そのときお礼にとチャーハンをご馳走した覚えが俺にはある。

今、爆豪君はちょっと納得しかねる顔をしているけれど、俺を睨み付けながら続ける。顔が怖すぎて褒められてない気がしてくる。

「レシピ教えろ」
「う、うん。いいけど」

作り方を知りたいらしい。褒められてたみたいだ。

今日の夕飯はチャーハンに決まった。俺は後ろの和歩に今日はチャーハンだと伝えた。案の定「またなの!?」と文句が飛んできて「コロッケ食べたい!カニクリームコロッケ!」と主張してきたから、俺は後でこの近くの肉屋にコロッケを買いに行くことを約束した。和歩の機嫌が戻った。

俺と和歩の言い合いを見ていた緑谷君が和歩に何故か頭を下げる。

「すみません、羽根山さん」
「いきなり何よ?」
「灰廻さんと二人きりのが良かったですよね」
「はあ!?そんなわけないし!アンタらがいよーがいまいが一緒よ!一緒!」
「わっ、すみません」

和歩の勢いに緑谷君は頭を下げっぱなしだ。なんだって、和歩はあんなにカリカリしてるんだろ?緑谷君に迷惑だよ。

「やめなよ、和歩」
「コーイチは黙ってなさいよ!」

うわっ、俺までとばっちり。本当に扱いに困る子だよな、和歩って。

「あ!そうだ。俺、洗剤買いたかったんだよね」
「あ。僕達もそろそろ買わないといけないんじゃない?」
「そうだな。ナード顔、洗剤どこだ」

突然思い出した俺に緑谷君が反応して、爆豪君も同意を示したから連れ立って洗剤コーナーに行く。いつものやつを探している間、和歩は少し離れた後ろにいた。

「あれ、オッサン。どうしたのよ、こんなところで。買い物?」

そんな彼女の声につられて俺は和歩の方を振り返った。和歩が言うオッサンは予想通り師匠だった。

「師匠、久しぶり!」

俺が呑気に図体のでかい男に近付いていくから、緑谷君と爆豪君も大男の師匠を見遣った。二人はその場から動かず、師匠はちらりと彼らを一瞥してから俺に怪訝な顔を向ける。

「今晩、見回り行くぞ」
「え?今日いきなり言われても」
「そうそう。私だって夜にライブがあるんだから無理よ」
「お前達、こっちに戻ってきてから殆ど活動してないだろ」

そう言われて、俺は確かにと頷いてしまう。なんていうか、生活が充実しているからストレスあんまり感じなくなってきたんだよね。多少は感じるけど許容範囲だし。俺も歳をとったもんだ。理不尽って日常に有り触れてるのが普通って感覚になってきたから。

ゴミ拾いとかはこまめにしてるけど、ヴィラン退治は滅多にしてない。そもそもヴィランと遭遇することもなく過ごしていたのだ。
緑谷君や爆豪君の世代って優秀なヒーローが粒揃いだから、ヴィランへの抑止力になっている。
彼らが学生の時、かなり大きな事件に何度か巻き込まれているんだ。それを自分達の力で乗り越えてきたヒーローだからこそ、彼らには敵わないのではないかとヴィランも派手に暴れにくい状態だ。

それでもヴィランが全く出現しないわけでもなく。でも、ヒーローと警察の手で終えてしまえる事件が殆ど。自警団の出番はないに等しい。

「……分かった」

師匠はそう言って去っていった。
何だったんだ?と俺は和歩と顔を見合せ、二人して首を捻った。

「お知り合いだったんですか?」
「うん。ヴィジランテのチームになれって言ってきた人」
「前に泊まらせてもらった時に聞きましたね。灰廻さんの師匠だって」
「本当は師匠ってわけじゃないんだけど、説明するとややこしいから省くね。今日、夜のパトロールしないか、だってさ。断ったけど」
「いいんですか?」
「あはは。本物のヒーローの前だしね。なんか、爆豪君の睨みもさっきから凄いし……」
「やめなよ、かっちゃん」
「ああ!?」

それから緑谷君と爆豪君が激しく言い争いを始める。他のお客さん達が二人をチラチラ見ながらひそひそ話をして横切って行くので、俺は慌てて二人を止めた。

スーパーで会計を済ませた俺達は肉屋に向かう。俺はカレーコロッケ、和歩は宣言通りカニクリームコロッケ。爆豪君と緑谷君は牛肉コロッケを買った。
店の前で出来立てホヤホヤを受け取り、立ち食いする。家に着いてからより、今食べた方が絶対美味しいからだ。
肉屋のコロッケって何でか美味しいんだよね。何故かここの店は肉の入ってないコロッケも何種類か置いてて、ぶっちゃけ本業が肉屋なのかコロッケ屋なのか判らないけど。でも美味しいから問題ない。

「そういえば、さっきの人。師匠さん。凄く逞しい感じでしたけど、どんな個性なんですか?」

世間話を口にする緑谷君に俺は口に入っている囓ったコロッケを飲み込んでから、何でもないように答える。

「無個性だよ」
「!」
「……」

緑谷君は凄く驚いた顔をした。横の爆豪君は驚いてはいないけど、俺の言葉に反応して視線を寄越してきた。どうしたんだろう。
無個性って今の世代、特に緑谷君達には身近じゃないかもしれないけど、人類の二割は無個性だし、そんなに珍しいかな?

「ナード顔、早よレシピ教えろ」
「え、うん。じゃあ、行こっか」

コロッケも食べ終えたことだし、爆豪君が急かすので、俺達は古ビルの屋上に向かった。
住まいにたどり着き、俺は買い物袋をドサリと台所に置いた。

「灰廻さん、すみません。お魚とか冷蔵庫に入れさせてもらっても良いですか?」
「いいよ」

買い物袋を両手に持つ緑谷君に尋ねられ、俺は了承する。常温で放置したらやばそうなものを一緒に冷蔵庫に入れていった。
爆豪君が片手に持ってる買い物袋は日用品ばかりだから、そっちは大丈夫みたい。ただ、量からして緑谷君が荷物持ち係なんだなって、思った。

俺と爆豪君は台所に立って夕飯の準備をする。
野菜やベーコンを切ってもらうの手伝ってもらってるけど、飯田君が言っていたように爆豪君の包丁捌きは目を瞠るものがあった。凄い均等に切れているし、形も綺麗だ。

俺は卵を溶いてる。作り始める前に簡単に作り方を説明したら、ここから入れる調味料が爆豪君とは違うようだったから俺は彼を呼ぶ。手を止めた爆豪君は俺の隣に立った。
鶏ガラスープの素などを溶き卵に混ぜて行く。菜箸を回しているとき、爆豪君が口を開いた。

「ナード顔、あのオッサンは信用出来るんか?」

かなり小声だから、俺にしか聞こえてない。テレビを観てる和歩と緑谷君には聞こえない音量で喋るから、俺もつられて小声になる。

「怪しいって思うの分かるよ。でも、悪い人ではないから、その点では俺は信用してるかな」
「…………」

考え込む爆豪君に俺は冷汗をたらりと流す。不穏な空気って慣れてない。

「どうかしたの?」
「テメェのことは信用出来る」
「え。あ、ありがとう」
「それ踏まえた上で言っちまうが、あのオッサンの気配、似てやがった」
「気配って、見張られてるって言ってたやつ?」
「おう」

つまり、ソーガさん達じゃなかったってことだ。でも、師匠が何でまた爆豪君と緑谷君を尾行しているんだろう。
まだ犯人が師匠と決まったわけじゃないけど、勘の良さそうな爆豪君が外すとも思えなくて俺は頭を悩ませる。

そういえば、ソーガさんが探偵事務所のボスは俺も知ってる人だって言ってたけど……まさか、本当に師匠がボスなのか?一番あり得る話だけど。

「師匠は考えなしに突っ込んで行く人だけどね。悪い奴殴るとスッキリするって言うし」

でも、悪い奴か違うか確認もせずに殴り掛かるから、かなり迷惑な人だと思う。

「スッキリすんのは分かる」

あ。分かっちゃうんだ、爆豪君。

「でもさ、理由あって行動する人だよ。パパラッチの類ではないと思うけど……」

ソーガさん達の例があるから、ちょっと断言し切れなかった。自信のない俺の発言にまで真剣に耳を傾けてくれている爆豪君に申し訳なくなってくる。

「そうか。ならいい」

多分、俺が困ってるって感じたみたいで、爆豪君は話を切り上げてくれた。為になる情報あげられなくて本当に申し訳ないや。

俺は味付けした溶き卵を加える前にベーコンをバターとオリーブオイルで炒める。そしたら爆豪君が怪訝な顔をした。

「バター入れるんか?」
「え?普通入れないの?俺の母親いっつも入れてベーコン炒めてたんだけど」

だから、最初の説明のときバターを入れることは省略してしまった。何処の家庭でもバターを使うものだと思い込んでいた俺は逆に爆豪君の発言に吃驚だ。
そうか。これ、俺にとってはお袋の味ってやつだったんだ。目から鱗だ。

いよいよ仕上げの炒めになってフライパンで溶き卵とご飯をかき混ぜてベーコンや野菜と絡ませる。
コツを掴みたいと言う爆豪君に俺はフライパンを渡して、要領とか感覚を言葉に落とし込んで口で説明している最中だ。

「ねえ、背中なんかずっと見てて楽しい?」
「楽しいって気持ちに近いですけど、かっちゃんの背中追い掛けてばかりだったから、見てると落ち着くっていうか、いいなぁって思います」

和歩と緑谷君の会話が俺達の耳にも届く。小さいペイントハウスは一人暮らしの間取りだから、台所とリビングは目と鼻の先の狭さだ。内緒話みたいに声の音量を下げるなら兎も角、普通の会話は筒抜け。

緑谷君の素直な発言を聞いた爆豪君は眉間に皺を寄せてるけど、怒っているというより呆れた顔色で「クソが」と悪態をつく。彼の手は丁寧にチャーハンを皿に盛り付けた。

テーブルにはチャーハン。それから爆豪君がサクッと作ってくれた肉団子の塩スープとサラダが並べられた。

ホテルのディナーに出てきそうなサラダの盛り付けを受け皿に取りながら、緑谷君が一言。

「かっちゃんって、よその家だと見栄はるんだね」
「あ!?」
「わ、ごめん」

いつもは盛り付けとか考えないらしい。でも、自分用に用意するなら、料理って適当になりがちだよね。俺も一人で食べるだけなら、見栄え気にしない飯作っちゃう。
爆豪君は緑谷君の分も用意しているはずだから、緑谷君に気を遣っていないってことだ。なんていうか、家族の域なのかなー。

「んだァ?ナード顔。気持ち悪ぃな」

俺が微笑ましくニマニマしているから、爆豪君が引いた。彼の口悪い言動をいつも通り緑谷君が注意してくれる。口論を始めそうになる二人の間にまあまあと俺が入る。
あれ?なんかパターン化してきてない?

「トリオ漫才でも始めるわけ?」

和歩にツッコまれた。
俺達男三人は静かに食事を再開した。爆豪君だけ舌打ち付きだけど。

夕飯を終え、俺は食器を洗う。左隣の爆豪君が洗い終わった食器の水気を布巾で拭く。そのまた左隣の緑谷君が綺麗になった食器を重ねる。和歩は夜のライブの準備でさっきのテーブルの上に化粧道具を広げてメイク中。

俺達が食器棚に洗い物を全て仕舞い終えてしまえば、和歩も支度が完了してジャンパーを脱いだ。
ポップの衣装は露出が多い。緑谷君とか間近に見たら真っ赤になるかな?と思ったんだけど、そうでもなかった。まあ、女性ヒーローでもっと露出多い人いるもんな。俺も大事な部分さえ見えていなければ、特に何とも思わない方だ。ミッドナイトのデビュー当初のヒーロースーツ姿を見たときぐらいかな。平常心忘れたのは。

ただ、緑谷君が爆豪君に「峰田君には見せられないよね」と言っていた。爆豪君は「ブドウ頭は露出女なら誰でもいいんだろ」と心底どうでも良さそうに返事をして、それを聞き取った和歩が「誰が露出女よ!」と喚き始める。爆豪君は全く和歩の声を聞いていない態度だ。あー。恒例の周りがモブに見えてるアレかな。

それより、ジャンパーを脱いだ和歩に俺は首を傾げる。

「上着、着てかないの?寒いよ?」

夏ならまだしも秋口だ。夜は冷えるんじゃないかな、ポップの格好だと。

「夜のライブは新曲を二曲歌って終わりだから平気よ。一時間もしないうちに戻ってくるし」
「そうなの?じゃあ、いっか」

ライブは短いらしい。和歩の言い分も最もだと感じて俺は納得した。けど、何故だか和歩は気に入らない顔をする。

「あの、灰廻さん。もう少し心配してあげても」
「デクさん!余計なこと言わないで!」
「わっ!すみません!」

緑谷君が和歩に怒られていて訳が分からなかった。

プイッとそっぽを向いた和歩のスマホが鳴る。画面を開いた和歩が視線を落としたまま俺に話し掛ける。

「新曲のバック音源、今からここで受け取ることになってるから」
「え?」
「こんばんは!ポップ!コーイチ君もいる?」

俺が誰から?と訊く前に鍵をかけていなかった玄関が外側から開けられて、マコト先輩が勢いのまま上がり込んできた。び、吃驚した。
緑谷君も凄い吃驚してる。爆豪君はまたモブに見えるアレで表情が動いてない。

突然現れたのは、俺が通っていた大学の先輩にあたる女性、マコト先輩。本名は塚内真さん。歳は俺より二つ上だ。
彼女が大学在籍中に研究テーマにしていたのが『ヒーローとヴィランを分けた決定的な要素』についてで、現代のヴィジランテを調査していた。ヒーロー制度の成立過程を考察するために、俺に接近したって聞いたときは驚いたけど、マコト先輩は決して悪い人じゃない。お兄さんは警察官だしね。

マコト先輩は靴を脱ぐと、ポップのところまで歩み寄って彼女に小型の機械を手渡した。

「何ですか?それ」
「ポップがライブに使う音源。この機械小さいけど、スピーカーとして広範囲に音楽を流せるわ。音質もバッチリ」
「へぇ〜、凄いですね」

尋ねる俺にマコト先輩は判りやすく簡単に説明してくれる。

俺が以前に東京に住んでた時だからもう大分前だけど、マルカネ百貨店主催のフリーライブに参加しないかってポップに出演依頼が来た。そのライブイベントをマコト先輩がプロデュースした経緯があって、それ以来マコト先輩と和歩はビジネスパートナーだ。
和歩が静岡に住んでいる間も二人は連絡を取り合っていたらしく、和歩がまた東京でポップ☆ステップとしてライブを再開してからはマコト先輩が全てバックアップしているそうだ。この間、和歩とマコト先輩が一緒に歩いているのを見掛けて、二人に話し掛けたら教えてくれた。

それにしても、やっぱりマコト先輩は綺麗だなぁ。歳を重ねて益々美貌に磨きが掛かってきた気がする。唇近くにあるホクロもセクシーだ。

何故か緑谷君が俺と和歩を交互に見てオロオロしていた。和歩が緑谷君を思い切り指差し、何も言うなって無言の圧力掛けてる。

「有り難う、マコトさん。じゃ、行ってくる」
「練習はいい?」
「この日の為に毎日練習はして来たし、移動しながらでも歌えるから大丈夫!」

そう言って、ポップは開けっ放しの玄関から外へ飛び出した。空も街も夜の模様だ。

「ところで!」

ぐるん!と身体の向きごと変えたマコト先輩は爆豪君と緑谷君をパッといつでも輝いている瞳で見つめた。

「コーイチ君のおともだ……あら?貴方、どこかで見たことある顔!あ!爆心地!」

ええ!どうしたのよ、コーイチ君!と、マコト先輩は俺の背中をバンバン叩く。痛いような痛気持ち良いようなでもやっぱり痛いや。
俺は背中を後ろ手に摩りながら「いやぁ……」と我ながら気恥ずかしくなる。有名ヒーローと知り合いってのは鼻高々だし。

「爆心地はコーイチ君とお友達なの!?」
「違ぇ」

ぐすん。爆豪君の答えは解ってたけどショック。
そんな俺を見兼ねて緑谷君が手を挙げる。

「ぼ、僕は友達だと思ってます!」

緑谷君〜!俺は感動で泣きそうだよ!爆豪君が俺のこと睨んでてちょっと怖いんだけどね!

「貴方……」
「あ、僕は」
「ストップ!待って!当てるわ!」

緑谷君は固まり、マコト先輩は緑谷君を凝視する。
マコト先輩の目って濁りがなくて、途轍もなく澄んでるんだ。そんな目にじいっと見つめられた緑谷君は怯え出して、横の爆豪君の服を指で摘む。
緑谷君の様子を一瞥してから、爆豪君はマコト先輩を睨み出した。

「……う〜ん、知ってるような気がするんだけどな〜」

尚もマコト先輩は粘り、緑谷君を穴が開きそうなほど見つめ続ける。完全に怯えきっている緑谷君はテレビで見るようなヒーローの顔をしていなかった。
これはマコト先輩でも気付かないかもと思ったところ、マコト先輩は爆豪君を見て、もう一度緑谷君を見る。二人を交互に見るのを何度か繰り返すと、マコト先輩は顔を輝かせた。

「デクだ!」
「デクです!」

気付けた喜びとようやくあの目から解放される喜びが交錯した。って表現すれば良いのかな。
二人とも万歳しそうな勢いだ。

「マコト先輩、何で気付いたんですか?」
「爆心地よ!テレビで二人が一緒に映ったとき、デクがすごい怯えてたの思い出したわ」

ああ。その時の緑谷君の顔と、彼が爆豪君と並んでいるから結び付いたのか。成程。
爆豪君と緑谷君が一緒に映ったのってあれしかないのに、凄い知名度だよね。だから不仲説が濃厚に出回ってるわけだけど。

「どうして二人がコーイチ君の家にいるの?」

君達は仲悪いんでしょ?って首を傾げるマコト先輩は再び緑谷君達をまじまじと見つめる。緑谷君はグイグイ来られるのが苦手みたいで、涙目で爆豪君に縋ってる。

「いちゃ悪いんか」
「悪くはないけど、どうしてかなって」
「モブに教える義理はねーな」

いつになく、爆豪君の声色がキツイ。単純に怒っているのとは違って、憤怒を抱え込んでいるみたいな。

「行くぞ、デク」
「えっ、待って!」

爆豪君は荷物をまとめて、買い物袋を三つ片手で持ってしまう。

「邪魔した」
「あの!灰廻さん!お邪魔しま」
「私、デクのファンなの。最後に握手だけお願い出来ないかしら?」

眉を下げて手を差し出すマコト先輩に緑谷君はそれくらいならと、彼女の手を握った。

「嬉しいわ。いつも活躍見てるの。ところで、デクは無個せ」
「うわっ!!」

マコト先輩の話はまだ途中だったのに、爆豪君は緑谷君の首根っこを引っ張った。その反動で緑谷君とマコト先輩の手が離れる。

「え、えっとぉ」

俺はどうしたら良いのか判らなくて、降参するみたいに両手を挙げる。しかし、それが虚しくなるくらい爆豪君がゾッとするほどの睨みをマコト先輩に無遠慮に刺した。流石のマコト先輩も青褪める。

バタン!と玄関の扉が閉じられ、内側に残るのは俺と先輩の二人だけだ。
暫く俺達は動けなかった。先に声を出したのは、マコト先輩だった。

「あああ〜、やっちゃったぁ!絶対あれ、私のこといけ好かない女だって思った目だわ!!」
「どうしたんすか!?マコト先輩?」

いきなりその場に頽れて、床を叩き出すマコト先輩に俺はギョッとする。

「爆心地のファンだったのに〜!」
「え!?さっきデクのファンだって言いましたよね?」
「それはナックル師匠に頼まれたからよ!デクも良いけど、私は爆心地派なのぉ〜」
「先輩がそんなに彼のファンだったなんて知りませんでした……」
「別にのめり込んでるわけじゃないの。爆心地のストイックさってナックル師匠と通ずるものがあるから、新人の中では特に気になるヒーローだったわけよ」

通ずるのは殴ったらスッキリするのと、爆破したらスッキリするところだと思いますよ。

でも、そっか。マコト先輩が特定のヒーローに熱をあげるなんて想像が出来なかったけど、ただ単に自分の好みを芸能人に当て嵌めるみたいなものだったんだ。

「でも、嫌われるのはイヤ。眼中に無いままが一番だったわ」
「あー、でも、爆豪く……爆心地は人の顔一度では覚えないし、大丈夫だと思いますよ?」
「あら。そうなの?」
「今日も和歩のこと認識してるのか怪しかったですし」

なにやら希望が見えたようで、マコト先輩は立ち上がった。切り替えが早い……。

「良い情報有り難う!コーイチ君!」
「ど、どういたしまして」

役立ったかは微妙だけれど、マコト先輩が気を取り直してくれてホッとする。

「それで、師匠から何を頼まれたんです?」
「ああ……えっと。多分、間違いだろうし、大したことじゃないわ。気にしないで」

そう言って、マコト先輩は緑谷君と握手をした右手をじっと見下ろした。

「彼の右手は、本物だったから」

どういう意味なのか、俺には判らなかった。

「ぁ。でも、それじゃあ、緑谷君がデクだって最初から?」

気付いていたってことなのかな?だから爆豪君は最初からマコト先輩を睨んでいたのかもしれない。彼は鼻が効きそうだから勘だって可能性もあるけど。

「さあ、それはどうかしら」

答えを曖昧にしたマコト先輩はウインクして去ってしまった。相変わらず掴み所のない人だ。そこが素敵だけど!

俺は仕事の疲れもあって、気付いたら寝ていたみたいだ。一時間ほど。
しかし、和歩はまだ戻ってきていなかった。

俺は胸騒ぎがして、お気に入りのオールマイトパーカーを着る。師匠にもパトロールしろって言われたし。

出る前にニュースを確認しようと、俺はテレビを点けた。
すれば、ヒーローがヴィランを退治したと流れてくる。しかも、此処からそんなに遠くない場所……てか、ポップのライブ会場!?え!彼女は無事なのか!?と慌てる俺は顔を隠すために口元にマスクをし始めるけど、ポップがテレビに映った。爆豪君にお姫様抱っこされて。え。

『重ぇ』
『なんなのよ!アンタ!』
『うるせ』

爆豪君がポップを後ろに雑に放り投げた。

『わ!ちょっと!きゃあああ!』
『ポップちゃんは俺が受け止めるぜ!』
『抜け駆けは許さん!』
『待て!ここは力を合わせよう!』
『カモーン!ポップちゃーん!』

ファン達が受け止めてくれてポップは無事だ。そのまま胴上げされてる。
報道のカメラはポップ達から爆豪君にレンズを合わせた。

『私服ですが、今日は非番ですか?』
『ああ!?マイク向けんな!ブっ飛ばすぞ!』

女性リポーターにも爆豪君は容赦がない。しかし、経験豊富な年増のリポーターはその程度ではへこたれなかった。

『先程助けた女性はフリーアイドルだそうですが、恋人ですか?』
『人間っぽいもの飛んできたから受け止めただけだろーが!テメェ、ころ』

ピ―――。

ピー音が入ってしまった。
そこからはずっとピー音ばかりで爆豪君が何を言っているのかサッパリだ。

『今日はお一人でお出掛けですか?』

リポーターが爆豪君の口悪さを逸らせるために、話題を少しずらした。

『あ?ひと……』

うん。緑谷君と一緒に帰っていったから、爆豪君は一人じゃないはずだ。
爆豪君は視線を周囲にやり、右を見て動きを止める。それから怒りの形相になる。

『デェェクゥ!テメェ、なに一人だけ帰ろうとしてんだ!!』

マイクがはっきり音を拾っていないけれど、「うわ、バレた」って遠くの声が微かに聞こえた。俺の知ってる緑谷君の声だ。

『え!?デク!?何処にいるんですか!?』

リポーターの慌てた声に振り回されるようにカメラがあちこちを映し出す。カメラマン大変そう。
それにしても、私服だと報道陣にもヒーローだって認識されない緑谷君はある意味凄いとしか言いようがない。ヒーロー活動してる時、素顔見せてないわけじゃないのにね……。

報道陣があたふたしている間に爆豪君は消えてしまう。
カメラが一瞬、緑谷君らしき人物を捉えたけれど、後ろ姿だけだ。彼だって気付けたの、もしかしたら俺だけかも。だって、スーパーの袋を三つ持っていたのが目印だから。

「……また緑谷君が荷物持ちに戻ったんだ」

此処を出て行くときは爆豪君が全部持っていたけど。

俺はテレビを消そうとリモコンの電源ボタンに指を置いた。電源が落ちる間際、テレビの隅に大柄な男が映っていた。

「師匠?」

ナックルダスターの姿を確認しようと、消してしまったテレビの電源をもう一度入れた。
けれど、もう映っていなかった。

見間違いだとは思えず、俺はその場に胡座をかいて腕を組む。

「肩に乗ってたのって……」

家にたまに来る白い鳥。シマエナガが師匠の肩に乗っていた気がする。
でも、瞳の色が赤かった。家に来るのは黒い瞳のシマエナガだ。
違う子だろうか?と思うも、爆豪君はこの辺では生息していない鳥だって言ってた。同じ種類の鳥がほぼ同時に個性を発現させて、東京まで飛んでくるなんて確率が低すぎるんじゃないか?

うう〜ん。俺はずっと思い悩んでいたらしく、戻ってきたポップに頭を叩かれて飛び上がった。

「わあ!イタ!なに!?」
「何よ、その格好」
「ある時は考える男、ザ・クロウラー!」

ポップはアイマスクを取って、俺を無視して部屋の奥に行くと、カーテンを閉じた。
せめて名乗りの採点してよ。辛口でもいいからさ。

私服に着替え終わった和歩は俺に何か言いたげだったけど、諦めたみたい。ポップ☆ステップの衣装を俺に押し付け、洗濯宜しくって言って帰っていった。

和歩も帰ってしまったし、事件は爆豪君と緑谷君が解決してくれた。夜の見回りの必要はもうないかな。
今、事件現場に行っても警察だらけだから、師匠もいないと思うし。

俺はマスクを取って、パーカーも脱いだ。



それから一週間が経った。

俺はシフトが入っていない夜は必ずパトロールに出るようにした。一度脱いでしまったオールマイトパーカーを再び身に纏っている。

昔のように見回る気になったのは、ポップの夜ライブを襲撃したヴィランが薬物を使用していたと次の日の報道で明らかになったからだ。
薬物の成分はまだ専門家が分析中だが、一時期裏界隈で流行って問題になったトリガーと類似しているそうだ。

使用した本人の暴力衝動を誘発。
衝動による個性の活性化。
舌が黒くなる。

トリガーの特徴そのままだ。
元々は弱個性の救済案として開発されていたものらしいんだけど、調整が上手くいかなくて開発は頓挫。未完成品を悪い方向に改良されたのが違法薬物のトリガーだ。

一週間前の胸騒ぎが収まらなくて、俺はそろそろ潮時かもしれないと感じていた自警団を再びやってる。
頼もしいヒーローがたくさんいるのに、じっとしていられなかったんだ。

「飯田君達に申し訳ないんだけど」
「お呼びですか!灰廻さん!」
「うっ!わあ!」

滑走で四つん這いになっていた俺は目ん玉を飛び出させた。腰を綺麗に九十度曲げて、上から覗き込んできた飯田君に吃驚して。

「申し訳ない。また、驚かせてしまったようですね」
「や、いいんだ。俺もちょっとボ〜っとしてたし」
「考えごとですか?」
「考えごとっていうか……」

俺は言いながら立ち上がる。目の前の飯田君を見れば、彼はヒーロースーツを纏っていた。マスクは外して腕に抱えている。
本職のヒーローがパトロールをしている姿に俺はやっぱり肩身が狭くなった。

「飯田君達が頑張ってるのに、俺が勝手にパトロールするのは烏滸がましい以外の何ものでもないんじゃないかって、ね」
「素晴らしい!」
「え?」
「自発的にパトロールをするなんて、灰廻さんはまさしくヒーローの鑑だ!」

ずい!と顔を寄せてくる飯田君に俺は仰け反る。

そういえば、前もこんな感じだったかも。
飯田君は自警団であるヴィジランテに否定的ではなかった。存在理由を肯定しているわけじゃないけど、その人達の理念はヒーローとなんら変わらないって言ってくれた。
だから、俺もそれに応えたいって思ったんじゃないか。うん!

「でも、ヒーローの鑑は言い過ぎだよ?」
「言い過ぎではありません。うちの事務所のサイドキック達はパトロールを義務と感じている者が多いんです。社会人としては正しい認識ですが、ヒーローとしてはどうか。俺は疑問に思っています」

真面目で正直者だ、飯田君は。俺は感心してしまう。

代々続くヒーロー事務所を継ぐ若頭となった飯田君はサイドキック達の雇用に関して、彼らの成長と指導を担っていかなければならない。それらも視野に入れている発言に俺はただただ相打ちをうつばかり。
精神的に飯田君は俺よりもとても大人だ。

「自警団はヒーローの起源でもあります。灰廻さんのように自ら率先して動くことこそ、原点かつヒーローの本質ではないでしょうか!」

飯田君は更に顔をずいっと前に乗り出してくる。俺は更に仰け反ることになってブリッジ状態だ。あ、この体勢、きっつ。

「あ、うん、そぅだね、でも、俺はまだ、その域には到達して、ないっ、かな」
「ご謙遜なさらずとも!灰廻さんは素晴らしいお方です!」

も、持ち上げてくれるのは嬉しいんだけど、今は物理的に持ち上げてもらえると有難いかな。
俺はもう限界でブリッジを崩した。怠けてたツケが回ってしまったようだ。若いときはこれくらいまだ余裕……いや、こんなもんだったかも。

ぱたん。と、地面に背中を付けた俺に飯田君はおや?と身を引いて、それから俺の腕を掴んで立たせてくれた。有り難う。

「そうだ。飯田君もパトロール中?」
「ええ。どうも東京の各所で違法薬物を摂取したヴィランが多発していまして。捕まえたヴィラン達の証言から、何者かに投与されている可能性が高いんです」

ポップのライブ会場に現れて暴れたヴィランも含まれる事件だ。そうか、飯田君も動いてくれていたんだ。
しかし、何者かが投与しているってどういうことだ?俺達がずっと前にトリガーに関わる突発性敵事件を調べていたときは、首謀者がターゲットに薬物を渡して使うように誘導していたけど。

「密売とかじゃなくて?」
「違います。加害者は皆、腕や足など、暴走化の前に身体の一部に痛みを訴えていたと目撃者からの証言もありました。密売で手に入れたなら、人目の付かない場所で使用する筈です」
「成程……」
「それと。薬物を使用したことで凶暴化するのは同じですが、暴走で個性がどれ程強化されるかは個人差がありました。特に暴走が著しかったのは正義感が強い人です」
「どうして分かったの?」
「警察官や警備員の方だったからです」
「えっ」

俺はギョっとした。そりゃ、稀に警察官が犯罪に手を染めるニュースとかあるけど、それとは違う。

前に俺が探っていた事件は加害者の闇を狙ったものだった。それとは逆の発想だ。加害者の光の部分を狙い、悪用している。劣等感をプラスに増幅させるのではなく、眩い正義感をマイナスに増幅させてるってことだよな。
うう、こっちの事件のが後味悪いなぁ。だってこれ、加害者が被害者だったわけだもん。

「灰廻さんも気を付けてください」
「俺?」
「薬物を投与している何者かの狙いはヒーローかもしれないんです」

つまり。その何者かは、正義感が強い者を凶暴化させる実験中ではないかということだ。最終目的がヒーローを加害者にすることにあるとすれば、飯田君が警告する通り、ヒーロー手前のヴィジランテが狙われる可能性だってある。

「き、聞いておいてなんなんだけど。その情報って俺なんかに教えて良かったの?」

ヒーローと警察関係者のみにしか許されない極秘情報ってやつじゃないかと、俺は遅れた頭でようやく察する。

「確かにそうです。けれど、この事件の推測をしたのは爆心地なんです」
「爆豪君?」
「はい。貴方と会うことがあれば、危険であると報せるように言われました」

この事件は東京各所のヒーロー事務所が一丸となって協力し合っているらしい。その話し合いの場で飯田君は爆豪君と顔を合わせたそうだ。

「彼は貴方を信用出来ると断言しました。情報開示も彼の進言です」

けれど、他のヒーロー達には内密でやり取りしたと飯田君は続ける。どうやら、爆豪君と飯田君だけで話を付けたことらしい。緑谷君に言うかはまだ保留みたい。俺に情報を開示してから決めるってことで、飯田君は今、爆豪君にスマホで連絡を入れた。

スマホを閉じて、飯田君は再び俺を真っ直ぐに見つめる。

「俺は部外者である灰廻さんを巻き込むのは反対でした」

厳しい口調の飯田君に俺はビクッとする。けれど、飯田君の表情は柔らかくなる。

「まだ、自分では決断出来ませんでした。だから、兄さんに相談したんです」
「天晴さんは、なんて?」
「協力してもらうべきだと」

飯田君は正義の眼差しをもって、俺に手を差し出した。

天晴さんから過去のトリガー事件を聞いた飯田君は、俺を先輩だと見込んでくれたのだ。事件の早期解決に必要不可欠な人材だと。認めてくれた。
飯田君はとても公明正大な子だ。お兄さんからの助言や願いだからといって、そのまま言われるがままなんてことはしない。天晴さんの言葉と情報を得てから、ちゃんと自分で考えて出してくれた答えだ。

俺は飯田君の手を、強く握り返した。





























◆後書き◆

シマエナガの個性ようやく決まりました。それ踏まえた感じに事件発生の巻。
ひろあか本編にヴィジランテで出てくるトリガー(らしき違法薬物)のこと触れる部分があったので、これを関わらせた話書きたいなと思って。

紅葉に囲まれてる勝デクは美しいに違いない。灰廻さんも思わず詩人になってしまうほどに。
かっちゃんが出久くんに立てなくしたるってのはアッハンウッフンではなくディープキスです。まだベッドインしてませんすみません。

マコト先輩の個性は発動条件とか種明かしを周りの人にしてしまうと使い勝手悪くなる類いだと思うので灰廻さんもずっと知らないままって前提で書いております。
この話から派生のマコト先輩視点をいずれ。

違法薬物事件の情報共有のための協議に東京の事務所からヒーローが何処かに集まってるんですが、そこで飯田君とかっちゃんが顔合わせてます。出久君も参加してて、集まりの会議がある度にかっちゃんの隣にいつも座ってます。他のヒーロー達からも不仲だと思われているので、並んで座ってるの不思議がられています。
このへんも灰廻さん視点では描写出来ないので、飯田君かかっちゃん視点で書ければ。





更新日:2018/01/24








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