◆REMOTE CONTROL story7◆
キョウシュウ殲滅はコーネリアがリフレインの輸入ルートであるキョウシュウルートを抑えた事で幕を閉じた。
表向きは。
ゼロの名前どころか、ランスロットの名前も出なかった事に少なからず疑問は残るが、軍内部でその話をする者は一人もいなかった。
ディートハルトは一時的に本職場に戻り、噂を流した。
ごく自然に、世間話をするように。
噂の内容はこうだ。
フクオカ基地に居た澤崎敦がコーネリアにどうして捕らえられたのか。
その一言で周りの者は食い付いた。
コーネリアの親衛隊が何人かそっちにまわったのではないかと言う者も居たが、指揮者無しで親衛隊がそこまでの働きをする事が出来るであろうか。
可能性はあるが、噂は信じる信じないは個人の自由だ。
ジャーナリストは噂好きが多い。
ランスロットは駒として役に立つ。
デヴァイサーは名誉ブリタニア人だが、いや、だからこそ、ブリタニアには都合が良い。
ナンバーズ一人が死んだところで問題は無い。
捨て駒と言っても良いだろう。
だから危険な任務も多い。
今回の澤崎の件に関してもそうだろう。
大切な親衛隊よりもナンバーズを。無論、そちらまで手が回らなかった事の方が大きいだろうが。
そこからフクオカ基地の話に戻り、数で圧倒的に不利だったランスロットが何故勝てたのか、それは黒の騎士団が関与したからだ。
耳を傾け始めた者が増え、ディートハルトは内心歓喜に満ちた。
ゼロはブリタニアから極秘に造られていたと思われる新型のナイトメアフレームを強奪し、正義の味方を貫いてランスロットの、ブリタニアの手助けをしたのだ。
後は、噂が流れ出せば・・・。
黒の騎士団専用の潜水艦は一度トウキョウ湾に姿を消した後、用事のある者のみ自宅や仕事に戻り、近くに帰る場所が無い者、まだやり残したものがある者はそのまま待機していたが、ゼロが戻ってくるという知らせにトウキョウ湾から離れたところから水上に上がり、戻ってきたガウェインを迎え入れた。
格納庫には数十体のブライ、カレン専用機の紅蓮弐式、藤堂専用機のゲッカ、そして、ゼロとC.C.が乗るガウェインがその中央に立ち並ぶ。
ガウェインから降りてきたゼロとC.C.を一番に迎えたのはカレンだ。
仮面をルルーシュに手渡し、微笑む。
「お帰りなさい」
「・・・・・・ただいま」
少し戸惑ったルルーシュの言葉にカレンは苦笑を一つ。
ルルーシュの後ろにもカレンは視線を送る。
「C.C.も。お帰り」
「ただいま」
驚いたようなC.C.の顔にカレンは笑みを濃くした。
カレンにとってC.C.は恋敵のようなものであったが、ゼロがルルーシュだと分かった今では意地など吹き飛んでしまった。
「で、話してくれるのよね」
カレンがそう言えば、ルルーシュは肩を落として笑った。
「信用が無いな」
「ゼロは信用してるけど、あんたは信用してないから」
「場所は?」
「あんたの部屋」
「良いだろう」
ルルーシュは仮面を装着してその場から歩き出し、その後をカレンが追う。
C.C.はラクシャータと何か少し話した後、ゼロとカレンの後を追った。
部屋に入った瞬間、ゼロが僅かにビクついたのをカレンは見逃さなかった。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもな」
「何だ、自室で犯されそうになったのがまだ恐いのか?」
カレンの問いに何でもないと、答えようとした言葉はC.C.に掻き消された。
その言葉にカレンが目を見開いたので、ゼロはC.C.を睨んだ。
しかし、仮面越しの睨みなどC.C.にとって意味は無い。
「部屋、変える?」
「此処で十分だ」
心配そうなカレンの顔にゼロはそれを視界に入れぬように自室の椅子に腰を下ろした。
カレンはベットに腰を下ろし、C.C.はパイロットスーツから拘束具に着替える。
衣擦れの音が響き、その音がしなくなれば、カレンは口を開いた。
「まずは、仮面を取って下さい」
ゼロは仮面に手を掛け、ゆっくりとそれを外す。
現れた漆黒の髪に本当にルルーシュがゼロなのだと再確認させられる。
「これで良いか?」
「ええ」
また沈黙が続き、C.C.は出入り口に向かった。
「私はラクシャータとか言う女に呼ばれているから、後はごゆっくり」
ガウェインの操縦についてだろうと、ルルーシュもカレンもC.C.が部屋を出ていく音を無言で見送った。
また、沈黙が続き、今度はルルーシュから口を開いた。
「先に言っておくが、全部は話さないぞ」
「良いわ。話せる範囲で構わないから」
そうか、とルルーシュは一度瞼を伏せて九年前の悲劇の始まりを思い出す。
ルルーシュから語られる言葉にカレンは静かに耳を傾けた。
母であるマリアンヌが殺害された事、それにより、ナナリーの目と足の自由も奪われた事がブリタニアに復讐する最大の理由である事。
強い者が上と考えるブリタニア皇帝の考えが許せず、いつかブリタニアを自分の手で壊すと決め、今がその時だと判断した。
黒の騎士団を創り上げたのは自身の軍隊が欲しかったから。
後はカレンも知っての通り、正義を貫き、黒の騎士団の規模を大きくし、此処まで登り詰めた。
大まかなものはこれくらいだろうと、ルルーシュは口を閉ざした。
「・・・・・・話してくれて、有り難う」
少し悲しそうな顔で微笑むカレンからルルーシュは視線を逸らす。
「いや・・・」
ギアスの事も、自分の身体の事も、カレンには話せなかった。
きっと、男であると偽っている事に疑問を持っているであろうが、その事には触れないのはカレンの優しさなのだろう。
何時か話す時が来るかもしれないが、今は、その心遣いがルルーシュには有り難かった。
頭を下げたスザクにロイドは残念そうな顔をする。
「本当に申し訳有りません」
「君が決めた事だし、文句を言うつもりは無いよ」
ロイドが手にしているのは脱退書だ。
「こんな紙切れ一枚で大事なランスロットのパーツが消えちゃうのは残念だけどね」
スザク以上のランスロットの適任者は居ないだろう。
少なくとも、このブリタニア軍には。
スザクの性格からして、彼は軍人に向いていない。
人が死ぬのを嫌いながら、人を殺す職業を選んだ。その矛盾がランスロットがスザクをデヴァイサーとして認めた理由ではないかと、ロイドは考えている。
「今まで、有り難う御座いました」
再び頭を下げたスザクにロイドは気にしていないと笑う。
「止してよ、僕はそんなタマじゃないし」
「いえ、お世話になったお礼はちゃんと」
「イレヴンって礼儀正しいって言うけど、君は硬すぎなんじゃない?」
脱退書をぴらぴらと靡かせてロイドはまた笑う。
横に立つセシルは心配そうにスザクを見る。その視線にスザクが笑えば、セシルは苦笑する。
「身体に気を付けてね」
「はい。ロイドさんも、セシルさんもお元気で」
荷物の鞄を持ち、スザクはロイドとセシルに背を向け歩き出す。
振り返ることはしなかった。
トウキョウに戻り、スザクは直ぐに脱退書の手続きをした。
けじめをつける為に。
セシルは特派の整備士達が動き回る中、機材に囲まれながらインカムを装着する。
PCにコードを打ち込み、インカムから聞こえるのは特別な回線コードを使ったランスロットとガウェインの間で交わされた会話だ。
盗み聞きは良くないとセシルとて分かっている。
だが、スザクが軍を辞めた理由を結び付けるには十分な内容だった。
スザクはゼロの正体を知っている。
そんな会話だった。
そして、スザクが軍を辞めて行く場所は一つしかないだろう。
誰にも言えない。
そう思い、インカムを外して一息吐き、休憩に入ろうと後ろを振り返れば、桃色の髪に目を奪われる。
「何をお聞きになっていたのですか?」
第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは優しく微笑んでいたが、真剣な瞳でセシルを見据えていた。
◆後書き◆
カレンたんルル様の生い立ちを知る(ごく一部)。
ルル様の方がユフィたんより年上なのにユフィたんが第三皇女と表記されているのは次のお話で分かります。
スーさん動き出す。
約一週間何しててもらおうか・・・。
ゲットーでも見回りに行ってるかな?
更新日:2007/03/24
ブラウザバックお願いします