◆REMOTE CONTROL story6◆









「操縦の仕方は判ってる?」

問うラクシャータにC.C.は頷きを返した。
そのままC.C.はゼロより先にガウェインに乗り込む。
それを途中まで見送り、ラクシャータはゼロを振り返る。

「ゼロはハドロン砲の操縦だけど、ゲフィオンディスターバーも実戦は初めてだから壊さないでよ」

「判っている」

ラクシャータが完成させたゲフィオンディスターバーは、まだ試作段階と言っても良い。
収束制御を第一に考えて造った為、ステルスの持続時間はかなり短いはずだ。

改善しなければならない点はまだ有るはず。
実験前に実戦とは、なかなか派手な事をする。

「判ってるなら良いわ。あら、親衛隊長さんがお目見えよ」

じゃあね、とラクシャータはガウェインのエナジーフィラーの確認の為にゼロを通り過ぎて配線まみれの他の機材の群に姿を消した。

ラクシャータと入れ違いにカレンがゼロの前に来る。

「どうした、カレン」

「私達は待機ですか?」

ゼロがルルーシュと分かってもカレンは敬語を使った。

「ああ、紅蓮弐式を出すまでも無いだろう」

「けど、ブリタニア軍に手を貸すなんてッ」

納得出来ないと、カレンの瞳は告げる。

黒の騎士団は今まで何度もブリタニアの邪魔をしてきたはずだ。
もちろん、それが全てでは無いがカレンには納得出来なかった。

「黒の騎士団がこれに関与するのが一番の目的だ」

「メディアは取り上げてくれませんッ」

ゼロとカレンの間に影が忍び寄る。
ゼロとカレンがその影の主を視界に入れれば、そこに立っていたのはディートハルトだった。

「確かに、紅月の言うとおりメディアは黒の騎士団の名前を出さないでしょうね」

ディートハルトはジャーナリストだ。その彼がそう言うのならば、ブリタニアに協力した黒の騎士団の名はニュースでは流れない。

「だったらッ」

「落ち着いてください。ニュースではブリタニア軍のみで事件を解決したと報道するでしょうが、噂は流させます。私が」

ディートハルト自らが噂を流すと言ったことにカレンは眉を潜める。

「・・・そういう事だ。もう良いな」

「待って下さい」

ガウェインに乗り込もうと翻るマントをカレンは呼び止めた。

「何だ?」

振り返ったゼロにカレンは息を吐いて決意を決める。
未だにゼロとルルーシュが上手く重ならないが、ずっと考えていてもしょうがないから。

「帰ってきてからで良いです。だから、ちゃんと話して下さい」

ゼロはカレンに向き直り、仮面を外した。
それに驚いたのはカレンとディートハルトだけでは無い。
格納庫にはまだ何人も団員がいる。

ルルーシュは仮面をカレンに手渡し、マスクを下ろした。

「そうだな。このままってわけにはいかないな」

「ゼロ?」

「ちゃんと話す。全部ってわけにはいかないが」

「いいわ。後、一つだけ・・・帰ってきなさいよ」

敬語では無くなったカレンにルルーシュは笑う。微笑むように。

「良いだろう。その仮面、無くすなよ」

帰って来るという証はカレンの両腕の中に。

「はい」

カレンの返事に満足そうに瞼を一度伏せたルルーシュは今度こそマントを翻してガウェインに乗り込んだ。
漆黒のナイトメアフレームは水上に上がった潜水艦から飛び立った。

「仮面はいいのか?」

「変声機ならインカムに付いてる」

後部座席に座るルルーシュを前部座席に座るC.C.は振り返り、見上げる。
その視線に対し、ルルーシュは右耳に掛けたインカムを親指と人差し指で輪郭を辿るようになぞる。

「そういう事ではない。もし失敗したらどうするつもりだ」

ガウェインが使い物にならなくなったら脱出の可能性だってある。
ブリタニア軍の者にでも素顔を見られれば、後は無い。

「失敗?何時から心配性になったんだ、お前は」

呆れた口調で返せばC.C.は不満そうに目を細めた。

「私はお前の盾だが、剣では無い」

『盾』・・・C.C.は守る者であって、決して力では無い。
C.C.が盾だと言うのなら、剣はあの男しかいないのだ。

「俺には盾も必要だ」

ルルーシュにとっては深い意味は無い言葉であったが、C.C.は前を見据え、ルルーシュが見えないところで優しく微笑んだ。






















フロートユニットが壊れ、ランスロットはフクオカ基地の上部に不時着した。

機体が傾くが、ランドスピナーで倒れることだけは免れ、中華連邦の二足歩行であり三輪で走るナイトメアフレーム、鋼髏(ガン・ルゥ)にマシンガンを打ち込まれる。
寸でのところでコクピットへの攻撃を免れたが、エナジーフィラーをやられた。

迫り来る五機の鋼髏に対し、ランスロットはコクピットブロックの側部に装備されているメーザーバイブレーションソードを腕を交差させて引き抜き、立ち向かう。

両手に持つ二本の刃は周波数300メガヘルツから300ギガヘルツ程度の領域でのレーザー振動を利用している。
淡く赤く光りを放っているのがその証拠だ。

向かい来る鋼髏をランドスピナーを左右へ交互に操り、ジグザグに動けば相手は撹乱し、その隙を逃さずにランスロットはメーザーバイブレーションソードで斬りつけていく。

五機の鋼髏を倒しても、再び新手の鋼髏が十機現れ、ランスロットは周囲を囲まれた。
エナジーフィラーも急速に底を尽きようとしている。

コクピット内の電源を下ろし、必要最低限にしていても後一分も保たないだろう。
鋼髏の固定火器がランスロットに向けられた。































やっと、死ねるのかな。


























『生きろ!』
























意識が呼び戻された。

今、自分は何を考えていたのだろうかと混乱する。
同時に何かに自我を支配されそうな感覚に操縦桿を力強く握りしめた。

顔を上げれば、ランスロットを取り囲んでいた鋼髏は何かの光りを受け、地面のコンクリートごと焼け焦げていく。

燃え盛る炎の中にランスロットに視線を合わせるように跪き、降り立ったのは漆黒のナイトメアフレーム。
ゼロが奪取した機体だ。

ならば、さっきの声は・・・ルルーシュ。

『生きているな。枢木スザク』

「ああ」

ガウェインから差し出されたエナジーフィラーにスザクは声しかしないオープンチャンネルに耳を傾ける。

『澤崎敦を確保する。援護をしてくれないか?』

ルルーシュの元々の声では無く、ゼロの声がスザクの耳に届く。

「残念だけど、君の思う通りにはならない」

ガウェインの手を取ったランスロットにルルーシュは顔を顰(しか)めるがそれも一瞬のこと。

スザクの次の言葉は

「自分が先に行く」

先陣を斬るのは自分だと。
それにルルーシュは口元に笑みを浮かべる。

意地っ張り。
どうせスザクもそう思っているであろうから、ルルーシュは考えを改めない。

『ヘマするなよ』

「もちろん」

ガウェインからエナジーフィラーを受け取ったランスロットは直ぐさま残り少ないエナジーフィラーと交換し、今の会話をオープンチャンネルで聞いて焦っているであろう澤崎が向かったと思われる飛行場へランドスピナーを回転させてフルスロットルで駆けていく。
その速さにガウェインは空を飛んでも着いていくのが精一杯だった。

ヘリに乗り込もうとしていた澤崎、曹将軍らはランスロットとガウェイン、白と黒の真逆の色を持つナイトメアフレームにその身柄を拘束された。

スザクの宣言通り、前を行くランスロットをガウェインが援護していく形となった。
ゲフィオンディスターバーも難無く異常も無く、威力を最低限に抑えたままのハドロン砲は無駄な被害は出していない。

軍が澤崎達を確保するために動き出すと同時にガウェインは去ろうとするが、ランスロットが眼前に佇んだ。

「ゼロ、少しだけ時間をくれないか」

『・・・・・・何だ?』

C.C.は沈黙を決め込み、ルルーシュがしたいようにさせる。
ルルーシュはじっとスザクの次の言葉を待つ。

「一週間後の午後二時にあの場所で待ってる」

『・・・・・・・・・』

「ずっと・・・待ってるから」

それだけを言い残し、ランスロットはガウェインに背を向けた。
ガウェインもランスロットに背を向け、飛び立った。

飛び立ち、こちらを振り返ることの無いガウェインをランスロットは振り返り、スザクはコクピット内の画面から夜空に溶けそうになるガウェインを見上げた。

自分には無い黒の色を持つナイトメアフレームをランスロットは焦がれるように見送った。



























◆後書き◆

メーザーバイブレーションソードについては色々自信が無いです。(汗)

もうそろそろサプライズなお話に行けるかと。
学園祭の話は無く、スーさんの「あの場所で待ってる」が。

本編20話で一番好きな台詞は「邪魔なんだよ、君達は」です。
入れたかったんですが、いつの間にかその場面過ぎてました・・・。


更新日:2007/03/21








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