◆REMOTE CONTROL epilogue◆









皇歴二○十八年、エリア11は日本の名を取り戻した。

共和国日本となったトウキョウ租界を中心に数々のゲットーの復興が開始され、ブリタニアの協力も得て、食べ物に困るような生活をしなくても済むところまで辿り着き、ゲットーが無くなると同時に共和国日本は日本に改名。

あの日から半年。

スザクは首相の仕事をしながら学校に通っていた。
その学校はアッシュフォード学園。

ミレイはスザクとルルーシュの退学届けを破り捨てたらしく、彼女が大学生となり、始業式を知らせる為にスザクのもとを訪れた。
スザクはアッシュフォード学園高等部三年生となり、ルルーシュの名も名簿に載っているらしい。



























スザクは胴着姿で枢木神社の縁側を気難しい顔をしながら歩いていた。
後ろに控えるのは、桐原、扇、カレン、玉城だ。
黒の騎士団は解散と同時に行き場のない者の殆どが政治に手を貸している。

現日本国首相枢木スザクは今、道場から帰ってきて早々、政治の話を聞かされている。
首脳陣のメンバーを決めなければならないのだ。

今まではあたふたしていた為、取り敢えず手の届く知り合いにあれやこれやと頼んでいたのだが、日本も落ち着き、政治はマスメディアにも取り上げられる問題の一つでもあるため、そう何度も出てくる人物が取っ替え引っ替えに変わってしまえば民衆からの反感を買うことになってしまう。

しかし、スザクも誰が何に適任かなんて分かるはずも無く、黒の騎士団についても誰が何が得意なのかさえ知らない。ゼロであったルルーシュなら知っているだろうが、ルルーシュから連絡をもらったことは一度も無く。

いつも連絡してくるのは彼女の異母兄であるクロヴィス・ラ・ブリタニア。
元々彼がエリア11を治めていたのだから、当然と言えば、当然だ。

しかし、ユーフェミアだったらルルーシュと連絡を取らしてくれるはずだが、彼にルルーシュの名を出せば直ぐに通信を切られてしまうのだ。
勘違いでも何でもなく、これは嫌われているのだろう。

スザクは溜息を落とす。



























「陛下、もうそろそろですね」

「あぁ」

黒のリムジンの中、バトレーは隣に座る人物に声を掛ける。
生返事なのは興味が無いわけではなく、窓の外を、流れる景色を食い入るように見つめているからだ。

落ち着きのない姿にバトレーは苦笑を隠せない。
いつもは取り澄まし、正確な判断を下す皇帝陛下がただ一人に会いに行くだけで年相応の顔を見せる。

喜ばしいことだ。だが、そんな姿を我が君に見せてくれないのは何故だろうと少し残念な気持ちにもなる。
ユーフェミアとは楽しそうに話すのに。

「なあ、バトレー」

「はい。何でしょうか」

「何故スカートなんだ」

「お気に召しませんか?」

「動きにくい」

「しかし、皇帝としての威厳を保つためですから」

「向こうではずっと男装していた」

「いえ、それは貴女がごねるからで、し・・・て」

バトレーは睨みの視線を感じて口ごもる。
そんなバトレーの耳に諦めにも似た溜息が届く。

バトレーが顔を上げれば、車は停止した。
溜息を漏らした人物は先程の表情を引っ込め、笑顔にその顔を染める。

「あ、皇帝陛下!」

「先に行くぞ」

「お待ち下さい!お一人で出歩いては!!」

階段を駆け登る。
白いドレスのスカートを持ち上げ、ステップを刻む。

木の陰を抜ければ、太陽の日差しが満面に差し込む場所へ。

階段を登り切り、上下する肩をそのままに目的の人物を見つけてその名を呼びながら駆け寄って行く。

「スザク!」

その声に振り返る。

碧の瞳が見開かれた。

「ルルーシュ!」

スザクは裸足のまま縁側から駆け出す。
二人の距離が縮まるその時、ルルーシュはスカートに足を取られ、身体を傾ける。

「ほわッ」

「危ない!」

スザクはルルーシュの下に滑り込み、ルルーシュが地面に身体を打ちつけないように自らをクッション代わりにする。

「ルルーシュ、怪我は?」

「あぁ、大丈夫だ。すまない、お前は?」

「僕は何とも無いよ」

「良かった・・・」

瞳と瞳が近づく。



「ゴホン」

ルルーシュとスザクがその咳の声を辿れば、カレンが仁王立ちしており、その横で死にそうに息を切らしたバトレーとSPが肩で息をしていた。

「何時までそうしているおつもりですか?枢木首相、皇帝陛下」

カレンはしおらしい髪型に黒のスーツ。あくまでお淑(しと)やかを装っているが、こめかみの青筋は隠せない。

今の状況に気付いたルルーシュとスザクは咄嗟に離れて立ち上がる。

「それにしても、久し振りね。半年か、アンタと会うのも」

「あぁ、カレンも相変わらずか」

「まあね。で、わざわざ皇帝陛下が此処まで来た理由は何?」

「サクラダイトの分配の法律を決めに来たんだ、クロヴィスは使えないからな。何度聞いてもまだ交渉出来ていないと言うし」

勝手にクロヴィスから通信を切られるのだ。
それはそうだろう。
スザクの苦労を知っているカレンは苦笑するしかない。

桐原達も集まり、ルルーシュは挨拶を交わす。

「お久し振りです、桐原公」

「ああ、また急な来訪じゃな」

それにルルーシュは苦笑する。
スザクを驚かしたかったなどと言えるはずも無く、ルルーシュは次に扇と玉城に向き直る。

「お前達も久し振りだな」

「あ、いや、皇帝陛下には本日もご機嫌麗しゅう」

「ふふ、扇、そんなに畏(かしこ)まらなくていいぞ」

「そ、そうか?じゃあ、久し振り」

「あぁ」

扇が差し出した手をルルーシュは握り返す。
それを横で見ていた玉城はじっとルルーシュの足下を見つめ、ルルーシュはそれに気付き、面白くなさそうな顔を露わにする。

「言っておくが、俺の趣味じゃないぞ。これはユフィが勝手に」

「天下のゼロ様がフリフリのスカート履いてるなんて元同僚に言ったらどんな顔するやら」

「お前は一言多いのが玉に瑕だな」

「何だと!」

「おい、やめろって玉城」

扇は玉城を手で制し、飛び掛かるなとその視線に訴え掛ける。
しかし、玉城は黙ってはいられなかった。

「でもよー、扇ぃ、こいつ女のくせに可愛げねぇし」

「安心しろ、お前に可愛いとは思われたくは無いからな」

「ほら、これだぜ?」

玉城の態度の問題だと扇は思うが、それを教えてやる義務は無いと無視を決め込んだ。
ルルーシュも此方とは話が終わったとスザクを見上げる。

「スザク、お前背が伸びたか?」

「あ、うん。そうかも」

半年の月日はスザクがルルーシュの背を追い越す程で、僅かにルルーシュの方が高かったはずの背はスザクを見上げなければならなくなってしまっていた。

「何か変な気分だ」

「それどういう意味?」

「別に意味は無いが・・・俺の方が先だったな」

「僕が迎えに行くって言ったのに」

「それを了承した覚えは無いぞ」

「分かった、負けを認めるよ。そうだ、ナナリーは元気?」

「あぁ、今は足のリハビリ中だ。まだ歩けないが、立てるようになったんだ」

ナナリーの話をすれば、ルルーシュは嬉しそうにナナリーの様子を語り、彼女の頑張る姿を思い出して微笑む。
スザクもその様子を思い浮かべ、彼女も進もうとしているのだと感じる。

「さてと、そろそろ戻らないとね」

カレンは扇と玉城の背を押して、神社の中へと向かい、その後を桐原が続く。

「陛下」

「あぁ、分かっている。先に行け」

「はぁ、分かりました」

バトレーとSPはカレン達を追い掛け、残ったのは二人だけ。
ルルーシュはスザクを真正面から見上げた。

「スザク」

「ん?」

「俺が待っているばかりだと思うなよ」

「ルルーシュ?」

ルルーシュはスザクの肩に両手を添えて踵を上げる。
風がふわりとルルーシュの髪とスカートを靡かせた。

一度の口付けは短いもので、けれどスザクは呆然とルルーシュを見下ろす。
ルルーシュは俯いたまま、顔を見せずにカレン達を追い越す勢いで走って行ってしまう。

スザクは暢気に固まっていたが、我に返れば、慌ててルルーシュを追い掛ける。

















二人が幸せでありますように。




























◆後書き◆

「REMOTE CONTROL」を今まで読んでくださった皆様、アンケート投票してくださった方、拍手を押してくださった方、コメントまでくださった方、本当に有り難う御座いました!m(_ _)m
皆様の応援の力で最後まで書き上げることが出来ました。

続編も考えておりますので、楽しみにお待ちしていただけると嬉しいです。(何時になるかは分かりませんが、ネタだけは色々)

では、ルルーシュとスザクの幸せを願って、乾杯!!


更新日:2007/09/11








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