◆REMOTE CONTROL final_story◆









ナイトメアVTOLに収用された無頼が持つのは大型のゲフィオンディスターバーの発生装置だ。

『気分はどうです?ダールトン卿』

『やはりスペックが違うな』

『まあまあ、そんな事言わずにぃ』

無頼に乗るのはダールトンだ。
ユーフェミアの護衛に付いていた彼はロイドがユーフェミアと別れ際、部屋の外に立っていたのをちょうど良いと勝手に引き連られて、協力してくれるように頼まれた。
渋々だったダールトンに状況を説明すれば、快く引き受けてくれたのだ。

『その辺に落としちゃってください』

『分かった』

無頼は球体のそれを手から放す。
そして発動する前にアヴァロンへときびすを返した。

球体は地面にめり込んで、その重さの存在感を露わにする。

『ラクシャータ、準備良いよ』

ロイドは通信先を切り替える。

『それじゃ、始めますか』

ラクシャータは自分よりも大きい鉄のケーブルの中、コンピュータのキーボードを軽やかに打つ。
最後に煙管の中から取り出したメモリースティックを差し込む。

画面のメーターが完全に点滅すれば、ラクシャータはいつもの煙管でスイッチを入れた。

















「なんだ!?」

サザーランドの騎士達はパワーダウンする自分の機体に戸惑う。
第一駆動系以外は動くものの、他は全て全滅。

仕方ないと、コクピットから出れば、全てのナイトメアフレームが同じ状態だ。
敵の無頼でさえも。

そんな中、ガウェインのみがその動きを止めることはなかった。
C.C.は起動停止したランスロットの元へ行く。
ランスロットのコクピットから姿を表したスザクにC.C.は言う。

『ガウェインのゲフィオンディスターバーが反発して影響を受けていないようだ。お前はこれに乗ってルルーシュのもとへ行け!』

「君は!?」

『私はもう・・・消える・・・』

「え?」

ガウェインはその場に跪き、スザクはガウェインに駆け登って、コクピットを開いた。
だが、そこにC.C.の姿は無かった。

それでも、今、すべき事とC.C.の願いを叶える為にガウェインのコクピットに乗り込む。
ガウェインは立ち上がり、空を舞う。
夜明けが近づく。

ルルーシュは宮殿の中だろう、宮殿の中に居たであろう皇族達は逃げ出すように外へと走っている。
その中にルルーシュの姿は見えない。

宮殿の炎が更に燃え上がり、崩れ行く。
スザクは焦り、ルルーシュの無事を祈るように映し出される画面を食い入るように見つめ、ルルーシュを探す。





見つけた。





黒の姿は紛れもなくルルーシュだ。

『ルルーシュ!』

ルルーシュにスザクの声は届いているはずなのに、ルルーシュはその場から動こうとはせず、炎に包まれそうになる。
駄目だと、スザクは手を伸ばすように願う。

『生きろよ!ルルーシュが俺の生きる場所なんだ!!だから、生きろ!!』

ルルーシュは肩を震わせ、床に跪いたまま後ろを振り返れば、ガウェインの赤い目が此方を見ていた。

「スザ・・・ク・・・・・・」

『ルルーシュ!』

生きろと願ってくれるのか、お前は。
それはギアスの命令では無く、紛れもなくスザクの願い。

一度伸ばした手をルルーシュは引っ込める。本当に良いのだろうか。
生きても。

こんなにも手を赤く、紅く染めてしまった自分は生きても良いのだろうか。

『生きろ、ルルーシュ!約束しただろ!!』

ガウェインの差し出した手をルルーシュは取る。
今度こそしっかりと。

ルルーシュはゼロの仮面を装着し、ガウェインの掌の上に。
外に出れば、既に太陽が覗いていた。

アヴァロンが水飛沫を宮殿や戦場と化した地の炎に捧げ、消火作業をしていく。
それが終われば、アヴァロンから最大音量で人々に声を掛けるのはユーフェミアの声。

『戦闘をお止めなさい!皇帝陛下はこの世を去られました。新たなる王はゼロです!!』

ユーフェミアの宣言に黒の騎士団から歓声が上がる。
それを受け入れられないのはブリタニアの皇族と騎士達だ。

『受け入れられない方もいるでしょう。ですから、ゼロ、私はそちらに向かいます』

貴女を認めさせる為に。
アヴァロンの操縦室に突然姿を現し、ユーフェミアは命令を下す。

「アスプルンド伯爵、アヴァロンを降ろして下さい」

「はぁい」

ユーフェミアは風のようにその場を去り、地上に着いたアヴァロンから降り、近くで跪くガウェインに駆け寄る。
髪が乱れたって構いはしない。
それよりも気掛かりなのは・・・。

『皇女殿下?』

「そこに乗っているのはスザクですか?では、私をルルーシュの側に」

『は、はい』

ガウェインは左手をユーフェミアに差し出し、その上にユーフェミアは乗り、ゼロの隣に立つ。
ガウェインは両手を固定させて空に舞い上がる。

空は既に青い。

「ルルーシュ、終わらせましょう。混沌を」

「・・・・・・ユフィ、俺は」

「逃げないで、ルルーシュ。最後までやり遂げるのは貴女の役目よ」

「そうだな・・・此処までやってしまったのは、俺だ・・・背負ってみせるさ、世界を」

ルルーシュはそうでなければ。
ユーフェミアは微笑む。彼女を自分は支えてみせるのだと。

ガウェインが黒の騎士団とブリタニアの騎士達の中心に降り立つ。

「お聞きなさい!ゼロが新たなるブリタニアの王となるのです!」

ユーフェミアはゼロに向き直り、ゼロもユーフェミアに向き直る。
向かい合う二人。
ユーフェミアは両手でゼロの漆黒の仮面を取る。
その素顔を晒す。

ユーフェミアはまた人々を見下ろす。

「ユーフェミア・リ・ブリタニアの名の下に、此処に、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの復活を宣言いたします!!」

ゼロが皇族の人間だったということに黒の騎士団達は言葉を無くす。
瞬時に戸惑いのざわめきが沸き上がるが、それを紅蓮弐式から降りたカレンが制する。
そんなカレンの行動に感謝しつつ、ルルーシュは小さく深呼吸をした。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!エリア11を解放しよう!そして日本の名を返し、日本を率いる長に枢木スザクを任命する!!」

今度はスザクが驚く番だ。
ルルーシュはガウェインに向き直る。

「すまない、スザク。お前との約束は守れそうにない」

『それは・・・』

「一緒には帰れない。俺はこの国を立て直さなければならないんだ」

『・・・・・・また、会えるよね・・・』

「あぁ、また会える。平和を手にして」

『なら、迎えに来るから』

「馬鹿、俺が迎えに行ってやるさ」

どちらが先に国を復興させるのか、競争が始まる。
































黄昏の景色。

浮かぶ祭壇のような場所に四人の影があった。

見守る世界に操作は必要無いのだ。
































『人は・・・・・・幸せを求める存在である。

 ブリタニアの少女「ルルーシュ」が望んだことも、小さな幸せにすぎなかった。

 特別なことではない。

 少なくとも行動の根源には、人として、ごく当たり前の、とてもささやかな願いしかなかった。

 そんな夢を、そんな誓いを誰が否定できるのか。

 誰にそんな資格があるというのか。

 だがしかし、人は、だれしもが否応なく他者と・・・・・・世界と関わることでみずからを規定され、定められてしまう。

 ならば、個人の思惑など、世界の意志を前にしては、どうしようもなく流されてしまう儚い存在でしかない。

 罪と罰。

 運命と裁き。

 ルルーシュの前に立ちはだかったのは、「みずからが生み出した過去」であり、「人が人であるがゆえの憎しみ」か。

 それでも今は感謝すべきであろう。

 そう。少なくとも、人が幸せを求める存在であることに・・・・・・。

 一縷の望みは、ほのかなる願いは、絶望からこそ生まれいずる。












 いや、訂正しよう。












 一縷の望みは、ほのかなる願いは、約束からこそ生まれいずる。

 願わくば、黒の皇女と白の騎士に幸せな未来が待っていることを・・・。

 これも小さな、ほんの小さな幸せなのだ。

 ただ、笑顔を忘れないで欲しいと願う。

 此処にいる全ての人に言おう。

 本当の自分を、みずからを忘れてはならない。

 みずからが求めた幸せが何であるのか、それを問い掛ければ、真実は見える。

 きっと、それはささやかなものではないだろうか。

 希望のように絶対的ではない霞んだそれと未来は似ている。

 それを手に入れられるか、手に入れられないかは、みずからの必然次第であり、みずからが定めた運命の橋と他者に定められた運命の橋が繋がれた瞬間に決まる。

 運命と必然は決して真逆ではなく、むしろ同じなのだ。

 遠隔と約束。

 この物語に終止符を。そして、幸多からんことを。』



























C.C.は涙を流し、頬に流れる滴が無くなれば、表情を改めてにこりと笑う。




























◆後書き◆

最後のナレーションの「少年」を「少女」に変更して、「いや、訂正しよう。」から勝手に付け加え。

これで取り敢えずは終了という形になります。
楽しんでもらえたなら、それが私の幸せです。


更新日:2007/09/11








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