◆REMOTE CONTROL story4◆









現れた金目の少女はゼロの繋ぎと仮面を持って佇んでいた。

彼女に気配は無く、藤堂も四聖剣も身を強ばらせた。
こんな少女が気配を消す術を持っているとは考えたくも無い。

「お前の部屋で突っ立っていた輩は処分しておいた」

ルルーシュに向けられた言葉に感情は無い。

「・・・・・・」

C.C.ならば判断を間違うことは無いだろうと、ルルーシュは瞼を伏せた。

生きていようが、死んでいようが、自分には関係無い。
黒の騎士団の連結が乱れなければ何の問題も無いのだから。

「下着も持ってきてやったぞ」

「寄こせ」

「随分な言い草だな、ルルーシュ」

ルルーシュへと歩み寄るC.C.に道を空けるため、千葉は一歩下がる。
藤堂と千葉の間にC.C.は我が物顔でそこに立ち、ルルーシュを見下ろす。
目を細め、ルルーシュはC.C.を見上げる。

「お前があそこで俺の仮面を取らなければこんな事にはならなかったんだ。お互い様だろう」

C.C.は艶のある笑みを口元に浮かべ、ゼロの衣服をルルーシュの膝の上に布団越しに存外に置く。
ルルーシュは衣服を確認する為に視線を落とした。

「成る程、一理ある」

「一理もクソもあるか」

悪態を吐くルルーシュをC.C.は無視する。

「ところで、ルルーシュ」

「何だ?」

C.C.は面倒臭そうに顔を上げたルルーシュに白い衣服を広げる。
その服は所々に金の模様があしらわれ、身体にフィットするようなスーツだ。

「これは何だ?」

「ああ、それか。それはお前のだ、C.C.。お前にもナイトメアに乗ってもらわないと行動しにくいと思ったからな」

「私の?」

「ちょうどガウェインは二人乗りだ。不服か?」

挑発するようなルルーシュの笑みにC.C.も負けじと笑みを濃くする。
C.C.には白が似合うと。

「良いだろう、この身はお前の盾となろう」

共犯者は再び契約を交わした。
C.C.はくるりと後ろを向き、自分のパイロットスーツを抱き締める。

「惜しいな。貴様が男だったら惚れていたものを」

「冗談はピザを入れる胃袋だけにしろ。お前みたいな女こっちが願い下げだ」

ピザの単語にC.C.は思考を移した。
数日間口にしていないので物足りないのだ。

首を捻り、肩越しにC.C.はルルーシュを振り返る。

「なあ、ルルーシュ」

「ん?」

「何時になったらピザを注文出来る」

お前の頭はそれしか無いのかとC.C.の頭の中を覗いてみたくなるが、ルルーシュは溜息と共にその考えを吐き出した。
とにかく、今は今後の作戦を考えなくてはならない。
トウキョウに戻ってから練るのも遅くは無いかと、ルルーシュは思案した。

「分かった。艦長にトウキョウに向かえと言って来い」

「帰るのか?」

「帰らないとピザも食えないが?」

「そうか。言ってくる」

C.C.はルルーシュの言付(ことづ)けを艦長に伝える為に千葉の部屋から出ていった。
閉まった扉を見つめ、ルルーシュはほっと息を吐く。

C.C.の行動はいつも気紛れだ。
ルルーシュでさえ予測不可能な相手であり、同時に本音をぶつけられる対等の人物でもあった。

ルルーシュはC.C.が置いていったゼロの衣服を手に取る。
その行動に千葉は声を掛ける。

「着替えますか?」

「そうだな」

そう言って、突然カッターシャツを脱ぎだしたルルーシュに千葉は慌てた。

「なッ、何脱いでるんですかッ!?」

ルルーシュの両手首を掴み、千葉は脱ぐことをくい止めた。
千葉だけならば兎も角、男が居る部屋で女性が簡単に素肌を見せて良いものでは無い。

「何って、着替えを」

「着替えるならシャワールームに行って下さいッ」

「・・・・・・ああ、そうか」

今気付いたとばかりにルルーシュは藤堂達を視界に入れた。
理解してくれたかと、千葉はルルーシュの手首を放す。

瞬間、部屋の扉が開き、C.C.が顔を覗かせた。

「言い忘れていた」

「何をだ?」

C.C.を振り返るルルーシュにC.C.は首を横に振る。

「お前にじゃない。他の奴らだ」

C.C.は千葉、藤堂、朝比奈、仙波、ト部と視線を一人ずつ見渡した後、

「其奴は何処か抜けてるから気を付けてくれ」

C.C.は扉から顔を引っ込める。

軽い音を立てて扉が締まり、C.C.の言葉が藤堂と四聖剣の頭の中で繰り返された。
五人の視線がルルーシュに集中する。
視線を一気に受け止めたルルーシュは怪訝(けげん)な顔を残し、それらの視線からゼロの衣服へ視線を移して衣服を両手に抱えた。
布団から抜け出れば、外気がルルーシュの素足を冷やしていく。
カッターシャツ一枚では太股あたりまでしか外気を遮断してはくれない。

「シャワールームは何処だ?」

「あ、はい。あちらです」

意識を飛ばしていた千葉はルルーシュの声にはっと、我に返った。
千葉が台所の横を指さした先には白い扉があり、そこがシャワールームに繋がる扉であると知れた。

示された扉に向かうためにルルーシュは床に足を付くが、立ち上がろうと腹に力を入れると同時に下腹部が痛み、眉を寄せた。

「すまない。貴殿が取り乱した故、少々手荒をした」

謝る藤堂にルルーシュは自分が取り乱した事実を知る。
その時の記憶は無いが、自分が取り乱す理由は一つしか無い。




過去の・・・。




そこまで思い至って、ルルーシュは自嘲の笑みを浮かべた。
我ながら脆(もろ)いな、と。

「いや、正しい判断だ」

その言葉に藤堂は納得のいかない表情をする。その顔は俯いているルルーシュに見られることは無かったが。

自嘲はこんな子供が浮かべて良い笑いでは無く、ゼロとして言ったであろう言葉もルルーシュ自身を傷つける言葉であると、ルルーシュは気付いているのであろうか。
いや、気付いているのだろう。
それを分かっているうえで自分を追い込んでいるに過ぎない。
頂点に立つとはそういう事だ。

ルルーシュは下腹部の痛みも退いたところでベットから立ち上がり、シャワールームの扉へ向かう。
ルルーシュの姿が消えてから、藤堂と四聖剣の間に会話は無い。

藤堂は椅子から立ち上がり、テーブルにティーカップを置く。既にそのカップには紅茶は満たされていない。

沈黙が続く中、シャワールームに続く扉から姿を現したのはゼロだった。
全身黒ずくめに、漆黒の仮面。
黒の騎士団の頂点に立つ王の君臨に背筋を伸ばす。
本当に彼女がゼロなのだと。

「藤堂、次の作戦会議を開く。私と共にミーティングルームに来い」

頷いた藤堂にゼロは仮面の奥に笑みを浮かべた。
藤堂達にゼロの笑みの気配は感じられたが、その笑みの種類までは把握出来なかった。

トウキョウに着くまでにはまだ時間がある。






















同時刻、フクオカ基地が占領された。



























◆後書き◆

ルル様とC.C.の掛け合いが楽しかったッ
しかし、話が進んで無いな。
次は本編20話捏造へ!ナイトメア書けるかと!!

書く前にもう一度20話見ます。
枢木政権とか占領とか政治的っていうか、世界情勢的なものを理解するために。
社会は苦手なので、一度見ただけでは理解していなくて・・・。

第一部っぽいのが終わった感じです。

更新日:2007/03/13








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