◆REMOTE CONTROL story38◆









漆黒のナイトメアフレームが暗闇の空に飛び立つ。
両手を広げて舞い上がり、ひんやりとした空気を切る。

赤い瞳は神聖ブリタニア帝国を見下ろす。

遂にこの時が来たのだと、漆黒の髪の少女は口元に笑みを浮かべる。
彼女の笑みの気配をC.C.は背中越しに感じ、自嘲に近い表情を浮かべた。

ガウェインの後ろには数多くの無頼を収用したナイトメアVTOLが続く。
四聖剣が搭乗する月下は二機ずつガウェインの両側を。藤堂はその下を。
カレンの紅蓮弐式はナイトメアVTOLの上に腕を組んで立ち、ガウェインの上を。

純白のナイトメアフレーム、ランスロットはアヴァロンからランドスピナーを走らせ、赤い翼をその背に夜空を一回転しながら舞う。
五百を越える数のナイトメアVTOLの上を誰よりも早くランスロットは駆け抜け、ガウェインの前方へ、先頭を切る。

駒は揃った。
さあ、始めようか。

『総員、覚悟は良いな!これが黒の騎士団の力、ブリタニアを倒せ!!』

息を飲む。巫山戯てなどいられない、誰もが真剣に操縦桿を握る。
ブリタニアの空を舞う。

黒の騎士団は全てブリタニア宮殿へ。
他のレジスタンスの空の部隊はゲフィオンディスターバーを作動させる為の力場発生装置を運んでいる。

潜水艦はラクシャータの指揮により海底の奥深く。
アヴァロンを指揮しているのはセシルだ。

ロイドはアヴァロンの一室で通信機を開き、ディスプレイに現れた人物に笑みを浮かべる。

















ブリタニア製ではないナイトメアを感知したブリタニアの管理システムから各部隊に警報が響き渡り、騎士達はサザーランドに乗り込む。
緊急事態にナイトポリスも出動要請を強いられた。

慌てはしないと騎士達は深呼吸するが、初めて目にするナイトメアフレームに息をすることも忘れる。

何だ、あれは・・・。

誰の呟きか、それさえも届かぬ程に上層部の機密事項であったガウェインを一介の騎士達が知るわけも無く、がむしゃらにアサルトライフルと大型キャノンを連射していく。
だが、ガウェインは全ての攻撃を弾き、神同然に舞い降りる。

紅蓮弐式はナイトメアVTOLから飛び降り、眼前に迫ったサザーランドのファクトスピア目掛けてその頭を大きな右手で掴み、長い爪をくい込ませる勢いで握る。

輻射波動を喰らわせる。
内側から破裂するようにサザーランドの頭が拉げると同時にその熱はコクピットまで及ぶ。

紅蓮弐式のデータはブリタニアにも送られてきている。
第二皇女コーネリアを苦戦させた相手に騎士達は冷や汗に気付かない振りをして立ち向かう。
一機のサザーランドが紅蓮弐式に突っ込む。

「学習能力が無い奴らだな。そんなんで私の紅蓮弐式が負けるわけ無い!」

カレンは再び輻射波動を発動させる為に右の操縦桿を押し上げる。
相手の頭を取り、勝利の感覚に強気に笑みを浮かべるが、後ろからの衝撃に歯を食いしばる。

「何!?・・・そう簡単には勝てないってわけか」

正面から立ち向かってきたサザーランドは囮、後ろからの銃撃にカレンは驚くも、状況を直ぐさま理解すれば、掴んだサザーランドに輻射波動を喰らわせずに後ろのサザーランド達に向かって投げ飛ばす。
倒れ行く数機のサザーランドを避けて、また他のサザーランドがアサルトライフルを紅蓮弐式に向ける。
紅蓮弐式は銀の手をかざして身を守るように走った。












ナイトメアVTOLから降りた黒の月下は赤髪を靡かせ、正座の姿勢で地面に降り立ち、一本の剣を腰に。
三機のサザーランドが月下に向かい来る。

月下はギリギリの所まで動かず、サザーランドがアサルトライフルで狙いを定めた瞬間に動き出す。
風のように走る月下の動きをサザーランドは捉えきれない。そもそもの剣技が違うためか、サザーランドの騎士達は突然動かなくなった自分の機体に戸惑いと焦りが混じる。

月下は三機のサザーランドを背後に剣を収める。
同時に崩れるサザーランドは成す術無く。

四聖剣の月下は藤堂の月下の周りに集う。
藤堂は廻転刃刀から制動刀に持ち替え、その刃から炎を吹き出す。

元日本解放戦線の力はまだこんなものでは無い。
旋回活殺自在陣のフォーメーションを取る。

我らの本気を出させてみろ!

















ヴァリスを持つ手が震えているようだ。
恐怖?いや、そんな簡単なものでは無いとスザクは僅かに首を左右に振る。
初めて使うような感覚だ。実際に初めてなのだが、ランスロットに初めて乗った時にはこんな感覚は味わっていなかった。

ランスロットは自分の分身だ。思うように動いてくれる。
だが、このヴァリスは今までとは違うのだ。

失敗は覚悟の上。

弾にサクラダイトを使用したことは今までに無いとロイドの口から聞いた。
あくまで燃料として使っていたのだ、サクラダイトは。

何処までやってくれるのだろうかという不安はある。けれど、とランスロットは自分の後ろに控えるガウェインを見上げる。

そして前に。

サザーランドの壁を突破するにはヴァリスを使うしかないだろう。
引き金を引く。
赤白い閃光が瞬く。

だが、目を奪われている暇は無かった。
放射の力に耐え切れず、ランスロットの身体が後ろに押されていると気付いた瞬間にランドスピナーで前進するようにフルスロットル。

それでも機体は前に進まず、ゆっくりと後ろへ押される。

「うおおおおおお」

行け。
前へ進め。

閃光はサザーランドの壁を壊し、威力に驚いたサザーランド達は散っていく。
スザクはそれで良いと思う。
命は出来るだけ散らせたくは無い。
今更かもしれないけれど、直ぐには割り切れなかった。
燃え尽きる逃げ遅れたサザーランドに表情を歪める。

大切な人・・・居たんだろうな・・・。

閃光は宮殿をも大破させた。
抉られた大地をガウェインはランスロットを追い越し、飛びながら宮殿へと向かう。

ヴァリスは己の威力に耐えられずに爆破し、ランスロットの右手までももぎ取っていく。
使いものにならなくなった右腕を左手で引き抜き、足下に倒れているサザーランドの右腕を引き抜き、自分に換装する。

まだ戦いは終わっていない。

迫り来るサザーランドに向かい、メーザーバイブレーションソードを引き抜く。
赤い剣が翼と共に飛行する。












ガウェインは大破した宮殿から深紅の絨毯が覗く部屋に手を掛ければ、赤い光に包まれる。

「しまった・・・トラップだ!」

「どういうことだ!?」

世界が線になる。

「慌てるな、感情を乱さなければどうという事はない」

C.C.の言葉に集中する。
ただ、流れる映像に身を任せる。

戦争だろうか?
今時戦車なんてものは無い。昔?

目の前を駆け抜けるのは・・・。

「C.C.?」

何故だと問い掛けたいが、その前にC.C.は額を撃たれて・・・死んだ。

「止めろ!」

ルルーシュの声は届かない。
C.C.の過去が流れ、止まらない。

胸の傷は羽ばたく鳥のよう。
青空から灰色に。

石が投げられる。忌み嫌うように。
C.C.は身動きがとれない状態で焼かれる。
教会で苦しみ、泣く。

拷問の道具が次々に現れ、C.C.を・・・・・・。

「やめ・・・、止めろ!!」

終わる。

白の世界にルルーシュとC.C.だけ。

「C.C.、お前は・・・」

「私に残っているのは魔女としての記憶だけ。自分が何者であったのかさえ忘れてしまった。私を嫌った人も優しくしてくれた人も時の流れに消えてしまった・・・・・・・・・私、独りだけ・・・」

「独りじゃないだろう」

C.C.は驚いてルルーシュを見つめる。
独りだった。独りで良かった。傍観者が私。
それを否定するのか。

「お前が魔女なら、俺が魔王になれば良いだけだろ」

少女にしては勇ましくも頼もしい言葉にC.C.は微笑む。

彼女との契約はこんなにも満たしてくれていた。
二度目の握手を交わす。






・・・・・・ありがとう。






純白の羽根が舞ったような気がした。

















ガウェインは宮殿の中にその手を差し出す。
ルルーシュは仮面を手に持ち、宮殿に足を着く。

「勝てよ、ルルーシュ。自らの過去に・・・」

「お前も・・・・・・・・・死ぬなよ」

「私を誰だと思っている」

「そうだったな。ああ、分かっているさ、C.C.」

ルルーシュは仮面を被る。

ガウェインは後ろに迫ったサザーランドに回し蹴りを喰らわし、向かってくるサザーランドに金の爪を差し出し、スラッシュハーケンで身動きを塞ぐ。
ワイヤーを回収しながら、その勢いで蹴りを。







必ず勝て。

私とお前の契約。
私の願いはお前が王になること。

王となれ。

ルルーシュ、お前は魔神の力を得ている。
王の器に相応しいと私が見定めたのだから、失望させるな。












なあ、マリアンヌ。




























◆後書き◆

ナイトメア戦を書くのが楽しすぎてスザルルじゃなくなっていく・・・。(大汗)
いや、ちゃんと最終回はスザルルにッ

台風が近づいているのか、窓がガタガタいってます。


更新日:2007/09/06








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