◆REMOTE CONTROL story34◆
安堵の息を吐いたスザクはその場に座り込む。
「あ、おいっ」
ルルーシュの手はスザクの手と握り合ったままで、引かれるようにルルーシュもバランスを崩してしまう。
「ごめん。何か安心しちゃって・・・」
「気が抜けた?」
「そうみたいだ」
「全く」
ルルーシュは呆れ果てた声で溜息を吐くと、スザクの横に正座して座り込む。
膝に掛かって邪魔なマントを払いのけて、ルルーシュはスザクのふわふわな茶色い髪を一筋、くいくいと軽く引っ張る。
「ルルーシュ?」
「・・・・・・膝枕」
「え?」
「嫌ならいい」
ルルーシュはスザクの髪から手を放して、スザクと距離を取ろうと左へ両手を使って移動しようとしたが、スザクはそれを遮るようにルルーシュの右手首を掴んだ。
「誰も嫌だなんて言ってないじゃないか」
「変な顔しただろ、お前」
「いや、それは突然だったから理解しきれなかっただけだよ」
「本当に嫌じゃないか?」
「嫌じゃないよ。むしろ好きかな」
『好き』という言葉にルルーシュは瞬きを繰り返す。
そういえば、あまり『好き』と言い合ったことは無い。
というか、自分から言ったことなんてあっただろうか?
再会してから一度も言ったことが無いのは確かだ。
「どうしたの?」
思考に走りすぎていたルルーシュをスザクは不審そうに覗き込んだが、ルルーシュが突然顔を赤くしたことに小さく笑う。
気付かれたと、ルルーシュは更に顔を朱に染めて、そんな顔を見られまいと俯く。
「ルルーシュから好きって聞きたい」
「ば、馬鹿かッ、そんな簡単に言えるわけッ」
「駄目、かな?」
「駄目というか、まだ・・・その・・・」
「恥ずかしい?」
「だって、俺達、友達だろ?」
クロストークしていた。
「C.C.」
長い沈黙の後、呼ばれ、C.C.は顔を上げる。
「久しぶりだな、クロヴィス」
皇族に対しての物言いとは思えないC.C.の言葉遣いにジェレミアが身を乗り出すが、ユーフェミアが手でそれを制す。
視線でさえも厳しくジェレミアを止める。
そんなユーフェミアにジェレミアは一歩下がり、口を閉ざすしかない。
こんなにも活ある瞳の色をユーフェミアから見たことは無く、世間知らずな外見とは中身が裏腹であることに気付かされる。
「ルルーシュに何故、力を与えた・・・」
悲痛なクロヴィスの声にC.C.は視線を逸らす。
クロヴィスが何を言いたいのか分かっているのだ、C.C.には。
「運命だよ、何もかも」
「あの力は破滅を招くことを知っているはずだろう」
「知ってるさ・・・だが、最終的に選んだのはアイツ自身だ」
生きる理由がルルーシュにはあった。
だからギアスを与えたのだ。
あの時、ルルーシュが少しでも死んでも構わないと思ったならば運命は変わっていた。
いや、終わっていた。
「どうなるか分かっていながらか?」
「あぁ。暴走しかけたが、今はもう大丈夫だよ」
C.C.はルルーシュとスザクが残る部屋の扉に視線を送る。
そちらにクロヴィスも視線を追うように辿る。
「あの一般兵が何か?」
「元日本国首相の息子と言えば合点がいくんじゃないか?」
ルルーシュとナナリーが日本に送られて保護された場所を思い出せば、クロヴィスは慌てたように身体ごと扉に向き直ってそちらに向かおうとするが、C.C.に腕を取られる。
「大丈夫だと言っているだろう」
「だが、首相の息子などとッ」
「あの男もあの女もお互いに惹かれ合っていると言ってもか?」
C.C.は楽しそうに唇の隅を引き上げる。
その言葉にクロヴィスは言葉を無くし、まじまじとC.C.を見つめ返す。
「後は、あの男がどれだけルルーシュに本気なのか見守るだけさ」
もちろん、見守るのはルルーシュの胸の成長である。
C.C.はクロヴィスの腕を放し、彼を通り過ぎて扉の前に立つ。
「C.C.さん?」
不思議そうにユーフェミアはC.C.の背中に声を掛ける。
「もう良いそうだ」
「え?」
C.C.はユーフェミアの疑問に答えること無く、扉に手を掛ける。
そのまま開いた扉の中に進んでいく。
慌ててユーフェミアもC.C.の後をドレスのスカートを持ち上げて小走りに追う。
部屋の中に入っていくのは二人だけで、後の四人は顔を見合わせて、扉の外から中を伺うだけに留まる。
「何だ、寝ているのか」
C.C.は床に座り込むルルーシュを覗き込み、次いで、彼女の膝に頭を預けるスザクを見てほくそ笑む。
「ルルーシュにしてはいじらしいじゃないか」
きっと二人とも疲れているのだろう。
休む暇なんて殆ど無かったはずだ。
ユーフェミアもルルーシュとスザクを覗き込み、あらあらと微笑む。
「疲れているんですね。けど、このままじゃ風邪を召されてしまいそう」
「起こせば良いだろう」
「でも可哀相ですよ」
「どうせ今から会議の時間のはずだ。起こさないほうが酷だろう」
「そうですか?じゃあ」
ユーフェミアはルルーシュを抱き起こす。
その流れに沿ってスザクは床に頭を打ちつける。
先に目を覚ましたのはスザクで、彼は肘をついて起き上がる。
辺りを見回すと、にっこりと微笑むユーフェミアと目が合い、直ぐさま立ち上がる。
「おはよう御座います。皇女殿下」
「おはよう御座います。頭は大丈夫ですか?」
「え?あ、何か・・・痛い?」
「結構な石頭だな」
C.C.の感想にスザクは彼女を振り返り、首を傾げる。
次いでルルーシュが目を覚ます。
紫電はユーフェミアを映した。
「ユフィ?」
「はい。そうですわ、ルルーシュ。今度、私にも膝枕して下さいませんか?」
「あぁ、別に構わな・・・い・・・・・・が・・・」
ユーフェミアが落とした言葉の爆弾をルルーシュは自分の頭の中で繰り返す。
見られた?
目を見開いてルルーシュは声にならない声を繰り返した後に問い掛ける。
「もしかして・・・見たのか?」
「もちろんです。スザクばっかりずるいじゃありませんか」
ルルーシュは目眩と同時に意識を飛ばそうとしたが、C.C.の言葉に我に返る。
「そろそろお前が定めた会議時間だぞ」
「なッ!?」
もうそんな時間かと、ルルーシュは慌てて仮面を拾い上げて、その場から足を踏み出す。
「スザク」
呼べば、彼は仮面を装着したゼロに続く。
肩を並べるは戦友か。
それとも・・・。
「お前達はどうするつもりだ?」
C.C.は問い掛ける。
「私はゼロと共に本国へ行きたいです」
金の瞳を見返したユーフェミアは凛と言い放った。
「此処はどうする?任されているのだろう」
ユーフェミアはクロヴィスを振り返る。
そして歩み、目の前で立ち止まる。
「クロヴィスお兄様、お願いがあります。此処を、共和国日本とエリア11を守って頂けませんか?」
真っ直ぐな瞳にクロヴィスはじっと、ユーフェミアを見つめる。
「ユフィ、お前は・・・」
「私はゼロの、ルルーシュの力となりたい。ゼロの言葉を素直に聞き入れるブリタニア人はきっと少ないから、私がルルーシュを押し上げてあげるの。だから、お願いします」
頭を深く下げたユーフェミアにクロヴィスはしょうがないといった小さな吐息を一つ。
「良いよ、ユフィ。此処は私が守ろう。元々、私が治めていた場所だ」
ユーフェミアは喜色満面に顔を上げる。
「有り難う御座います」
クロヴィスはユーフェミアに微笑み掛け、ダールトンを振り返る。
「ダールトン、此処まですまなかった。有り難う。君はユフィと共に行ってくれ」
「しかし・・・」
「君の仕事は私を送り届けるまでだ。私と共に居るより、ユフィの側に居た方がコーネリアに直ぐ会えるだろう」
「心遣い、痛み入ります」
ダールトンは形式的な礼を一つ。
クロヴィスは礼を受け取り、ジェレミアとヴィレッタを振り返る。
「君達はどうする?」
「私達は・・・」
ジェレミアとヴィレッタは顔を見合わせる。
ルルーシュに言い渡されたのはユーフェミアの護衛だ。
だが、それはこの総督府の警備も含まれている。
「お前達の好きにすれば良い」
C.C.が彼らに歩み進み、通り過ぎる直前に言い残す。
C.C.の後をユーフェミアが追い掛け、ダールトンが続く。
ジェレミアとヴッレッタの元々の直属はクロヴィスだ。
ならば、考えるまでも無い。
「私はクロヴィス殿下のお心のままに」
「私もジェレミア卿と同じ気持ちです」
ジェレミアとヴィレッタはクロヴィスに跪く。
右腕を胸の前に、左腕を背に。
主の騎士である証の形を捧げる。
「有り難う。ならば、共に守ろう、この国を」
世界は顔を変えるか・・・。
◆後書き◆
ぶっちゃけまだ作戦完成してない・・・。
何を使うかは決まっております。
さて、ユフィたんをゼロは連れていってくれるのか。
更新日:2007/08/12
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