◆REMOTE CONTROL story20◆









「あらら、甘酸っぱいねぇ」

「ロイドさん!」

揶揄(やゆ)するようなロイドの言葉をセシルは咎める。

セシルがルルーシュとスザクを一瞥すれば、ゼロと名乗る少女はスザクを寝かしつけるように瞼を閉じさせ、スザクの髪を撫でている。
それを見止め、セシルの中にあった不安は形(なり)を潜めた。

彼女の不安は黒の騎士団を信じても良いのか・・・というものであった。
確かに黒の騎士団は正義の味方として活動していたであろうが、軍に歯向かった行為も数知れない。

だが、ゼロがスザクに対するものだけは嘘偽り無いものに見え、少しは信じてみようと思えた。

スザクから規則正しい寝息が聞こえ始めると、ルルーシュは仮面を拾い上げ、手袋と仮面を装着した。
そして、藤堂、四聖剣らを振り返り、言い放つ。

「次の敵はブリタニア皇帝だ!」

息を飲む。
余りにもその選択は早過ぎると思うのが普通であろう。

その反応にゼロはほくそ笑み、誰かが声を放つ前に藤堂達の間を擦り抜けて治療室を出て行く。

「直ぐとは行かないさ、準備があるからな。コーネリアがアレを突破出来たなら話は別だが」






















コーネリアがイシカワで戦闘中でのこと。
角の長いグロースターがマントを靡かせ、最後の一機である鋼髏(ガン・ルゥ)を大型ランスでコクピットごと突き刺した直後に地響きに苛(さいな)まれ、揺れる地にコーネリアは戸惑う。

「何だこれは!?」

地震では無い。
イシカワがエリア11から切り離されているのだ。

それを行ったのはキョウト六家である。

何百体もの無頼が上からドリルを、海中からは海兵騎士団が使うブリタニア製の水陸両用のポートマンを奪い改造したナイトメアフレームが魚雷などで攻撃を仕掛け、イシカワを切り離していた。
トドメとばかりに輻射波動を作動させる。
高周波を連続で叩き込んで内部から膨張・爆発させるものであり、紅蓮弐式の右腕に装備されているものと同じ原理である。

そして、切り離されたイシカワは対馬海流に沿って流される。

『どういう事だ!?ギルフォード!』

『わ、分かりませんッ、友軍が数機の無頼を見たとの報告が』

『無頼ならNACにも居たぞ!』

『あちらとは違いますッ大型のドリルを所持していたそうです!』

『何だと!?』

ならばこの地響きは作為的に起こされたものであり、コーネリアはイシカワが切り離されたのだと知る。
イシカワには未だに住民が居るというのに。

ブリタニア人も、名誉ブリタニア人も、イレヴンも。

「・・・ゼロか、こんなマネをするのは」

自分の邪魔ばかりするゼロにコーネリアは怒りを露わにする。
またそこへ、聞きたくもない報告をコーネリアはダールトンから受ける事となった。

G-1ベースに戻り、その玉座に座り、船でダールトンに迎えに来てもらうしかないと判断したコーネリアは総督区に回線を繋げようとしたが、何者かにハッキングされていて繋がらず、船へ直接に回線を繋げる。
画面に映った申し訳ないという表情のダールトンと顔を合わせ、コーネリアは眉を潜めた。

『ダールトン、どうした』

『申し訳御座いません。姫様』

『良い、申してみよ』

『はッ、トウキョウを・・・黒の騎士団に奪われました』

『何ッ!?』

『もう一つ御座います。ユーフェミア様と特派が黒の騎士団の仲間となったようです』

『そんな・・・ユフィがそんな事をするはずが』

『おそらく、ゼロの正体が原因かと思います』

ゼロの正体が分かっているかのようなダールトンの言葉にコーネリアは更に目を見開く。

コーネリアは特にゼロの正体に興味があるわけではなかった。
それは、義弟クロヴィスを殺された事と何度も軍に歯向かわれた事が原因であり、倒すとそればかりを思っていたからでもある。

だが、ゼロの正体がユーフェミアに関わるというのなら話は別だ。

『分かったのか?』

『ゼロは・・・亡きマリアンヌ后妃の子で御座います』

『・・・・・・』

沈黙する。
あるはずが無いと、そんな事はあってはならないとコーネリアは項垂れ、首を左右に振る。
ルルーシュとナナリーは死んだはずなのに。

生きていた?なら、クロヴィスを殺したのは?

そこで思い出す。
ユーフェミアと話した夜の事を。

あの時、ユーフェミアは何と言っていただろうか・・・ルルーシュとナナリーについて聞きたかったのではないか・・・。
だから、第四皇女に戻りたいなどと。

今更悔やんでも遅いだろうが、気付くべきだったのだ。
どうすれば良い・・・?

そこへシュナイゼルからの連絡が入り、それを無下(むげ)にするわけにもいかず、ダールトンに断りを入れ、直後、画面が切り替わり、シュナイゼルが映し出されたことに、異母兄とはいえ、肉親だからか安堵する。

『久しぶりだね、コーネリア』

『兄上もお元気そうで何よりです』

『君は少し疲れているみたいだけど、大丈夫かい?』

『ご心配には及びません。先程まで戦闘中でしたから』

半分本当で、半分嘘だが。

『そうかい?程々にね』

『ええ。それより、何か私に御用件でもお有りなのですか?』

『うん。神根島に来て欲しいんだよ』

『神根島にですか?』

『面白いものが見られる』

口元を緩めたシュナイゼルにコーネリアは疑問を抱きながらも、今のままではシュナイゼルのもとに行くのが最良だと判断する。

『分かりました。ダールトンと合流後にそちらに伺わせて頂きます』

『あぁ、待ってるよ』






















ゼロはアヴァロンから降り、事後処理の為に黒の騎士団のアジトである潜水艦にC.C.と共にガウェインで一度戻る。
ゼロが自室へ戻る為に通る通路でたまたまカレンと出会うが、ゼロは彼女を通り過ぎようとした。

だが、カレンが問い掛け、ゼロは立ち止まる。

「大丈夫なの?」

「スザクなら問題無い。一命を取り留めた」

「スザクの事じゃなくて、あんたが」

「俺が?」

「側に居てあげたら?全部あんたがやらなくたって良いじゃない」

ゼロが自らやらなくても、その作業が出来る者はいくらでも居るのだ。
黒の騎士団は拡大したのだから。

「見舞いにはさっき行ったさ」

「回復するまで居てあげても良いんじゃない?」

「そうはいかない。もう直ぐキョウト六家が来るはずだからな」

「・・・・・・あんたがそうしたいならそれで良いけど、スザクの事も考えてあげなさいよ」

「?」

「はぁ〜あ」

カレンは声に出して盛大な溜息を吐いた。
女心の分からない男もアレだが、男心の分からない女も考えものである。
































ゼロが【共和国日本】を宣言する前日の午後のこと。
ナナリーはクラブハウスの一室で咲世子と折り紙を楽しんでいた。

「ナナリー様、お上手になられましたね」

「そうですか?」

「ええ、紙の裏地が見えなくなりましたから」

「良かった。早く千羽作りたいですね」

「お願い事決まったんですか?」

「ええ。でも秘密」

「残念ですが、それも良いですね。女の子は神秘的な方が魅力的ですから」

ふと、ナナリーがドアの方に顔を向ける。

「ナナリー様?」

「血の・・・匂い」

「え?」

突如、ドアが蹴り開けられ、ナナリーはその音に身を震わせた。
咲世子はナナリーを庇うようにドアに向かっていくが、走り込んできた軍人の女に鳩尾を深く蹴り上げられ、鈍った呻きの後に気絶する。

「咲世子さん?どうしたんですか?」

不安げなナナリーの声に咲世子は答える事が出来ない。
誰か分からない足音にナナリーは怯えるしかなかった。

「ルルーシュ・ランペルージの妹というのはお前か?」

「え?・・・は、はい。あの、貴女は?」

女性の声にナナリーは声を震わせながらも答える。

「軍人だ。お前にはゼロを誘(おび)き出す餌になってもらおうか」

「え?」

どうして自分がゼロを誘き出す餌になるのかナナリーには分からなかった。
その疑問を日常を壊しに来た軍人であるヴィレッタに解決させられる。

「ゼロがお前の兄、ルルーシュ・ランペルージだからだ」




























◆後書き◆

オレンジは一体何処に!?
オレンジカムバークッ!!

次は少しほのぼのしたお話に・・・したいです。
ナナリーたんがピンチになっておりますが。

シュナイゼルさん再び。
神根島はとりあえず、式根島(東京湾?)の近くっぽいので、ネリお姉様は日本を半周せねばなりませぬ・・・。


更新日:2007/05/02








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