◆REMOTE CONTROL story17◆









コーネリア率いるギルフォードを始めとした親衛隊の半数は数日前からG-1ベースとグロースターを収納しているトレーラーを数車引き連れてイシカワへと向かっていた。
その間の留守をダールトンは引き受け、恐らくコーネリアも戦闘中と相まっているらしく、連絡が取れなかった。
もしくはECMの電波障害も含まれている可能性もある。
直(ただ)ちにECCMを作動させ、ダールトン自ら参謀を務め、指示を出す。

やられた。

フクオカ基地での件から黒の騎士団への警戒心が薄れていたのだ。
それから暫く小さなテロ行為はあったものの、黒の騎士団が関わっている形跡は無かった。
軍人に平和ボケ等あってはならなかったはずだ。

ダールトンはグロースターの出撃を言い渡した。
第五世代ナイトメアフレーム、グロースターが群を成して迫り来る。

通常の半分の数だというのに黒の騎士団はその圧倒的な迫力に踏み止まってしまう。

「怯むな!指揮者であるコーネリアが居ない今、奴らに策士は務まらない。零番隊は前へ!藤堂とスザクは強行突破、漏れた敵は壱番隊が相手をしろ、弐番隊と参番隊は左右に分かれて第弐特務隊の道筋を作れ!!」

各々の了解の返事を聞きながらゼロは冷や汗を隠せずにはいられなかった。
コーネリアの戦略なら良い線まで読めるが、ダールトンの戦略方法の知識は皆無だ。
コーネリア軍の過去の戦歴からかなりの凄腕なのは分かり切っているが、戦略は何処までやるか。

しかし、素人ではない分、予測不能ではない。



ランスロットは膝を曲げ、低姿勢でメーザーバイブレーションソードを左右から引き抜き、夜色と溶け合いそうな鈍い紫色のグロースターの足に狙いを定めながら斬りつけていく。

バランスを保てなくなったグロースターはドミノ倒しのように崩れる。

藤堂が乗る月下は月の明かりに黒光りし、赤髪を靡かせる。
引き抜いたメーザーバイブレーションソードは漆黒の日本刀形。

二刀流で迫り来るグロースターを二機同時に突き刺し、再起不能にし、刀をグロースターから引き抜き、次に来るグロースターへ向かい行く。

圧倒的な戦力差にダールトンは焦りを見せる。
コーネリアが居ない今、上手くいっているのは包囲して来ている無頼の足止めのみであり、前方から来る敵には歯が立たなかった。

ランスロットがあちら側に居るのが信じられなかったというのは、言い訳に過ぎないだろう。
特派は軍であって軍で無い扱いを受けていたのだ。
だが、これは裏切り行為の何物でも無い。

「見損なったぞ、枢木」

あの戦いぶりはスザクしかいないことは明らかであった。
軍を辞めたと聞き、残念だと思ったのはつい最近のことである。

そして、数日前にユーフェミアが姿を消した。
その時には既にコーネリアはイシカワに向かっており、連絡はしたが、ユーフェミアももう子供では無いのだからと溜息混じりに言われ、捜索もしていない。
その時に気付くべきだったのかもしれない、特派もまた同時に姿を消したことへの疑問に。
特派の動向はシュナイゼルが握っている為、深く関わっていなかったのが仇となった。

ダールトンは指示を出すのを止めて他の者にこの場を任せ、顔の傷の疼(うず)きを掻き消すように自分のグロースターへと乗り込み、起動させる。
ランドスピナーは回転し、高速度で進軍を進めている敵へと向かう。

「道を開けろ、私がくい止める!」

ザッとグロースターの群が左右に裂け、その絨毯のような道を突き進み、目的のランスロットの眼前で超信地回転を応用して一回転をして急停止する。

「枢木スザクか?」

オープンチャンネルで問うた疑問は自分の勘違いであって欲しいという願望が含まれていた。
だが、それは叶わない。

『はい』

奥歯を噛み締め、ダールトンは怒りの声をぶつける。

「貴様!それは裏切りと同意だぞ!」

『自分は守りたい人を軍に入る前から、名誉の名を頂く前から、唯一人と決めていました。それは・・・いけない事ですか?』

冷静なスザクの声にダールトンは頭に登った血が落ちてくる感覚を味わう。
信念は曲げていない、そう言いたいのかと。

「ならば、容赦はいらないな」

『すみません』

この場で謝るのかと、苦笑する。
だが、そんなものは敵に不要であり、最大の能力を持って目の前の奴を倒すのみ。

大型ランスを構え、二つの西洋剣が対峙する。

ランスロットが飛び上がり、メーザーバイブレーションソードを手にしたまま空中で数回の横回転からグロースターの顔面に狙いを定めて蹴りを飛ばすが、大型ランスで遮られる。
蹴りの失敗後の次の攻撃は決まっている。

右に持つメーザーバイブレーションソードで斬りつける。
地に落ちたのはグロースターの左側の小さな角だった。
即座に大型ランスでランスロットを弾き飛ばしたことで急所は免れた。

やはり、コーネリアも認める実力の持ち主は一筋縄ではいかないという事か。

「惜しいな、その力!」

『貴方も!』

お互い好敵手と認め合う。

グロースターが前進し、大型ランスを突き出してランスロットの胸部を狙い、咄嗟に横に交わしたランスロットだが、左手の剣が弾き飛ばされ、一瞬そちらに気を取られて右手の剣も大型ランスで払い飛ばされた。
今度こそと急所に大型ランスが突進する。

ランスロットはその場から動かずにすんでの所で大型ランスの穂先を両手でがっしりと鷲掴み、受け止めた。

「!?」

予想外の判断に驚く。

スザクは素早くコードを打ち込み、スラッシュハーケンを腰部から二基、手の甲からも二基と計四基を射出する。
的確な判断でグロースターも二基のスラッシュハーケンを射出し、腰部からの攻撃を弾き、大型ランスをランドスピナーを後方へ回転させて後退しながら引き抜き、手の甲からの攻撃も叩き落とす。

お互いのスラッシュハーケンが元の位置に収納される。

対ナイトメア近接格闘戦を想定されて造られたグロースターの特性を此処まで活かせる者は数少ないだろう。

いつの間にかダールトンは敵に囲まれ、味方はほぼ全滅していた。
前線に集中し過ぎたのが迂闊であったのだ。
周囲を取り囲んで来ていた無頼の相手が手薄になってしまった。

しかし、負けられないという想いが独りでも勝ってみせると瞬く。

『ゼロ、彼と一対一で戦いたいんだ。良いかな?』

オープンチャンネルで突然聞こえてきたスザクの言葉はダールトンにも聞こえ、何故だと思う。

ゼロはフッと口元に笑みを浮かべた。

「お前の好きにしろ」

『有り難う』

それならばと、藤堂は自分の所持しているメーザーバイブレーションソードを投げ渡す。

「受け取れ、スザク君」

『藤堂さん・・・』

「君には必要だ」

『はい!』

ランスロットは日本刀形のメーザーバイブレーションソードを受け取り、しっかりと両手に。
白いボディと漆黒の刃は深く混ざり合いそうで混じることは無く、個々を支えるように構えられる。

月明かりがランスロットの金の縁取りを煌めかせた。

ダールトンは静かに笑った。
受けて立とうと。
大型ランスが構えられた。

一気に攻め立てるグロースターは渾身の力を、今度の威力は手で受け止める事も出来ないであろう。
それを肌で感じ取り、ランスロットは自分が持つ超速を活かして後数ミリでの攻撃から飛び上がり、きりもみを含んで複雑な一回転をしてグロースターの背後に回り込み、グロースターが振り返りきる前にメーザーバイブレーションソードで十字に斬りつける。

顔面に最後の一撃を加え、ファクトスフィアを破壊。
オープンカメラが壊れたことで情報処理が出来なくなったグロースターはコクピットブロックの強制脱出を開始。

だが、逃げることは許さないとばかりにガウェインがそのコクピットブロックを手にする。
片手で簡単に押し潰せそうな、それ。

『ルルーシュ!』

「・・・何だ?」

勝ったも同然だが、敵陣で『ゼロ』と呼ばないスザクに苛立ちを含んだ声を返す。
コーネリアに直ぐにこの状況を知られて駆けつけられては困るのだ。
消し去るのが一番手っ取り早い。

『駄目だ』

「知ったことか・・・」

ガウェインの指が内側へ曲げられる。

『ルルーシュ!!』

怒気を含んだスザクの声にゼロはぐっと唇を噛んだかと思うと、深く、長い溜息を吐き出した。
コクピットブロックをゆっくりと地に置く。

何が起こったのか分からないダールトンはコクピットブロックが動かなくなり、数秒待ってから手動でコクピットブロックから出れば、そこには闇が広がっていた。
見上げれば漆黒のナイトメアフレームが佇んでおり、降りてきたゼロの姿に息を飲む。

銃口がダールトンに向けられた。

「この場は黒の騎士団が占領した。去れ」

殺す気が無いようなゼロの言葉に何故だと頭は疑問を絞める。
だが、その疑問よりも、コーネリアの命を最後まで貫くことが出来なかったことが悔やまれ、ダールトンは最期の覚悟を決めた言葉を口にする。

「私は姫様に此処を守れと仕(つかまつ)っている。それが果たせなかった今、姫様に会わせる顔など無い。殺せ」

「職業軍人の戯れ言を聞き受けるつもりは無い」

だが、銃声が響いた。

「ルルーシュ!!」

次に聞こえたのはスザクの切羽詰まった叫び声だった。






視界が紅の世界に染まりゆく。




























◆後書き◆

殆どナイトメア戦だ。
月下のメーザーバイブレーションソードをランスロットに持たせたかったんです!

ロボ書けて満足v

ランスロットがきりもみしてたり。
仮/面/ラ/イ/タ゛/ーのきりもみシュートみたいにひねりを入れた横飛びな感じの。

更新日:2007/04/22








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