◆REMOTE CONTROL story1◆









漆黒のボディに金をあしらったナイトメアフレームの威力は強大であった。
全てを凪払うような力は死神に匹敵する。
母であるマリアンヌの死を知るシュナイゼルを捕らえる事が出来なかったのは残念だが、これ程の機体を手に入れる事が出来た事にゼロは満足していた。

ゼロは名も分からない黒のナイトメアフレームから黒の騎士団達が乗る潜水艦と回線を開く。

「ゼロだ。手土産もある。今から言う地点の水上に上がってくれ」

『ゼロなのか?カレンは?』

「扇か。カレンも無事だ。一緒だが、今は肩の上だからな」

『肩?』

「そのうち分かる。まずは指示に従ってくれ」

『分かった』

ゼロは合流地点を扇に告げると、回線を切る。
合流地点に到着するまでまだ時間があり、ナイトメアフレームのOSを開いていくゼロは目をとめた。



【Name Gawain】



「ガウェイン?」

ウィンドウに表示された名に、円卓の騎士か、とゼロはもう一度その名を仮面の奥で呟く。

ガウェイン卿はラーンスロット卿に並ぶ程にアーサー王から深い信頼を得た騎士であり、弟のガヘリス卿を誤ってラーンスロット卿に殺され、自らもラーンスロット卿から受けた傷が元で死んでいく男だ。

「馬鹿な男だ・・・」

王を何よりも大切にしておきながら、同じ円卓の騎士であるラーンスロット卿に対抗意識を持ち、気高き騎士を罵り続け、破れ、最後には自業自得だと言い残してこの世を去る。

だが、自分には一番似合いの名前かもしれないと、ゼロは喉を震わせた。
ブリタニアの王の血を継ぐ自分が国の破滅を望んでいる。
ガウェイン卿は王を信じていたが、自分の行動、言葉全てが王を破滅へ、死へ追いやったのだから。

最終的には同じだ。
ゼロにとって結果が全てであるように。
仮面の内側で嗤笑(ししょう)を浮かべれば、クツクツと喉が笑いを噛み殺せずに音を奏でる。
口から漏れた笑いは乾いていた。

青い海を見渡し、青い空を眺めるように漆黒のナイトメアフレーム、ガウェインは空気を切った。

















水上に上がった潜水艦の吹き抜けの展望台で扇は此方に向かってくるナイトメアフレームに身を強ばらせるが、手に持つ通信機のバイブ音に気付き、画面に表れるゼロの名にほっとすると同時に迫り来るナイトメアフレームを気にせずにはいられず、直ぐに通信機を耳に当てた。

「ゼロか?」

『あぁ。其方に向かうナイトメアに乗っている』

「何?」

『肩にカレンが乗っているはずだ。振り落とされていなければ、だが』

扇はその言葉に迫ってくるナイトメアフレームの肩を目を凝らして見つめると、人影が手を振ってるのが見えた。

「扇さーん!」

カレンの姿が確認出来たと同時に、自分を呼ぶ声に扇は胸を撫で下ろした。
漆黒のナイトメアフレームは展望台に降り立つ。
カレンはナイトメアフレームから身軽に飛び降り、扇に駆け寄る。

「カレン、無事で良かった」

「扇さん達も」

扇の瞳には涙が溜まっていて、カレンはしょうがないな、と苦笑する。
漆黒のナイトメアフレームからゆっくりと降り立つゼロはマントを靡かせて扇とカレンのもとへ歩んでいく。

「扇、状況は?」

「軍は撤退したみたいだ。けど・・・」

「何だ?」

「ちょっと仲間割れが、な」

その頼りない言葉にゼロは溜息を吐く。

「す、すまないッ」

ゼロが怒っていると思ったのか、扇は頭を下げる。
しかし、そんな心配は次のゼロの言葉に不要だと知った。

「いや、今回は私のミスだ。私が居ない時の指示も今度からしておこう」

「あ、ああ。助かる」

「取り敢えず、まずはこのナイトメアを格納庫に入れてくれ」

















ラクシャータは煙管を口に挟み、興味ありげに漆黒のナイトメアフレームを見上げる。
煙管を人差し指と中指で挟み持ち、ナイトメアフレームの足をコツコツと叩く。

「この子の名前は?」

ラクシャータは背後に居るゼロを振り返る。

「ガウェインだ」

「ふ〜ん。あいつらが好みそうな名前ね」

ラクシャータのみの笑い声が潜水艦内の格納庫に響く。
しかし、ラクシャータは新たな人物の登場に笑いを止め、口元に浮かべるだけに留まる。

「ゼロ、話がある」

黄緑色の髪を流し、C.C.は金の瞳でゼロを見上げる。
ゼロは面倒臭そうにC.C.を見下ろした後、彼女に背を向ける。

「私は疲れているんだ。後にしろ」

「枢木スザクに使っただろう」

「・・・・・・使った。話はお終いだ、自室に戻らせてもらう。入ってくるなよ」

そう言って歩き出した矢先にゼロの視界はぐらつき、驚く暇も無くゼロは蹌踉(よろ)めいて崩れる。
しかし、地面にぶつかるショックは無く曖昧な視界を上げると扇の姿があり、支えてくれたらしいと思うが、彼の顔が余りにも驚きに目を見開いており、首を傾げるが、胸に何やらその視線が集中していてそちらに視線を移す。

「ッ触るな!」

「女・・・の子?」

ゼロは扇を突き飛ばし、立ち上がってマントで自分の身体を隠すように包む。
扇は倒れながら、自分の右手とゼロを交互に見ている。

そして、扇が発した言葉にその場に居た者はゼロに視線を集中させる。C.C.のみが違う意味でゼロを見つめた。

「ずっと隠せるものでは無いだろう。女だとバレる事を何故そこまで嫌う」

C.C.の言葉から彼女だけがゼロの正体を知っていた事実が読み取れ、それがカレンには気に入らなくてC.C.を睨む。

「お前には関係無い事だ」

「お前が女として枢木スザクを愛している以上、お前は彼奴に自分を殺してくれと死を望むだろう」

去ろうとするゼロの手首をC.C.は掴む。

「放せ」

「放すものか。彼奴に何て命令した。そのギアスで」

「お前には関係無い」

「またそれか。私との契約を忘れては困る」

「忘れて無いさ。私が死ぬ前には叶えてやる」

何の保証も無いくせに、とC.C.は顔を歪める。
最近、どうしようも無くルルーシュが不安定に見えるC.C.はギアスが暴走する事を怖れている。

マオの二の舞は御免だとばかりに。

「なら、私の願いはお前が死なない事だ」

金の瞳が仮面の奥の瞳を射抜く。
だが、ゼロは臆する事無く、彼女を見据えた。

「王の力はお前を孤独にすると言ったのは誰だ?C.C.お前自身だ。孤独なまま生きろ、そういうことか?」

「違う!」

「何が違う。優しい世界に俺は要らない」

「その優しい世界とやらに彼奴と一緒に居たくないのか?」

「俺には、そんな資格は無い・・・」

話は終わったとばかりにゼロはC.C.に掴まれた腕を放そうとするが、C.C.の気の毒そうな顔に文句を言おうとすれば、彼女の手が仮面を掴む。
流れる動作で捕られた仮面はC.C.の手の中にあり、ルルーシュは怒りを露わにする。

「何をする!」

「ルルーシュ!?」

しかし、怒りの声はカレンの驚きの声に掻き消された。
ゼロがルルーシュであったこと、ルルーシュが女であったことにカレンは頭の整理がついてこなかった。

説明を求めるカレンの瞳にルルーシュはそれから逃れるようにC.C.を睨んだ。

「ゼロは王だ。だが、ルルーシュ、お前は孤独では無い」

しかし、微笑むC.C.をルルーシュは見ている事が出来ず、彼女の手を振り払い、仮面を奪い取る。

「俺は・・・ゼロだ」

ルルーシュは黒いマスクで口元を隠し、仮面を装着する。
ゼロはそこに居る全ての者に背を向け、マントを翻してその場を去った。

















◆後書き◆

ルル様女体化小説始まりです。
ちゃんと終わるか分かりません(ッオイ!)
更新停滞・・・しないようには頑張ります・・・。

スザルルで進んで行きます。

アーサー王などについては偕/成/社/文/庫さんの『アー/サー王/物語』を参考にさせて頂いております。
勝手に参考にさせて頂いているので、そちら様とは何の関係も御座いません。

更新日:2007/03/08


パイプ→煙管(キセル)に変更(2007/03/17)




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