◆weapon◆


純白の兜に金をあしらったボディは青空に良く映えた。

ナイトメア・フレーム。
それを与えられた者は「騎士」の称号を同時に授かる。
ナイトメア・フレームとはブリタニアが発案した兵器であり、高い戦闘能力を持つ。
兵士なら誰もが憧れる機体と言っても過言ではない。

第七世代ナイトメア・フレーム、ランスロット。
一体しか開発されていないこのナイトメア・フレームは搭乗する者を選ぶ。
そして、選ばれたのがエリア11出身である枢木スザクである。
彼ほどにランスロットを操れる兵士も騎士もおらず、上官や皇帝も認めざるおえなく、スザクがランスロットのデヴァイサーに任命されるのは時間の問題であった。

未だ「騎士」の称号が与えられないのはイレブンであることと、ランスロット自体がまだ実戦に出せるほどにメンテナンス出来ていないからである。

第五世代ナイトメア・フレーム、サザーランド。
殆どの騎士がこのナイトメア・フレームを与えられる。
第四世代のグラスゴーから格段に性能の上がったサザーランドは生産量も多く、パワーも安定している。

それに比べ、ランスロットはサクラダイトが他のナイトメア・フレームよりも大量に使われている為、操縦が難しい。
今、それに乗るスザクは目の前のサザーランドを見据える。
渋めの地味な青は青空に溶けることは無い。

回線は開かれており、サザーランドのデヴァイサーからスザクへ。

「枢木スザク、貴様の技量をこの私が見極めてやろう」

「お願いします」

サザーランドに乗るジェレミアの嫌みはスザクに通じておらず、ジェレミアは血管が浮き出るのではないのかと思わせるほどに両手を握りしめた。

「良い度胸だ・・・」

試合開始の銃声と共にランスロットが動く。


速過ぎる。


ジェレミアはランスロットの動きの全てを捉えきれない。それでも左右への動きだけはかろうじて感知する。
右だと思った瞬間、アサルトライフルを構える。だが、狙いを定めることが出来ない。予測のスピードが追いつかないのだ。

「くそッ」

負けてはならない。負けられるはずがない。
こんなイレブンごときに負けてはいられない!

ライフルを連射していく。だが、全く当たらないどころか、とんちんかんな所へと弾丸は傷を作る。

焦る。

汗が一気に冷えていくのが分かる。感覚が震え、操縦桿を握っている手の感触は何も伝えてこない。

サザーランドの後ろに回り込まれる。
後ろに素早く振り返ったサザーランドだが、動きが止まる。

ランスロットがサザーランドの右手首を左手で掴み、首を右手で掴んだことで身動きがとれず、とれる暇も無く、サザーランドの足が地面から浮き上がり、意識が状況を読み込む前に投げ飛ばされた。
無様な格好でサザーランドは地面に叩き付けられた。

背負い投げされたのだ。

試合終了を知らせる銃声が何処か遠くに聞こえた。
認めたくはなかった。負けたこと。イレブンの技に負けたこと。
この状況全てを認めたくはなかった。
だからこそ、枢木スザクを認めなくてはならない。

サザーランドを起き上がらせ、降りる。
既に地上に降りていたスザクがジェレミアの近くへと歩いてくる。
ランスロットと同じ白を基調にしたスーツはスザクの持つ雰囲気と同調し、パズルのピースのようにしっくりとしていた。

「有り難う御座いました!」

頭を下げるスザクにジェレミアは戸惑いと怒りが同時に湧き起こるのを踏み止まらせることが出来なかった。

「何故、礼を言う?」

「え?」

顔を上げたスザクは困ったような顔をしていた。
それが余計にジェレミアの神経を逆撫でする。

「貴様は私に勝ったのだぞ、誇らしくないのか?」

「しかし、礼を言うのは当たり前です。自分はまずそうしたいと思ったから、礼を言いました」

低い声に対し、微笑んでそう言い切ったスザクにジェレミアは信じられないとでも言うような視線でスザクを見下ろす。
そんな視線を受けてもスザクは微笑んだままだ。
これだからジェレミアはスザクを好めなかった。

含みのない笑顔がジェレミアにとっては身近なものではないのだ。
貴族だからかもしれない。親からの愛情は本物であったが、周りの人間は笑顔を笑顔として振りまくことはなかった。
誰もが嫌な笑みを浮かべる。

そして自分も。

「ゴットバルトさん?」

物思いにふけりすぎていたジェレミアは、はっとする。
心配そうな顔を真正面で受け取り、居心地が悪い。

「ジェレミア卿と呼べ」

「?」

いまいち理解していないスザクにもう一度言う。

「ジェレミア卿で良いと言っているのだッ。何度も言わせるな。『さん』などと愚弄するのもいい加減にしろ!」

照れ隠しとは少し違う。
少しは認めても良いと思う自分をジェレミアは不思議に思った。
それが鬱陶(うっとう)しくもあり、何とも言えなかった。

「はい、ジェレミア卿」

素直に返事をしたスザクにジェレミアは満足そうな顔を返す。
初めて二人は握手を交わした。





◆後書き◆

「weapon」武器、兵器、攻撃手段。
私はランスロットが好きだ!!!!!!
そんだけ。
ランスロット愛が溢れそうです。てか、溢れ出してるよ!?
スザルル書いてないや。次に書こう。オレンジとヴィレッタも一緒に!
オレンジvsスザク第二弾でした☆

更新日:2007/01/14







ブラウザバックお願いします。