※N/T/ロ/マ/ン/ス8月号増刊のオリジナル付録CD「反/逆/の/山/々/D/X」に収録されているドラマのネタバレを含んでいます。
※あの場にスザクも居たらいいのになぁ、な妄想が多大に含まれております。




《wash 0 away》







水の音が弾き飛ばされる。
体温より高い温度の湯は湯気を作りだし、視界を僅かに曖昧にさせた。

湯気の中には二人の影があり、一人はすらっとした長身、もう一人は低めの身長の影。

「これで落ちただろ?」

「うん。大丈・・・・・・ぶッ・・・」

「どうした?」

「あーいやー、そのー」

リヴァルと呼ばれた低めの身長の彼は顔に描かれた猫のヒゲが落ちたか問い掛けてきた長身の彼、ルルーシュのある一点のそれに気付き、返答に困った。

「まだ付いてるか?」

はい、違うものが。などとは言えるはずも無く、リヴァルは自分のはどうかと問い掛ける。

「いや、大丈夫。それより、俺のは?」

「大丈夫」

「失礼します」

ちょうどその時、もう一人がシャワー室へと入室してきた。

「終わったのか?スザク」

「うん。アーサーも気持ちよさそうに昼寝してる」

スザクと呼ばれた彼はシャワーを浴び始め、顔の猫メイクを落としていく。
綺麗に洗い落とされたところで、スザクは彼を振り返り、硬直した。

「ルルーシュ・・・・・・」

「何だ?」

「・・・・・・・・・ごめん」

「は?」

一体何なんだと、訝しげにルルーシュはスザクを見たが、スザクはリヴァルに視線を送り、彼がこちらを視界に入れないようにしているのを見るとバレてしまったかと思案し始める。
そんな様子のスザクにルルーシュが苛立ち始めると、それを見計ったようにリヴァルが話題を提供してきた。

「何でルルーシュばっかりモテるんだろうなー」

「突然何を言い出すんだ」

「いや、だってさー。今日の猫祭りでもルルーシュは可愛いって言われて、俺は普通とか言われてさぁ」

嘆き始めた悪友をルルーシュは無視しようかと思ったが、彼は尚も喋り続けた。

「俺が知る限りでは四人はルルーシュの事好きだし」

「・・・何処からそんな無駄な情報ばかり集めて来るんだ、お前は」

「企業秘密。えっと、テニス部の子と馬術部の子と違う学校の子と購買部のおばちゃん」

「そんな話は初耳だが」

「ルルーシュってモテるんだね」

「そーなんですよ!こいつばっかりズルイって!なぁ、スザク」

「・・・・・・・・・」

「スザク?」

無言のスザクにルルーシュが振り返れば、彼は視線を逸らした。
何かあるな、と値踏みするようにルルーシュは目を細めてスザクを見やる。
しかし、それでスザクが洗いざらい話すわけではないことは百も承知なルルーシュは表情を改めて苦笑を混ぜて問い掛ける。

「何だ、告白でもされたのか?」

「近からずとも、遠からず・・・かな」

「何!?じゃあ、モテてないの俺だけ!!?」

リヴァルの絶叫はシャワー室でもあることも手伝って反響するが、ルルーシュの耳には彼の嘆き挫ける雄叫びなど入っていなかった。
それはスザクの発言が原因なのは確かだ。

ルルーシュが予測するに、告白に近くとも遠くとも無いものはラブレターとか・・・。

駄目だ、浮かばない。
この手のジャンルが苦手なルルーシュにとって、選択肢がいつものように膨大に思いつくわけも無かった。

思考を深くしていくに従って、知らずに右手が鎖骨の辺りに伸びる。
頭の記憶というより、身体の記憶のままにそうしてしまった。

そして、いつの間にか静かになってしまったシャワー室に気付いてルルーシュが俯いてしまっていた顔を上げると、目を見開いているスザクとリヴァルが居た。

方眉を跳ね上げながら、訝しげな表情を表せば、スザクが口を開いた。

「ルルーシュ、気付いてたの?」

「気付いてたわけないだろう、お前が告白されたかどうかなんて」

「・・・・・・ごめん、気付いてないみたいだね」

「おい、何の話だ?」

更に眉を歪めながらルルーシュはスザクを見つめる。
流石に黙ったままなのは可哀相だろうかとスザクは思うが、リヴァルが居る手前言い出しにくい。
しかし、彼もまた気付いている様子であることをもう一度確信したスザクは意を決した。

「ルルーシュ・・・」

「?」

ルルーシュの耳元にスザクは口元を近づけて、出来るだけ小さな声で言うのを意識しながら伝える。

「キスマーク付いてる」

一瞬だけぽかんとしていたルルーシュは頭の中で繰り返し繰り返しスザクの言ったことをループさせる。

「なッ!?!?」

意味を正しく理解した時には何処に、と眉を八の字にしたルルーシュは縋るように既に耳元から離れたスザクを見つめる。

「ルルーシュが今、手で触れてるところ」

疑問と共に自分の手が触れている鎖骨を見ようとするが、自分からは見える位置では無く、目の前にある湯気で曇った鏡を必要な面積だけ手で擦(こす)り、曇りの無くなった鏡で確認すれば、確かにそこにはスザクが言ったように赤い証があった。

これは確かスザクが・・・。

目にした途端にルルーシュは頬に熱が溜まり、顔を真っ赤にしていく。

「///////〜ッ、この馬鹿!!」

そう一言捨て台詞を吐いてルルーシュは急ぎ足でシャワー室を出て行く。
バタンと勢い良く扉が閉められる音が耳に余韻を残し、耳を両手で塞いだスザクとリヴァルはルルーシュが先程まで居た一人分のスペースを挟んでお互いに顔を見合わせた。

スザクが苦笑を浮かべれば、リヴァルは引きつった笑みを浮かべて『行けよ』と指で扉を指し示す。

「じゃあ、お先に」

スザクは扉に向かい、後ろ姿のリヴァルに声を掛ければ彼は背を向けたまま手を振ってスザクを送り出した。
自分だけの空間になったシャワー室の中でリヴァルはその場にしゃがみ込む。

「はぁ〜あ」

声に出してしまう程の盛大な溜息は誰にも聞かれることは無く、更にリヴァルは悩み始める。

今までリヴァルが知っているルルーシュは取り澄ました顔しか見せたことはない。
怒るにしても不機嫌そうに眉を潜める程度だったり、笑うにしても企んだような含み笑いが多かった。彼の妹であるナナリーに向ける笑顔を覗けば。

それが最近他の顔を見せるようになったのはスザクが転校して来てからだ。
あんなルルーシュの顔は見たことがなかった。
だが、今日の数分前までは別に良かったのだ。
ルルーシュだって昔の友達に会えたら嬉しいに決まっている。
いつもより柔らかい笑顔をスザクの前で見せるのも、困ったように笑って許すのも。

しかし、今日という日だけは。

初めてルルーシュが瞳を潤ませて、顔を真っ赤にしたのを見てしまった。
リヴァルだって青少年、ルルーシュの目の前にグラビア雑誌やそれ以上の写真集などを突き付けたことは何度もあるが、彼は視線を逸らして興味が無いと言うだけ。
顔色一つ変えなかった。

免疫が無い依然の問題だと思ったのだが。

「まぁ、納得と言えば、納得だけどな」

スザクとルルーシュの間に何も感じなかったわけじゃない。
二人とも上手く隠す素振りを見せるので、気付かない振りをしていたのだ。
それが今日、カミングアウトされてしまうとは思いもよらなかった。

今頃、仲直りして何時も通りの二人が生徒会室で待っているだろうと、リヴァルは立ち上がり、もう一浴びして揚がろうと自分を落ち着かせるのだった。















後書き



「wash 0 away」洗い流す

また妄想と違ったものを書いてしまったようです。

そう言えば、スザルルでまだエロ書いてないですね。
いつも突入直前か事後処理後(特に次の朝が多いような?)・・・。
妄想はするんですけど、文章にすると私のボキャブラリーがバレる。



移転更新日:2007/08/12








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