※ルルーシュ女体化長編小説「REMOTE CONTROL」のスザ+ルル+ナナの出会い話です。
※DVDの第一巻に収録されているピクチャードラマのその後な感じですので、ネタバレ等を含み、分かりにくい箇所があるかと思われます。





《REMOTE CONTROL 〜before story〜》



スザクは袴姿で蔵を飛び出して母屋に走って帰っている途中で、はたっと、ある事に気付き、走る速度をゆっくりと落としていき、そのある事を思い出しきるとその場に立ちつくした。

「・・・あれ?確かアイツら・・・姉妹って・・・・・・」

ブリタニアから来る者は姉妹だと聞かされていたスザクは侍女が言っていた言葉をまた思い出し、繰り返される『姉妹』という単語に顔を青くしていく。

女の子を殴ってしまった。

武術の師匠である藤堂から口が酸っぱくなる程に『女、子供』は守るべき者だと教えられてきたスザクにとってこれは由々しき事態であった。
しかし、ブリタニアから来た姉妹の姉は男の格好をしていた。

確かに『女の子』が来ると教えられてはいたが、お気に入りの場所を取られた挙げ句、自分の知らない事を彼女は知っていて、理解もしていて、むかついて馬鹿にしたら彼女が殴りかかって来たのだ。
いつの間にかスザクは彼女の事を男だと認識してしまっていた。

先程の事を思い返してみれば妹の方は「お姉様」と彼女の事を呼んでいたではないか。
自分も悪いとは・・・・・・思う。

今までスザクが思い描いていた女の子は何て言うか、こう、もっと柔らかなイメージで、彼女の妹のような・・・。
そこまで思い至って、ブリタニアから来た妹の方は目が見えない事に心を痛める。それについては誰からも聞かされていなかった。

「謝らないと・・・」

呟き、蔵に引き返そうと身体を反転させるが、救急箱を持っていこうと母屋へとまた身体を反転させて駆け出した。











「少し待ってるんだよ、ナナリー」

「はい」

ルルーシュは蔵の中に入り、二階へと続く梯子(はしご)をよじ登る。
二階は何やら壺がたくさん敷き詰められていて、動き回るのは無理そうだ。
せめてこの埃っぽい蔵の中の換気だけはと、奥の窓へ壺と壺の合間を縫って進んでいく。
壺を傷つけずに進むのはかなり神経を使ってしまったが、窓に辿り着けた事にルルーシュは達成感を得る。

窓を開け放てば緑の香りが差し込んでくる。
また壺と壺との間を慎重に通って行く。行きよりは早く元の位置に戻れた事にほっと息を吐きながら梯子を下りた。

蔵の外で待っているナナリーを迎えに蔵の扉を開ければ、ナナリーの数十メートル後方で立ち止まっているスザクが目に止まった。
ルルーシュはナナリーの側まで行き、彼女を守るようにしてスザクに視線を向ける。

「何の用だ!僕たちにまだ言い足りないのか!!」

ナナリーは姉の怒気を含んだ声に一瞬身を強ばらせるが、彼女の言葉の内容に日本の首相の息子であるスザクが再び来たのだと知る。
女の子だとは信じがたい言葉使いだが、スザクはキッと眉を吊り上げてルルーシュの前まで歩み寄る。

突然スザクから眼前に突き出された箱に身構えてしまったルルーシュだが、次のスザクの言葉に目を丸くした。

「女の子なんだから傷が残ったら大変だろ!」

ぽかーんとしているルルーシュの反応にスザクは不味かったかと、自分の判断が間違っていたのではと恥ずかしくなり顔を真っ赤にした。
パニックになったスザクは勢いのままに言葉を立て続けに繰り出す。

「だ、だからだなッ俺はお前が女の子だってさっき気付いて、女の子には優しくしなくちゃいけなくてッ傷が残ったらお嫁さんに誰も貰ってもらえなくて、だから殴ってごめん!君の妹のことも悪かった!!」

頭を下げたスザクにルルーシュは呆気に取られるが、スザクは自分でも何を言っているんだとまた弁解しようと顔をあげれば、花が綻ぶようなルルーシュの笑顔とばったり出会(でくわ)してしまった。

「ありがとう」

顔を赤くしていたスザクは違う意味でまた更に顔を赤くした。
救急箱をルルーシュが受け取ったのを確認してスザクは顔を真っ赤にしたままその場を走り去った。

嵐のように去っていったスザクをルルーシュは首を傾げて見送り、何時までも外に居ては暑いだろうと救急箱を車椅子の横の地面に一旦置き、ナナリーを背負う為に彼女の前に屈んだ。

「さ、ナナリー。暑いから家の中に入ろう。階段が少しあるから僕の背中に」

「お姉様、また『僕』だなんて、スザクさんみたいにまた『男の子』だと勘違いされてしまいますよ」

咎める声はキツイものでは無く、ナナリーなりにルルーシュの事を想っての言葉だが、ルルーシュがそれを聞き入れる事はなかった。
いや、出来なかったと言うのが正しいか。

「良いんだよ、ナナリー。それで」

「・・・お姉様」

母であるマリアンヌが死んでからルルーシュは自分のことを『僕』と称し始めた。それでも場をわきまえていたが。
ルルーシュはナナリーを守る為に強くあろうとしている。ナナリー自身、それを理解していたから強くルルーシュの言葉遣いを咎める事は出来ずにいたのだ。

「ナナリー、外は暑いから中に入ろう?」

「はい」

ナナリーは手探りでルルーシュの背中を確かめながら肩に両手を置いて、ゆっくりとルルーシュの背に自分の体重を預ける。
自分と二つしか歳の違わないルルーシュの背中はやはり小さい。

ナナリーは自分が羽根のように軽くなる事を願うばかりだ。

















後書き

にょたルル小説の過去編。
過去のお話は後二つ程書く予定です。
今後発売するドラマCDの内容によっては書き直しというのもあるかもしれません。

移転更新日:2007/05/21








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