◇CARNIVAL◇



全生徒が集まる体育館のステージ上でこのアッシュフォード学園の生徒会長ミレイ・アッシュフォードはマイクを口元に持っていき、空気を大きく吸い込んだ。

「男女逆転祭り!!みんな楽しんでる?」

『わああああああああ』
『うおおおおおおおお』

ミレイの掛け声に生徒達は雄叫びをあげ、ミレイは満足げに頷く。

「しっかぁし!今回の男女逆転祭りは前回、前々回、はたまた前々前々回とはちっがーう!!なんと!今回の男女逆転祭りは中身も女は男に!男は女にするんだ!!」

最後はハスキーな声で格好良く決めたミレイに女子生徒達からのピンクな叫びが飛び交い、気絶者が数名出てしまった。

「では、ルル子、詳しい説明を頼む」

「え、えぇ・・・会長」

ミレイからマイクを受け取り、ルルーシュは前に出る。
全生徒の視線を一気に浴びてルルーシュは俯いてしまう。ルールを書いたメモ用紙がグシャリと拉(ひしゃ)げた音が遠く感じられた。

しん・・・と静まり返る体育館にルルーシュは不安を覚えるが、皆、ルルーシュの女装姿に見惚れていた。

ルルーシュは濃紺に近い深紫のベルベットのドレスに首もとに白のスカーフ。
大きく開いた姫袖から覗く手はケミカル・レースをあしらえたサテンの短い手袋で白い素肌を隠していた。
両耳の横には綿レースの髪飾り。
髪も本来の髪の色と同じ漆黒でストレートのロングウィッグを付けていて違和感が無い。
顔が綺麗なだけにつり目気味な瞳も高貴さを漂わせていた。

百人中百人が美人だと称すだろう容貌の我が学園の生徒会長(男)は美少女に見事に変身していた。

恥ずかしいのか、眉を八の字にして困っているルルーシュは可憐さを増していて全生徒の胸キュンパラメーターが全力でMAX越えデットヒート!

ルルーシュは勇気を振り絞り、グシャグシャになったメモ帳を広げ、マイクを口元に持っていく。

「え・・・あー・・・・・・こ、今回の男女逆転祭りは恒例通り男子は女装、女子は男装して下さい。尚、今回の祭りは真・男女逆転祭りなので、中身も逆転してなりきること。男子は女言葉、女子は男言葉を喋ることを義務づけま・・・す・・・・・・わ」

恥ずかしさに手を震わせてルルーシュは顔を赤くしていく。
全てはナナリーの為だと自分に言い聞かせても、喋り掛けているのはナナリーではなく全生徒。
格好つけのプライドが済し崩しだ。

しかし、まだ説明は終わっていない。まだある。
しかも女言葉で言わなければならない。

何たる屈辱か・・・ッ。

ミレイを横目に見れば早く言えと言わんばかりにガッツのポーズ。
恨みがましい視線を送っても相手は何のその。ダメージ無し。

諦めて溜息を吐けば、そんなルルーシュの憂い顔に頬を染める生徒多数。もう数え切れない。知らぬは本人だけ。

だが、しかし、やはり言いにくいものは言えない。
また困ったように呻っていると、すっと横から手が伸びてきてルルーシュが持つメモ用紙が奪い取られる。

え?と疑問に横に視線を走らせれば、スザクがメモ用紙の内容を読んでいた。

「スザク・・・」

「違うわ、ルル子。今の私はスザ子よ!スー子でも良いけど」

「・・・・・・・・・スザ・・・子・・・」

頭痛い。

「マイク貸して」

「あ、あぁ・・・じゃない、良いわ・・・よ」

ルルーシュは差し出されたスザクの手にマイクを渡す。
受け取ったスザクはマイクを片手にルール説明を始める。

「今回の祭りはイベントを二つに分けちゃいます!逆転なりきりコンテストと生徒会役員とっ捕まえ鬼ごっこを同時開催よ!!」

『うわああああああああ!!!』

テンションがどえりゃあ高く、女になりきっているスザクをルルーシュは侮れないと思ったとか思ったとか思ったとか・・・以下エンドレス。

いや、しかし、それよりも。

セーラー服姿のスザクに何やら邪な視線が集まっているようにルルーシュは見えた。
悪質な悪戯よりはマシだが、それよりも厄介な・・・アレな視線。

スザクは着痩せするタイプのようだが、セーラー服の上着の丈が短めで腹筋の筋肉が見える。
しかし、赤いスカートから覗く足は結構美脚だ。
顔も童顔。間違った方向に突っ走るのも分からなくもない。

そこでルルーシュはハッとして、首を左右に振った。
違う、違うぞコレは。
スザクが可愛いのは認めるがコレは違う。ソレは違う。

ルルーシュが悶々と悩んでいる間にミレイはスザクからマイクを奪い取る。

「ルール説明が終わったところで補足説明だ!逆転なりきりコンテストはこの枢木スザク改め、枢木スザ子と挑戦者がどちらがなりきっているかを競う!」

「え?」

スザクの口からそんな話は自前に聞いていないと疑問の声が漏れた。

「生徒会役員とっ捕まえ鬼ごっこはみんなが鬼となって、ルル子、リヴァ子、シャリ男、カレ男を捕まえること!誰かを捕まえてオレの前に連れてこれた人には捕まえた人を二時間好きにしていいぜ!!」

「はあ!?」

「なッ」

「ちょっと、会長!てか、シャリオって何!?」

「うぇッ!?」

上からルルーシュ、リヴァル、シャーリー、カレンの叫びが続く。

「あ、スザ子は挑戦者がいなくならないとルル子を助けに行けないから、そこんとこよろしく!」

「そ、それって・・・」

ルルーシュの体力の限界を理解しているスザクは青冷める。

「ルル子狙いの人は誰かと協力してコンテストの方に参加してスザ子を足止めするっていう戦法も有り!スタートの合図をしてルル子達が逃げ出してから三十分後から鬼の人はこの体育館からみんなを追いかけるんだぜ!!」

『きゃああああああああああああ』
『ぐおおおおおおおおおおおおお』

「では、よーい・・・・」

「待て、会長、そんな話はッ」

ルルーシュの制止も敵うことなく、ミレイはマイクを取り上げようとしたルルーシュの手を軽やかに避ける。

「スッターァァァァァァト!!!!!!」



























「四十一人目の挑戦者は三年のシュワルツ君!二人とも頑張るんだぜ!!」

フェンシングが得意そうな騎士っぽい衣装を身に纏うミレイがマイクを片手に白熱の解説をしていた。

「次のお題は何かな、ニナ男!」

「えっと、スカート捲りをされて恥ずかしがる女の子、です」

「よし!それじゃあ、挑戦者から行ってみよう!!」

がっちりした体系の男子はゴスロリナースだった。
黒いスカートを抑えて内股になり、

「ちょっと何すんのよ!このエロガキ〜んv」

ミレイは少し青い顔をしながら口元を押さえ、解説を続ける。

「個性的ななりきりでしたね。では、お次はスザ子!」

スザクは深呼吸を一つ。
自分でスカートを靡かせ、黄色い声が聞こえる中、スザクは広がったスカートを抑える。

「いやん、マイッチングぅ」

何か変だが、違和感が無いのが恐い。
いつの間にかスザクが軍の余興か何かで女言葉を鍛えられたのは全生徒に知れ渡っており、皆が恐るべしブリタニアと思ったとか、思わなかったとか。

そんな軍辞めちまえよ、とも思ったのはご愛嬌である。

「では、先生方判定を!」

ミレイがズバッと手をなぎ払った先で七人の男女逆転した先生が枢木と書かれた札を上げる。
挑戦者の札は無し。
恐るべし、枢木スザク!

「次!」

ミレイの合図と共に次の挑戦者が現れる。
その後ろには百人を越える挑戦者が並んでおり、スザクは意識が遠のきそうになる。
しかし、これを乗り切らなければルルーシュを助けに行くことは出来ない。
両頬を叩き、気合いを入れるスザクであった。
と、そこで、ミレイは体育館に備え付けの時計に目をやる。

「お、もうこんな時間だぜ!生徒会役員とっ捕まえ鬼ごっこの鬼さんは準備OK?走る準備してくれよな。カウントダウン行くぜ!10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、ファイヤー!!!」

全速力で走り出す生徒達。それにスザクは焦りを覚える。

後一時間はもってくれ、ルルーシュ!



























「クソッ、走りにくい・・・・・・わ、ね」

今は一人だが、女言葉を守ってしまうルルーシュは完璧主義である。
なりきれていないが、こればかりは勘弁だ。

ルルーシュはとある扉を開ける。

「フッ、あえて体育館裏にある体育倉庫に隠れるとは誰も思うまい」

一度は校内の方に走って行ったが、あまりスザクとの距離を取っては心細い。

此処ならば体育館からの実況中継の声も聞こえる。
我ながら完璧だ。
後は跳び箱の中に入ってしまえば・・・。

「こんなに近い所に居るわけないだろ?」

「いいじゃない。確認ぐらい」

「そうだけどさー」

ガラガラガラ。

体育倉庫の少し重い扉が手動でスライドされ、ルルーシュはギギギ・・・と振り返る。
そこには数人の生徒が此方を見て、パチリと瞬きをして跳び箱二段分を持ち上げて中に入ろうとしているルルーシュを時間が止まったように見つめた。
仕方ない、此処はギアスを。

ルルーシュは左目に集中する。



























最後の一人を負かし、スザクは勝利に拳を握る。

「百四十六勝零敗!枢木スザ子、正に鉄壁だ!!」

ミレイのコンテスト解説はスザクの勝利で幕を閉じ、次なるターゲットへと移る。

「それでは此処で生徒会役員とっ捕まえ鬼ごっこの実況中継へと移行するぜ!」

それでルルーシュの危機を思い出したスザクは疾風のごとくその場から走り出して、体育館から飛び出す。

「今どんな感じ?ニナ男君」

「えっと、リヴァルは体育館の二階。シャーリーは運動場走ってる。カレンはクラブハウス。ルルーシュ君は・・・あ、今スザク君と合流したみたい」

ノートPCの画面の中でそれぞれのイメージカラーが点滅して移動したりしている。

ミレイはみんなの衣装に小型探索装置を取り付けていた。

「よし!諸君、聞いたか!?リヴァ子はこの体育館の二階!シャリ男はまぁ、目立ってるし、カレ男はクラブハウスってことは生徒会室かな!ルル子とスザ子は合流したみたいだから死に物狂いで頑張れよ!!」

居場所をバラされた者の絶叫が響き渡った。
































◆あとがき◆

CARNIVAL (一般に)お祭り(騒ぎ)。
最初は拍手用に書いていたのですが、前のを更新したの最近のような気がするので普通にサイトアップ。
ピクドラの男女逆転祭りのルル様が本当にお美しかった・・・ホレボレv

スザルルで妄想しまくりですッ
実際の脳内はエロエロに走ってたりします。あはは。

最後は騎士服(ちゃんと男物)のスーさんとドレスなルル様でワルツか何か踊って終わる・・・という脳内妄想エンド。
続く予定は今のところ無しです。
男女逆転祭りネタは他のスザルルサイト様と被ってしまいそうで恐いというのも少なからず。

続きを書けるように研修中に妄想膨らませてみます!


更新日:2007/08/05



ブラウザバックお願いします