◇CHASE◇



廊下を走っていた。

いつの間にか高等部の棟から中等部へ来てしまっていたようだ。
だが、ルール上は校外へ出てしまったら負けだ。中等部は祭り中ではないが、こちらへ来ても問題は無いだろう。

息も上がってきている。
喉を潤そうと近くの水道の蛇口を上に向かせ、ひねり、水を口に含んだ瞬間、水道の後ろで待ち伏せていた三人の男子生徒が女子制服姿で飛び出してきた。

「「「ランペルージ君!」」」

「ブッ」

先程の水を吹き出してしまった。目の前の三人に。
悪いことをしたなと思いつつ、自業自得だとその場を走り去る。

「っくそ、黒の騎士団がいれば連携で・・・」

そこまで言って、言葉を切る。
今はそれどころではない。居たとしてどうする。
どうも出来ないだろう、こんな理由で動かすものでは無い。
思考はそこで途切れた。

後ろからの足音に女子制服を来ているルルーシュは振り返ると、男子制服を着た女子生徒と女子制服を着た男子生徒がごちゃ混ぜになって追ってきていた。
その光景に顔を青くしたルルーシュは速度を上げた。

体力は人並み程度だろう。
それでどうやってタイムアウトまで時間を稼ぐべきか。考えろ。

通路を左に曲がると中等部二年の教室が目に止まった。
騒がれないことを祈り、その教室の扉に手を掛ける。中に入り、扉を締める。暫くするとドドド・・・と複数の足音が扉の前を通り過ぎていく。
窮地は免(まぬが)れた。

溜息を一つ吐き出す。

生徒達の視線が集中する中、ルルーシュは授業中であった教室で指導にあたっている教師を振り返る。

「失礼します」

「あ、ぁぁ」

途切れの悪い返事をしてしまった教師は、そういえば高等部は男女逆転祭の最中だと思い出す。中等部担当のこの男性教師は女子制服姿のルルーシュの声が低かったので頭の中を整理するのに戸惑ってしまった。

「お兄様?」

窓際の一番奥に座るのはルルーシュの妹であるナナリーだ。
先程の声で兄であると確信したナナリーは声のした方に顔を向ける。

「ごめん、ナナリー。ちょっとかくまってくれ」

そう言って、ルルーシュはナナリーの席の後ろにある掃除道具入れのロッカーを開ける。

しかし、そこには先客が居た。

「ルルーシュ君!」

バタン。


閉めた。

かなりがたいの良い男子生徒が女子制服を窮屈そうに着込み、更に窮屈な空間に収まっていた。

見なかったことにしよう。

「ナナリー、この掃除道具入れは開けたら駄目だからな」

にこやかにそう言ったルルーシュにナナリーは首を傾げるが、こくりと首を縦に振った。
よしよし、とナナリーの頭を撫でたルルーシュは空気を換気する為に開け放たれた窓から下を覗き込む。下は中庭だ。

飛び降りれるか・・・。

やはり運動には自信が無い。飛び降りて足を挫いたところを捕まったらお終いだ。無難に廊下から行くか。

しかし、足音がこちらの教室に近づき、扉の前で止まった。
人影が扉のガラスに映る。
やばいと心臓が跳ねる。ルルーシュは窓から飛び降りようと足を掛け、力を足に入れた。

その気配を感じ取った立つことの出来ないナナリーは慌てて、ルルーシュの服の裾を掴もうとするが、その場からでは届かない。

「お兄様!?」

「ルルーシュ!?」

ナナリーの声にワンテンポ遅れてのスザクの声。

「ス、ザク?」

足に入れていた力が抜け、バランスを崩したルルーシュは前のめりになり、宙に浮いたと思った瞬間に落ちていた。

「ほぅぇ!?」

目を瞑る。


中等部の教室を駆け抜け、ナナリーの髪が風ではないものに靡かれ、窓から速度をつけて飛び降りる。


目を開けると、自分が無傷なことにルルーシュは疑問を持つ。
誰かに抱きかかえられている感覚がある。
見上げると苦笑したスザクの顔。

何でだろうと、頭を回転させても現実には追いつかない。

「大丈夫?ルルーシュ」

「あぁ」

そこで思い至る。落ちたのだと。
お前は大丈夫なのかと、スザクの瞳を覗き込む。微笑みが返され、息が詰まる。

「尻餅ついちゃったけど、鍛えてるし」

そういう問題ではないだろうと思うのだが、こうやって地面に下ろされ、立ち上がって砂埃を払うスザクはピンピンしている。
自分も少しは鍛えようかと、ルルーシュは考えた。

「お兄様、スザクさん、大丈夫ですか!?」

友達の手を借りて窓の下を覗き込むナナリーは心配そうに眉を下げている。

「大丈夫だよ、ナナリー!」

「心配かけてごめんね!」

二階の距離を大声でナナリーに無事を伝える二人に複数の足音が近づいてきた。

「ルルーシュ君!」

「スザク君!」

その声にルルーシュとスザクは顔を見合わせ、頷き合うと逃げ出した。




◆あとがき◆

アハハ、やっちゃった☆初ギアス小説をアップ!
短編でスザルル小説を書いてみたわけですが、スザルルか?ちょっと行きすぎた友情程度みたいになってしまった・・・。

甘いの書きたいのに、キスさえなくて申し訳ないです。
なんで追いかけられているんだ!?
うーん、きっと生徒会メンバーのキスが賭けられているのでは。

もうちょっとギャラリーの反応を書きたかったやも・・・。
そして、続きません。続きが読みたいという感想があったら書くかもです。


更新日:2007/01/06



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