18歳未満の方は目が潰れます。
モブ×フリットのエロあり(未遂)。
◆Vertrauen-drei-◆
姿を見せたフリットに仲間達は言葉を無くした。
何も言わない視線だけが突き刺さり、フリットは後ろに下がったものの、ロングスカートにヒールを引っ掛けてしまい、バランスを崩して傾いた。
慣れない服であるため、受け身の取り方が瞬時に判断出来ない。転ぶ衝撃を予想して目を瞑る。
しかし、衝撃はなく、誰かが自分を支えてくれている感触にフリットは閉じていた瞼を持ち上げた。瞳に映ったのはウルフだった。
目を覗き込んでくるウルフにフリットは瞬く。けれど、直ぐにハッとしてやんわりとウルフの腕を解いた。
「すみません」
頭を下げれば、ウルフは複雑な顔をした。なのに、何も言ってはこない。
あれから日数は経っていたが、トイレの個室でのことはお互いに触れずにいた。
任務上の会話も日常会話も今まで通り普通に交わしている。けれど、抱かれてはいなかった。
身体を支えてくれるために抱きとめられただけでも、触られるのが懐かしいほどだった。焦がれていたことを否応なくフリットは自覚させられる。
落としていた視線を持ち上げたが、ウルフと目が合うことはなかった。フリットを横切った彼は一番に部屋を出て行ってしまう。
フリットは前を向いたまま立ちすくんでいた。ウルフを振り返ることは一切せず。ただ、彼の反応を思い返して、両手でドレスのスカートを握った。
静まっているフリットの様子に各々が顔を見合わせる中、副隊長が声をあげる。
「俺達も行かないと後で何か言われるぞ」
言い出しっぺの自分達が遅れてしまっては他の隊から反感を買うことになる。
副隊長がさっさと行けと手を叩く中、フリット以外の彼らがぞろぞろとウルフを追随するように部屋を出て行く。
フリットもゆっくりながら、彼らがいなくなった部屋から移動しようと身体の向きを変える。副隊長はフリットの後ろ姿にぽつりと言葉を掛けた。
「そのドレス、隊長が選んできたんだ」
聞き逃してしまいそうなほど、さり気ない言い草だった。けれど、フリットが動きを止めるには充分なほどだ。
ウルフが選んだという事実に、フリットは愕きを得て目を丸くしていた。
動きを止めたフリットを横切る間際、副隊長は彼女を横目に見遣り、通り過ぎながら頭を掻く。
「早くしろよ」
「今行きます」
はっとしてフリットは顔を上げた。
副隊長はフリットに先を譲り、前を歩かせる。気づけばフリットは仲間達に取り囲まれながら道を進んでいた。これがどういう意味を持つのかフリットには見当が付かず、首を捻っている。
女扱い出来ないと言っていた彼らも、女性らしい服装に身を包んだフリットに目が眩んでいた。流石に男扱い出来るはずがない。
何も話し合ってはいなかったが、全員が自然とフリットを外界から守るように盾になって囲んでいる状態を保つ。
会場として用意したのはレクリエーションルームだ。大きなスクリーンがあり、希望があれば映画の上映などもしてもらえる。
健やかな精神を保つための娯楽は認められているのだ。今回の宴も難なく申請が通り、酒や軽食の持ち込みが許されていた。
まだ開始時間前であったが、フリット達が到着した頃には既に集まっている者達は出来上がっていて、騒がしいの一言に尽きる。
他の隊はウケ狙いなのか、一番ガタイの良い屈強な男に女装させているのばかりで、必然的にフリットが一番まともだった。実際、女性なのだけれど。
空いているテーブルの一つに、ウルフがひとり先に坐していた。そちらに向かい、フリットがウルフから離れた席に座ろうとしたので、彼女と歳が一番近い彼がこっちに座れと誘導する。戸惑うフリットを仲間達が全員でウルフの隣に座らせ、彼女は彼らを見渡した後で恐る恐るウルフを窺った。
隊のメンバー全員が席につき、それぞれで酒盛りを始める。ウルフがビンからグラスに酒を注ごうとしたのを目に止め、フリットはそのビンに触れた。
こちらに顔を向けたウルフと目が合い、フリットはそっとビンを受け取る。
「お酌……やります」
女役はお酌担当だと聞かされている。周囲を見遣れば、各々のテーブルでは屈強な女装男達が低い声をあげながら酒ビンを傾けていた。悲鳴も聞こえる。
「溢すなよ」
「わかってます」
ウルフが掲げたグラスにフリットは酒を注ぐ。
フルーツの香りと色が白いことから白葡萄酒であることが推測出来る。並々と注ぎ終えたフリットはビンのラベルを確認した。ブルゴーニュと記されているということは葡萄はシャルドネだ。
酒類にはまだ明るくないフリットであるが、成人祝いの時にウルフからこれなら飲みやすいと教えてもらったワインだった。
舌あたりが柔らかく、本当に飲みやすかった。気に入るほど飲み慣れているわけではなかったが、此方が美味しいと感想したことを覚えていたのだろうか。
ラベルに視線を落としたままでいれば、自分のテーブル前にグラスが来た。
「お前も飲めよ」
「先に副隊長達にお酌してきますから、後で……」
俺が注いでやると手を差し出してくれたウルフにビンを手渡さず、フリットは立ち上がる動作をしてそんなことを口走った。
ウルフの顔を見ることが出来ないフリットは副隊長から順にお酌していく。
テーブルを一周し終えてしまったフリットは自分の席に戻ってきてしまい、座るのに躊躇する。
フリットの様子にウルフは目を細め、同じ銘柄の新しいビンを開けて、フリットのグラスに注いだ。
「それ、もう空っぽだろ」
指摘通りだ。フリットは空になったビンをテーブルに置き、大人しく席についた。白ワインを注がれたグラスを手に取る。
硬い表情でフリットはグラスを口元に傾け、ワインを戴く。
ちびりと一口飲んだだけだが、やはり口あたりの良い酒だと感想が一番に来る。
頬が綻んだフリットの空気が和らいで、隣で頬杖をついているウルフも満更でもなさそうな顔付きだ。
二人と同じテーブルについている同隊員達は顔を近づけ合って口々に言いはじめる。
「やっぱ、付き合えば良いのにな」
「いや、もう付き合ってるだろ、あれは」
「俺たちに気遣って付き合ってないって言ってるだけじゃないか?アスノは」
彼らは絶賛恋人募集中だった。恋愛経験もない。
彼女持ちの別部隊同僚を羨んで悲愴感を漂わせることもしばしば。そんな自分達をフリットは憐れんでいるのではないかと勘ぐりたくもなる。
「でもまぁ、あいつの性格考えるとそれはないんだよな」
勘ぐった口をきいた本人が続けて言う。
自分にも他人にも正直なところはフリットの長所だと彼らは素直に評価していた。
正直すぎる人間ほど、適度に必要な嘘をつけない。人は無意識のうちに誰かを疑ってしまう。だから嘘をつかない人間は理解しづらい。善人らしさは人間味に欠けるからだ。
実際に善人であるかは兎も角。フリットは誠実であるからこそ他者への理解が早いのに、誠実であることで他者からの理解が得られにくいのだ。
ウルフも嘘をつかない人種であるが、フリットとの違いが存在する。正直なのは自分自身に対してだけに絞られていることだ。それだから上司には使いにくいと嫌煙されている。
AGEシステムの処遇やらでフリットも上司から扱い兼ねる部類にされているが、フリット個人を煙たがるのはウルフに比べれば少数だった。
「隊長とアスノが付き合うなら付き合うで構わないけどな」
皆が頷き合う。
こっそりと声を潜めているからウルフとフリットに会話は筒抜けていない。周りも騒いでいて聞き取れないはずだ。
それなのに、ウルフが此方に視線を寄越してきて彼らはギクリとする。つられてフリットまで此方を振り向くのだから冷汗が止まらなくなる。
何か言われる前に何か言わなくてはと、副隊長が口を開く。
「アスノは」
「アスノ貸してくれないか?」
声が被り、副隊長は口を噤む。ただ、割って入った声にではなく、声の主がフリットの肩に手を回した行動に、だ。なんとなく、嫌らしいものを感じた。
手を回されたフリットの方はこれといった嫌悪感を露わにしておらず、別部隊隊長の言葉の意味を汲み取りかねた顔をしている。
「あの、貸すってどういった用件ですか?」
「周りの見てみろよ、ゴリラばっかだろ」
屈強な女装男達はボディビルダーのようにポーズを決めては、筋肉を競い合いながら豪快にお酌している。
野太い悲鳴が室内に響く中でフリットはやはり真意が掴めずに首を傾げる。
痺れを切らした別部隊隊長の部下が、反対側からフリットの肩に腕を回す。
「正直、一番お前がまともなの」
「……はぁ」
「だから他のテーブルにもお酌してほしいってわけ」
「勝手に話を進めんな」
はぁ、とフリットは生返事を繰り返したが、それを喰うほどにウルフの声が強かった。
顔を上げたフリットは突然、両側の男達から引き剥がされるようにウルフに肩を抱き寄せられる。
「今は俺の女だ」
面を食らう顔を晒した別部隊の二人を目の当たりにし、フリットはウルフの手を払い退けるように立ち上がる。
「冗談が過ぎますよ、隊長」
言葉を失っているフリットに代わり、副隊長が肝を冷やしながら取り繕う。
目を細めるウルフにフリットはムッとした顔を向ける。しかし、ウルフに改める様子はない。それがフリットには気に入らなかった。
「分かりました。お酌だけすればいいんですよね」
向き合う相手を変え、フリットは別部隊の二人に告げる。今度はウルフが不服を表情にする。
「フリット」
呼びかけにフリットはウルフを振り返る。
「説教なら後で聞きます」
有無を言わせないフリットの声色にウルフは悪態をついて酒を煽った。
険悪な空気に副隊長らは脅えつつ、別部隊の二人に連れて行かれるフリットの背中とウルフを交互に見遣る。
「いいんですか?」
「良いも悪いもクソもあるか」
口早に吐き捨てたウルフは苛立ちを隠そうとしていなかった。気が立った眇めを浴びせられた部下達は縮む。
他のテーブルでフリットは粛々とお酌しにまわっていた。極力、口を開かないようにしているため、口元は引き閉じている。
「お前、機嫌悪ぃ?」
「………いえ。グラス」
「あ、ああ。有り難う」
「………」
最初のテーブルを一周したフリットは、別部隊隊長と共に次のテーブルへと移動していく。
それを眺めていた同僚らは、フリットにお酌してもらった酒を掲げながら頭を突き合わせた。
「アスノがやるとは思わなかったな」
「あそこはウルフがいるだろ?ジャンケンとか適当に決めてそう」
「あ〜。それなら納得」
「けど、意外と違和感ないよな。俺、あれならイケるかも」
「いきなりカミングアウトするなって。……まぁ、わかるけど」
足取りにきびきびとした軍人らしい勇ましさがあるが、それ以外の細かい所作は上品だった。育ちの良さからだろうと皆が得心している。少し前までは鍛冶屋もセレブ的な位置づけであった。
しかし、妙な艶めかしさだけは説明の付けようがなかった。
幾つかのテーブルをまわり終え、別部隊隊長が率いる者達が座す席にフリットは誘導される。立ったままお酌にまわろうとするが、フリットは強引に椅子に座らされる。
肩を押さえつけられていた。その手が退かされないことにフリットは不機嫌を表情にする。
「これではお酒をつげませんが」
丁寧にだが、威圧を込めてフリットは背後の別部隊隊長を振り仰ぐ。
しかし、彼は表情一つ変えず。フリットへの返事をせずに、長い若草色に触れる。
「これ、エクステか?良く出来てるな、本物と違いがわからないぜ」
「ぃっ……ええ、まぁ」
強く引っ張られ、フリットは地毛を掴まれる痛みに顔を顰めた。けれど、なに食わぬと取り繕う。
「首とか腕とか、こんなに細かったんだな」
「人並みです」
含んだ言い方が続き、疑心がフリットの内側に生まれてくる。
素肌が露出している二の腕を撫でられれば、流石のフリットも鳥肌を立たせた。思わず、腕を持ち上げてしまう。
その隙に、男の手が脇を通った。膨らみを包む両の五指の感触にフリットは動きを止めざるを得ない。
「柔らかいな。何詰めてんだ?」
「……ッ、………」
捏ねるようにされて、胸の谷間が持ち上がる。
抵抗すれば怪しまれるだろうか。まだ隠し通せるのではないか。
フリットは思考を繰り返すが、刺さる視線の数に息を呑む。恐る恐る顔を上げれば、同じテーブルを挟む男達の視線が此方の胸元に集中している。
厳つい手に揉まれて、柔らかに形を変える胸。目が釘付けになっている男達は唾を飲み込む。
ひそひそと言葉を交わし合う彼らの声が耳に入り、フリットは絶命感に一抹の希望を奪われる。
胸を捏ねている別部隊隊長がドレスの上から探り当てた先端を両方摘む。ビクッと、フリットは身体を震わせて足を擦り合わせる。
硬い印象を持っていたが、かなり調教されているようだとフリットを観察しながら男は思う。
「ウルフも誘うか?」
耳元に落ちた低く暗い声にフリットは腹を据えた。
「いいえ」
短く断りを入れて、フリットは目線を背後の男に送る。
「場所を変えませんか」
乗ってきたと男は口角を上げた。
「隊長、飲みます?」
ウルフの手元を見て、副隊長がボトルを掲げる。
「いらねぇ」
「全然飲んでないじゃないですか」
副隊長の横から余計な声があがり、ウルフは眉間を険しくする。もう少し気を遣えと副隊長は横の彼を小突く。しかし、この際だからと副隊長はウルフに視線を戻した。
「アスノとちゃんと話し合ってください」
「何様のつもりだ、お前」
眇めが飛んできた。しかし、臆さずに副隊長の彼は続ける。
「あのドレス、隊長が選んだって教えたら嬉しそうな顔してましたよ」
「フリットが?」
表情を改めたウルフに副隊長は大きく頷く。
人差し指で頬を掻く様子は珍しく、狼と渾名される男とは思えない反応だ。けれど、だからこそ本気なのではないか。
ドレスはウルフが選んだのだと教えた時、フリットは驚いて固まっていたが、彼女を横切る直前に見た表情は綻んでいた。あんな顔を見てしまっては、どうにかしたい。
お節介で付き合いが良い真面目な誰かに似てるところを見込んで、ウルフは彼を副隊長に据え置いていた。
周囲の人間関係をしっかり観察した上で、仲介役を担うことを率先するところも被る。さもオレンジ頭の盟友に言われているようでウルフは何とも言えない顔で口を曲げる。
ただ、コイツとアイツは違う。何が違うかと言うと、人は好くない。それから、酒が入ると悪化する。
「ケリつけたらどうです?俺らから見ても失敗するとは思えないですし。もし失敗したとしても、今日なら酒のせいに出来るんじゃないですか?」
狡い選択を悪びれなく言うのだ。あの男なら絶対に言わないだろうし、想像も出来ない。
「まあ、アイツもケリはつけろまでは言いそうか」
独り言を聞き取った副隊長達は、立ち上がったウルフを不思議そうに見遣った。
「で、フリットは何処行きやがった?」
あの格好で室内から出て行ったとは考えにくいのだが、周囲を見渡してもフリットらしき姿が見当たらない。
副隊長らも続いて立ち上がり、ウルフに倣う。しかし、誰もフリットを見つけられなかった。
姿を消していることにウルフは何か嫌な匂いを感じた。眉を歪めながらウルフは他のテーブルにフリットがいないか探しにまわり始める。部下達もそれぞれで他部隊の仲が良い者にフリットのことを尋ね探し出す。
会場として使っている広間には貸衣装などを収容しておく倉庫部屋への入り口がある。倉庫と言っても埃臭さはなく、会社の事務室に近い造りだ。化粧台も備え付けてあるのは女性軍人からの要望が取り入られているからだ。今日は女装用控え室として機能している。
化粧台に座って鏡を睨みつけながら、逞しい女装男が付けまつ毛と格闘していた。やっと綺麗に直ったと女装男が立ち上がると、広間の方から此方に入ってくる人影があった。
「あらぁ、たいちょ〜。女子の化粧中に入ってきちゃやーよぉ」
くねくねしながら女装男は自分が所属する隊の隊長と同僚達を人差し指でつつく。隊長は顔を引きつらせて女装男を見上げた。
「お前、癖になってないよな?」
「ぅうん!目覚めちゃいそ!あら?アスノちゃんどーしたの?顔色悪いわよ?」
隊長と同僚達に囲まれているフリットを見つけて、女装男は首を傾げる。
「いえ、平気ですから。お構いなく」
「???」
「アスノはこう言うんだがな。調子悪そうだから、少し此処で休ませてやろうと思ったんだ」
「やだー。たいちょーぉ優しいー」
「お前は広間に戻れよ。折角の晴れ舞台みたいなものだろ」
「はーい!行ってきまーす!」
ゴツい背中がるんるんで広間に戻っていくのを無感動に見送った別部隊隊長は、ゆっくりとフリットを見遣る。
完全に室内の空気が変わる。凍るような面持ちで、フリットの表情に陰りが落ちていた。
「何が、望みですか」
けれど、瞳の強さだけは揺るがずに健在だ。
「分かってるだろ?ウルフのやつは良くて俺らは駄目ってことはないよな。トイレで聞いたぜ?」
あの場に居合わせたのかと、フリットは冷静に納得を示した。
同い歳の彼が入っていた隣の個室とは反対側の方から物音を聞いていたからだ。彼がどちらの個室に入っていたか、あの後で本人から確かめたフリットに驚愕の色はない。
実際、要求も判っていた。ウルフとしていることを、この場にいる全員としろ。それ以外にない。
「まずは下着だけ脱いでもらおうか」
言われ、フリットはスカートの中に両手を忍ばせて、出来る限り見えないようにショーツを脱いだ。
レースの付いた脱ぎ捨てられたそれを見て、女物だと口々に言われる。
「今度はスカートをあげて、大事なところを見せてもらおうかな」
「自分で、ですか……」
「手伝ってほしいか?」
首を横に振り、フリットはスカートの裾を自分の両手で掴む。上に持ちあげれば、素足の腿が晒された。けれど、ギリギリのところで動きを止めてしまう。フリットの手元は震えていた。
「まだ見えてないぞ」
指摘され、ぎゅっとスカートを強く掴む。震えも止まる気配がなかったが、フリットは顔を逸らしてスカートを持ちあげた。
下腹あたりまでスカートをたくし上げ、フリットは下半身を男達の前に晒す。
「ついてないな」
「下の毛も緑だ」
「どうするんです?」
「本物かどうか触って確かめないと、違ったとき失礼だろ」
男が近づいてくる気配があった。けれど、フリットはその場から動かずにじっとしている。そうするしかなかった。
無骨な指先が恥丘に触れる。形を確かめるように、やわやわと掌で揉まれるとフリットは喘ぎを飲み込む。
「ん……」
「向こう側は騒いでるし、声出しても気付かれないぞ」
「……黙ってて、くれるんですよね?」
「このままヤらせてくれるんなら、な」
と、男の指が膣口にねじ込まれる。ずぷりと奥まで二本。
「ッ……、ッ………」
膝が崩れそなのを耐えるようにガクガクと震わせながら、フリットは声を噛み殺す。
「もうグチョグチョじゃないか。ウルフの奴に開発されたのか?それとも見られて感じる好きモノか?」
わざとぐちゅぐちゅと音がするように掻き回され、フリットは首を横に振る。
「ひ、ぅ……ゃぁ……」
スカートを持ち上げていた手を思わず離し、フリットは口元を押さえる。
「おいおい、ちゃんと持ってないとダメだろ」
「ふぇ……すみま、せん」
謝りながらスカートを持ち上げ直したフリットの従順さに別部隊隊長は悦に入って喉と口端を震わす。
フリットの表情を伺えば、唇を噛み締めて、きつく眉を立てている。この粋がる生意気さが何度か癪に障っていたのだ。それが指をまわすだけで崩れる。
「っ、んぅぅ」
ぐちゅっと卑猥な下半身の濡れ音に毅然を保てなくなったフリットは唇と瞼を細かに震わせて腰を跳ねさせた。
男は指の本数を増やして、膣を掻き乱し始める。密やかだった卑猥音が室内に響くほど濡れそぼる。
「や、ぃゃ、ゃああ――ッ」
股からビチャビチャと膣液が溢れるように飛び散り、フリットは絶頂感も伴ってその場で膝を折る。
腰を落としてへたり込んでいるフリットの眼前に、男はフリットのそれで濡れた手を差し出す。
む、とした顔でフリットは男を見上げた。
「お前が汚したんだ、舐めろ」
「………」
逡巡したが、フリットは口を開き、赤い舌を覗かせる。
ぴちゃぴちゃと男の指を舐め上げ、口に含んだりして舌を絡ませるようにして自分のものを掬い取った。
これで文句はないだろうと顔を引いたフリットの目の前に別のものが間髪入れずに差し出される。
男のイチモツを前にフリットは不機嫌を隠せなかった。
「なんだ?その顔。これは舐められないって?」
「……」
「ッ」
眇めを返してきたフリットの生意気さに男の血管がぶちギレる。
「お前らも限界だよな。ちょっと押さえつけて可愛がってやれよ」
別部隊に所属する三人が隊長の言葉に喉を鳴らし、お互いに顔を見合わせてから従いを見せた。
近づいてくる男達をフリットは不安げに見上げるが、抵抗した際のデメリットを考えれば身構える以上のことは出来ない。
自分を囲み、膝をついた彼らの手がまとわりついてきたのにフリットはひくひくと身体を身震いさせる。膣を掻き回された後で敏感になってしまっていた。
胸をはだけさせられ、好き勝手に揉まれる。
何か堪らなくなって口元に手を持っていったり足を擦り合わせるフリットの様子に、彼女を押さえつけている三人も股間の欲望を膨らませる。
「場所も場所だから、時間ないし口で今回は勘弁しといてやろうと思ってたんだがな」
言った別部隊隊長がフリットの両足を左右に開いた。
まさか。と、フリットは腰の疼きを抑え込んで股の間に身体を入れてきた男に視線を集中させる。
直接、男のそれの裏筋が肌に密着していた。ゴムをしていない以前の問題だった。それだけは嫌だと思ったのだ。本気で。
フリットが身体を捻ろうと試みたことに男達は少し驚きつつも、力で押さえつけ直した。
「やだ、いやだ!」
「さっきまで澄ました顔で従ってたくせに。ウルフとあいつらともう乱交済みなんだろ?」
態度を変え始めたフリットに男は苛立ち気味に吐き捨てる。
しかし、そこまで拒否するなら骨の髄まで絶望感を味わわせてやると、冷たい嗤いに豹変する。
フリットの足を割り開いたまま押し付け、男は自分の陰経を女の恥丘に当てがう。
「そら、入りそうだぞ」
「ぃ、やだ……動くな……」
濡れた膣口に自分の裏筋を擦り付けるように男は腰を動かす。
挿入まで至っていないが、男が腰の角度を変えれば簡単に入ってしまう。擦り付けてくる男が何もかもを掌握していることにフリットは恐怖感を覚える。
男根が段々と硬くなっていることが判る。自分が生理的に腰を浮かしてしまっても入ってきてしまうだろう。それが一番怖い。
上半身も男の部下達の手が這っているままで、先端を摘まれる度に下半身が余計に熱くなって腰をくねらしそうになっていた。それを必死に耐えている。
「年上に向かってその口の聞き方はないんじゃないか?」
顎を掴まれたフリットは屈辱やら悔しいやらで表情を歪ませる。
「動かないで、ください」
「よしよし」
「ぁ、違……っ」
擦る速度を速めた男にフリットは腰を小刻みに震わせる。
もう腰が浮いてしまうとフリットは目尻に泪をためながら首を振る。瞼の裏にウルフの姿が浮かんだが、縋れなかった。
向こうにいるのに。扉一枚だけを隔てた向こうに。
こうなる前にちゃんと―――。
その時だ。扉が向こう側から開いた。
閉じていた目を開いたフリットは思ってもみなかった男の姿に目を丸くした。フリットを押さえつけていた男達の視線も扉を開けた男に集中している。
「もう〜、やっだー!つけまがまた取れちゃったわー!」
フリットの足を押さえつけている男の部下だ。先ほど先客としてこの部屋にいた女装男である。
「あら、隊長まだい……」
気付いた女装男が床にへばりついている自分達に言葉を放ったが、途切れた。
しかしフリットはそれよりも、扉の向こうに銀髪と白い肩があることに目線を奪われていた。
少し遠い距離だ。人違いの可能性は捨てきれない。だが、フリットは確信していた。彼は此方の様子に気付いていないが、此方に向かってきているような気がした。探してくれているのではないか。
フリットの身体は反射的に動き出していた。落ちそうなドレスを無意識に押さえ持って扉の向こうに走る。履いていたヒールは片方どこかに行っていて、走っている間に残りの片方も脱げてしまった。
裸足で自分目掛けて駆け寄ってきたフリットにウルフは目を瞠る。胸板に飛び込んできて、ひっしと抱きつくフリットを見下ろして眉と目の間を広くする。
「して」
「フリット?」
向こうから来たが、見つかったことに安堵しようとしていたウルフはフリットの様子に表情を歪ませる。
「ここで良いからしてください」
焦りのある声音と見上げてくる濡れきった翡翠色の瞳が請う。
今になってフリットのドレスが着崩れていることにウルフは気付き、胸の谷間と先端の淡い色が覗いていた。誰かに乱された痕がある。
控え室になっている倉庫部屋をまだ確かめていなかったと、女装男がそちらに向かう時に気付いて足を向かわせようとしていた。
もっと早く行動すべきだったとウルフは扉の先に睨みを向ける。が、フリットのしがみつきが強くなって視線を戻した。
「してください」
グッ……とウルフは顎を引く。フリットから漂ってくる匂いから、何をしてほしいか明確だったからだ。
「ウルフさん」
ったく、そんな顔で見つめてくるなよ。と、ウルフは目を細める。
周囲が只事ではない様子を感じ取って此方に視線を向ける目が増えてきた。こんな場所で公然猥褻など出来るはずがない。
「してぇ」
甘い声にウルフは動いた。
フリットを抱き寄せる。
「黙ってろよ」
冷たいような熱いような頬を撫で、唇を此方に向かせた。
重なり降りてきたウルフの唇にフリットは愕く。それを欲した発言ではなかったから。けれど、ウルフから唇を重ね合わせてくれるのは初めてだった。そもそも、この間ブリーフィングルームで自分からしたのがファーストキスだったのだ。
だから、こんなに熱くなるような喰み合わせがあるのかと、ウルフに思い知らされている。
角度を何度も変えて狼が獲物の唇を貪る。唾液の絡み合う音にフリットは耳朶を痺れさせていた。
得るものと引き換えに身体に力が入らなくなる。あげていた踵が落ちるのに任せて膝を崩してしまうと、ウルフが支えてくれた。それから、そっと抱き寄せられる。
「落ち着いたか?」
その言葉を向けられ、冷静ではなかったことを自覚してフリットは赤面する。
此方の胸板に顔を隠しながらも頷く様子にウルフは一旦、息を吐く。
しかし厄介なことになった。完全に周囲が騒つききっている。
大衆の面前でやらかしたこともだが、フリットが男か女かの議論が始まってしまっていた。これ以上、フリットの素肌を大勢に見られるわけにはいかない。
ウルフは睨みを利かせて、話しかけづらい空気を纏いながら控え室となっている扉に向かった。
中に入ってフリットをやった奴らに一発喰らわせなければ気が済まない。
と思っていたのだが、ややこしいことになっていた。
「アタシというものがありながら、他の女に手を出すなんてー!」
張本人達が締め上げられていた。女装男に。
どうやら彼……今は彼女と表現するべきだろうか。彼女の中では自分は隊長のフィアンセという設定だったらしい。後で本人から聞いた話である。
しかし、現段階で架空事情が飲み込めていないウルフは面倒だと扉を閉めずに蹴り開いた。
バン!と強い音に室内の者達が肩を跳ねさせる。
「すまんが、出てってくれるか」
狼の唸り声に別部隊隊長が震えあがり、女装男は心得たと四人を抱え上げる。
「お仕置きはアタシがしといてあげるわ〜」
常のウルフなら軽口を返しているところだ。だが、鼻を鳴らして一蹴した。
扉を閉める直前で女装男が声色を変える。
「最後まではされてねぇぜ」
扉が閉じた音を聞いて、ウルフは肩から力を抜いた。
抱き寄せているフリットを化粧台前に置かれているパイプ椅子に座らせる。
ドレスの背中にある留め具が壊れてしまっているため、胸元は肌蹴たままだ。
部屋に貸衣装がいくつかあるのは都合が良かったとウルフは服を探す。サイズが合いそうでフリットが抵抗なく着れそうな地味めのものを選び抜いて、彼女の元に持っていく。
「こっちに着替えろ」
「……」
ふるふるとフリットは首を横に振った。
「フリット」
強めに言ったがフリットは変わらず首を横に振るだけだ。
強情なのは知っているが、こんなに心許ない恰好でいさせるわけにはいかない。
「他の服なら着るか?」
「いや、です」
「何でそんな……」
訳が判らんなとウルフは呆れた悪態を吐こうとしたが、フリットが膝上に置いた手で着ているドレスを強く掴んだ。離したくないと言いたげに。
――あのドレス、隊長が選んだって教えたら嬉しそうな顔してましたよ。
副隊長から聞いた言葉を思い出してウルフは顔を逸らした。
「分かった。けどな、ストールぐらい上に羽織れよ」
さっきあった気がするからとウルフは貸衣装の中から再び探しに行こうとした。けれど、ジャケットの袖を掴まれて動きを止める。
掴んできたフリットは此方を見ていない。
「その前に……」
口に出しづらい間を空けて、フリットはウルフを見上げた。
「して、ほしくて」
「駄目だ」
即答された。あまりのことにフリットはウルフから手を放してしまう。
「どうして、ですか……」
いつもウルフから性交を持ち掛けてくる。フリットは今まで自分からしたいと切り出したことがなかった。
「どうして、僕からしてほしいって言ったら駄目なんですか」
「そうじゃねぇ!」
怒声と共に化粧台の机に拳を叩きつきたウルフの行動にフリットは耳を萎縮させた。
「お前、ついこの間のこと忘れたわけじゃないだろ。今までみたいに抱ける保証ねぇんだぞ」
ブリーフィングやトイレでの出来事だ。特に後者はウルフにとって苦い。
「それは……」
フリットの声は震えていなかった。この男は、ウルフは此方のことを大事にしようとしてそんなことを言っていると確信してしまえたからだ。
フリットはドレスのスカートをたくし上げ、素足を腿まで晒す。自分の意思で。
「僕はどうなってもいいです」
だから。してほしい。
フリットの真っ直ぐな眼差しにウルフは面食らう。こんな時に自己犠牲精神を持ち出してくるのはどうかしている。
味を知っている生足を見遣る。本能と衝動を抑えつけて、なけなしの理性で問い質す。
「どうなってもいいなら、壊れちまっても文句はないんだな」
流石にそれは怖いと思ったが、フリットの決意もまたそれ以上に強かった。
だから股を開いて秘部を晒した。
「最初から履いてなかったわけじゃないよな?」
声を顰めて問うてくるウルフにフリットは顔を赤くして、視線を向こうに投げた。その先をウルフもまた視線で追えば、ショーツが床に落ちていた。
視認して直ぐにウルフの指が膣を探ってくる。
「ん」
「……お前、これ」
随分と濡れている。最後まではされていない。その筈だ。だから、どこまでされたのか。
「何された?」
「何って……」
言いにくいのは当然だ。自分とて聞きたくない。
「言わんなら、やめるぞ」
それでも訊かずにはいられなかった。
「………胸、触られて。それから、ここを指で……ぐちゃぐちゃにされ、て……」
「終わりか?」
フリットはかぶりを振る。
「男の人のあれを、擦り付け、られました」
これで終わりだとフリットが恐る恐るウルフを伺えば、彼は表情を消していた。
「やっぱ、聞くもんじゃねーな」
獣声がしたかと思えば、フリットは椅子ごと壁に追いやられる。もともと壁際だったが、椅子の背もたれが壁に当たるほど強く、ウルフが押しやったのだ。
「んぁ」
押される頃にはすでにウルフが自分のものでフリットの膣口から奥を貫いていた。勃たせていなかったが、捻じ込んでしまえば勃起はあっという間だった。
性急すぎるそれにフリットは肩を震わす。生の感触に怯えながらも、ウルフのものだと思うと快感が勝った。
問答無用で腰を振って追い詰めてくる狼を前にフリットは興奮を表情にのせる。
ウルフは衝動の為すがままに眼前の首筋に噛み付いた。
濡れているとはいえ前戯なしの挿入をされた挙句、首を噛まれる痛みはフリットにとって散々だろう。
だが、それくらいでないと此方も収まらない。
「マジでぶっ壊れちまうぞ」
ウルフが言えば、フリットは怯えの匂いを隠さずに眉を下げる。
しかし、自ら足を更に開いてウルフを求めた。彼なら、大事に壊してくれる。
「壊して、ください」
フリットはウルフの背中に腕をまわした。
「上等だ」
噛み締めるようにウルフは言い、フリットを強く抱き返した。
どうなってもいいと口では言いつつも、本当は怯えを持っている。それでも強がりを見せるのがフリットだ。
本来なら安心させてやるべきなのだが、ウルフも気が立っている。正気ではあっても身体の方はそうもいかなかった。
深く抱きしめながらフリットの奥を何度も突く。
「ぁ……ぁ、ぁ」
息が上がってはふはふと呼吸を繰り返す最中、奥にウルフがあたるのを感じる度にフリットの口から嬌声があがる。
「――――アッ」
全身を強張らせるフリットからイった匂いを感じ取ってウルフは締め付けをぐるりと味わってから自身を引き抜く。
引き抜く間際、腰を跳ねさせたフリットは余韻が抜けきらず敏感になっている。
ウルフはしゃがみ込んで、ひくひくとしているそこに舌を這わせた。
「ひゃ……っ、ん、やぁ」
びくびくと痙攣が止まらなくなってしまったフリットはウルフの頭をくしゃりと掴む。このまま舐められ続けたらおかしくなってしまうからやめてほしいのだが、やめてほしくない気持ちもあって遠ざけることが出来ない。
入り口のところをたっぷりと舐められた後で。
「ぅん、そんな……奥」
予想以上にウルフの舌が奥まで届いていた。
けれど最奥にまでは届かない。当たりそうで当たらない切なさに堪らず、フリットはウルフの頭を抱き寄せる。
上目遣いのウルフと目があったフリットは頬を染める。顔を背けてもウルフからの視線を強く感じた。
じっとフリットの横顔を見つめていたウルフは彼女の唇が動くのをしっかりと視認する。声にはしていないが、「もっと」と動いた。
ウルフの舌が膣の舐めあげ方を変えるのをフリットは内側で感じる。蠢く舌の滑りと自身の滑りが混ざり合い絡み合う。
この感触だけはどうにも慣れなくて、背筋がぞくぞくする。
「ふ、あ……ッ、むぅ」
自分の口端から溢れる唾液に気付くとフリットは慌てて指で拭う。
フリットの仕草にクるものがあり、ウルフは舐める口はそのままに片手を自身に添わせる。
自分のを扱きながらフリットにも快感を与えていく。舌で味わい尽くすと、膣液を吸う。
ズズズ、と綺麗ではない音にフリットは瞳を潤ませる。気持ちの整理がまだついていないのに、べろっと狼が膣口の表面を下から上へ舐めあげた。
「んん」
口の中で高い声を飲み込むも、足先が緊張に痺れる。
今イった感じではない。ずっとイきっぱなしの感覚であったであろうフリットの表情は完全に蕩けている。
しゃがみ込みから立ち上がったウルフはフリットの耳元に唇を寄せる。
「舐められるの本当に好きだな」
耳朶の奥がじんじんと痺れを持ち、フリットは瞼を伏せる。
面を下げたことでウルフが弄っている場所に目がいく。寛げられたズボンと下着から覗いているものは充分に勃起していた。
焦がれが満たされる瞬間を想像するだけで熱い息が溢れる。
もの欲しそうなフリットの様子にウルフもまた息を熱くする。横目に鏡があることを意識して、フリットの身体を抱きかかえた。
浮遊感に驚いたフリットは化粧台の上に降ろされる。意味に最初は気付けなかったが、自分の正面に鏡がある。考えを察して身体を隠そうとするも、ウルフが手を伸ばしてきて此方の身体を開く。しゃがんでいる膝を左右に割開かれてしまった。
「持ってないとドレス汚れちまうぞ」
ウルフはフリットのドレスのスカートを捲り上げ、それを持っているように言う。フリットは戸惑いながらもドレスの裾を押さえる。すれば、上からウルフの手が重なる。腕をまわしてきた男に背中から抱きすくめられていた。
「お前は鏡見てろ」
自分がとんでもない格好で映っているのは確かめなくても判る。フリットは見られるわけがないと、それには従える気持ちになれなかったが、股の間に挿入ってくる感覚に思わず事実を鏡で確認してしまう。
「ッ、ゃぁぁ」
接合部がしっかりと見え、フリットは逃げようとする。しかしウルフに抱きとめられていて身動き出来ない。
目を瞑って見なければいいのだが、何故か出来なくてフリットは股を閉じることさえも出来なかった。
「すげ、おっぱいも揺れてる」
密着して揺すりながらウルフはフリットにわざと伝えた。
「ゃ、ゃ」
フリットは首を横に何度も振る。意地の悪いことをしてくるウルフに涙目を向けて訴えた。
「ん?そんな顔すんなよ、精神的にもエッチに壊してほしいんだろ?」
「そんなこと、言ってな……っ」
否定しようとする口を奥を突くことで塞ぐ。
「俺の唾液でグチョグチョになってるここをもっと濡らして、いやらしいところ見せろよ」
「ぃゃ、だめぇ、そこ」
片手を下げ、ウルフはフリットの股に指を這わす。
接合部により近いところにある粒をクリクリと弄り始め、腰も止めない。
「ッ、ッ、ゃ――――」
「ぅ、……はぁ」
きゅうきゅうと締め付けてくるフリットの内側にこれ以上ないくらいウルフは熱くさせらる。堪らず注いだ。
どくどくと脈打ち注がれているのを感じながらフリットは瞼を震わす。焦がれが満たされる。
「気持ち、い」
緩んだ口元が無意識に動いていた。自分が言ったことにフリットは気付けていなかったが、ウルフの耳には届いていた。
「やべぇ」
ウルフはそのまま体位を変えることなく、再び腰をグラインドさせる。
蕩けきっているフリットは身体に任せて嬌声を零し続けた。思考もふわふわとしてくる。それでも鏡に映る姿を受け入れることだけはなかなか出来ない。
恥ずかしすぎてどうにかなってしまいそうで、ウルフが挿入っているのを強く意識してしまう。熱くて熱くて仕方ない。
「ャ、ァァ……、なにか、キちゃ」
「お前もぶちまけちまえよ」
ウルフはフリットの耳を甘噛みした。一際強く最奥を穿って、一気に引き抜いた。
「ぃ、ゃぁぁぁ」
しゃああ、と液体がフリットの股間から放物線を描く。潮を吹いたフリットは足をがくがくと震わせて尻を机についた。
鏡に潮がかかり、水滴が付着していた。やってしまったことにフリットは泪を溜める。しゃくり上げそうなのを無理に耐える。
「フリット」
「あ、ゃ」
抱き締め直し、フリットの濡れてしまっているところをウルフは指で弄りだす。
潮を吹いてしまった後のフリットは理性が霞みやすいと知っていた。
「もっといやらしくしてやるぜ」
鏡越しにウルフと目が合った瞬間、フリットは身体の動きを止めた。だが、内側の鼓動はこれ以上ないくらいに忙しなく脈打っていた。
「ウルフさんの、もっと……もっと欲しぃ」
「ほんっとに、上等」
ウルフはフリットを化粧台から抱き上げると、今度は床に押し倒した。
パイプ椅子がガタリと横倒れる。
「なあ、どうする?」
ウルフ隊のメンバーだけがその場には残っていた。あれから三時間は経っている。任務がある者も参加者にはいたため、フリットのことは後日説明するからと一旦解散させた。
フリットに手を出した奴らは女装男が場所を移動して制裁を下しているはずだ。
「どうするっつってもなぁ」
「絶対さぁ」
静かになると控え室の音が微かに聞こえるのだ。ガタリと硬い音もあった。確認のために扉に耳を当てたら喘ぎ声が聞こえた。
慌てて耳を離して、控え室の扉から遠のいた位置に五人は身を固めている。
「出てくるの待ってるしかないだろ」
「俺らは任務までにはオフの時間あるんだし」
「だよな」
フリットが危険な目にあったのは自分達がこんな宴を開いてしまったからだ。一言謝らねば気が済まない。
二人が出てくるまで謝罪の予行練習をしようと色々と試して繰り返していると、扉を開く音があった。
ウルフ一人だけだろうかと思った直後、彼の後ろから周囲を警戒しながらフリットが顔を覗かせる。てっきり着替えているものと思い込んでいたが、あのドレスのままで、違いは肩にストールを掛けているだけだ。
「あー、フリット、なんて言ったらいいか。ごめんな」
同い歳の彼が前に出ての開口一番に続き、副隊長達もそれぞれ頭を下げる。
目を丸くしたフリットは謝ってもらうことなどないとかぶりを振る。
「遅かれ早かれ、こうなってたはずだ」
嘘がずっとまかり通るとフリットも信じていたわけではない。いずれとかいつかはあると覚悟していた。同時に恐怖もしていたが、それは顔に出さないように抑え込む。
無理矢理組み敷かれそうになったのだって自分の落ち度だ。
その時の恐怖による震えはない。フリットがウルフを見上げれば、彼は目を合わせてきた。たっぷり可愛がってやっただろと目で語られる。
まぁ……。と、フリットはウルフに添えている手でぎゅっとしがみつく。
自分でも我が耳を疑うようなとんでもない発言をしたような気がする。
「フリット、立ってられないなら抱っこしてやるって言ってるだろ」
「いらないって言ったじゃないですか。自分で歩けます」
意地っ張りな主張だった。実際、足の力は戻っていない。支えがあって、ようやく前に歩き出せるくらいだ。
単純に抱っこされるのは恥ずかしいし、格好悪い。それが理由の一つだが、もう一つある。
「……抱きつかれるのが迷惑なら、やめますけど」
自分からウルフに抱きつきたかった。
遠回しな言い方だったが、ウルフには正しく伝わったようだ。目を瞠った後で、目を細められる。
意思疎通が出来ている二人の様子に副隊長らは互いに顔を見合わせて、腰を抜かしたようにその場にへたり込む。
「副隊長?」
「隊長が自暴自棄っぽかったから俺たち心配してたんだけど」
杞憂だったなと、フリットのすっきりした面持ちを見ての安堵だ。
副隊長の言葉にフリットは瞬く。ウルフが自暴自棄だった風には見えなかった。むしろ、自暴自棄になっていたのは自分の方だっただろう。
フリットもだが、ウルフも誤解されやすい。
「それで。おめでとう御座いますって言ったらいいんですかね、隊長」
これは誤解ではなかった。
「ま、そうだな」
ウルフに肩を抱き寄せられ、フリットはきゅうっと身を縮めながらも頷く。
「今日だけじゃなく、これからずっと俺の女だぜ」
背中までウルフの手がまわされたと思った時にはもう相手の唇が目の前にあった。
人目があるからとフリットはウルフの肩を掴んだが、引き剥がすには至らなかった。
◆後書き◆
女装男出したせいでギャグなのかシリアスなのか迷子な話になってしまいました(汗)。台詞一つ書くにしても楽しかったですが…!
モブにもウルフさんにも言葉攻めされちゃうフリットちゃん書けてこれも楽しかった。エロマンガ的展開でフリットちゃんを啼かせるシリーズになってきたような。フリットが言わなさそうなこと言わせるのは迷いもあるんですが興奮します。
通常は身のこなし正しく清潔だからえっちなところ見るとウルフさんもたまらんのやろ?そしてえっちなフリットちゃんをウルフさんがもっとえっちにしていくのじゃよ。
フリットちゃんにどんなドレス着せているかしっかり明記していないので、ウルフさんが選びそうなドレスを想像していただけたらと。
私が書いている時にイメージしていたのは、前に絵で描いた(Galleryページの「フリット女体化詰め合わせ5」の)フリットちゃんに着せた薄緑色のドレスをもう少しロング丈にしたような感じのです。髪型はリボンなしで背中まで流しています。もしものときはご参考(?)までに。
遠回しにですが、ラーガンの存在を匂わせただけでAGE感が出る気がします。ラーガンぱねぇですッ。
フリットが男のふりしてきた理由について今回何も言及出来ませんでしたが、次でたぶん回収して終われると思いますのでもう暫し宜しくお願い致します。
更新日:2016/03/23
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