痴漢はいけないことだと理解している
ロックオンが変態でも大丈夫
上記に当てはまる方はスクロールどうぞ。






















































◆GROPER◆









都会より少し離れているが、朝の通勤ラッシュ一つ手前の時間帯はバスの中の座席を全部埋め尽くして吊革も半分以上誰かに握られている。
毎朝の光景には慣れたもので、短めの黒髪をふわりと揺らしたブラウン色のブレザー姿の少女は後部座席近くの吊革を鞄を持っていない手で掴む。
既にその場所は少女の指定席となりつつあり、今日もその場所が空いていることに少女は安堵してバスが動き出すのに合わせて膝上ほどの丈のスカートが揺れた。

黒髪の少女、刹那はこの先の五つ目のバス停近くの私立高等学校に通う女子高生である。
そして彼女は今日も平和な朝を送るはずだった。

刹那がバスに乗り込み、二つ目のバス停に止まると旅行に出掛けるのか、はたまた里帰りをするのか大きなトランクを引きずっているお年寄りの女性がゆっくりとバスの階段を登ってきた。
その足取りの不安定さに刹那は大丈夫だろうかと思いつつ、自分の隣で立ち止まったおばあさんを見下ろし、吊革に届かないんじゃないだろうかとまた疑問に思う。

そしてバスが動き出した途端に案の定、おばあさんの身体が大きく左に傾いたので、刹那は咄嗟に手を伸ばそうとしたが間に合わないと感じた瞬間、自分よりも先におばあさんの手を掴んだ人がいた。
誰だろうと刹那がおばあさんの手を掴んで自分が座っていた座席を譲っている男を見上げると、男はダークスーツをきっちりと着こなしているが肩まで掛かる長髪が見た目を少し軽く見せていた。それから、スーツにグローブを組み合わせているのが珍妙に映る。

しかし、おばあさんに席を譲ったのだから良い人なんだろうなと刹那は思うだけで、少し痺れてきた手をほぐすように吊革を強く握ったり弱く握ったりを繰り返してぼんやりと景色を眺めていた時だった。
自分の尻をスカート越しに触ってくる掌の感触があり、刹那は鳥肌を立たせる。

人に触れられるのが苦手である刹那は意思を持って触れてくる気配には敏感なこともあり、それを辿れば「え?」と目を丸くした。
おばあさんに席を譲った男が自分を見ないまま、明確に自分のスカートの中に手を射し込んできている。
素手で触られている感触ではないのも、この男の仕業である証拠だ。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いと刹那の頭の中と感情が騒がしくなりどうしたら良いだろうかとちらりと周囲を見渡したが、痴漢されていると気付いていても助けてくれそうな人は誰もいない。

その間にもグローブをされた手は尻上から下へ行き、刹那は瞳を潤ませて唇を噛み締めて耐えるがショーツ越しに敏感すぎる場所を二本の指がコシュと触れて刹那は肩を震わせるのと同時に男が自分の隣の吊革を掴んで、少しばかり自分に身を寄せてきている為にやや左斜め後ろの位置にいることを確認。
左手には鞄を持っているが、武器はこれではなくて自分の肘だ。「目標を駆逐する!」と心の中で叫び、気持ち腰を落とすつもりで男の鳩尾を狙った。

「う゛ッ」

決まった。
男は刹那と吊革から手を離して蹲り、刹那はフンと鼻を鳴らして男を見据えて四つ目のバス停に着くと男の腕を掴んだ。
疑問を浮かべる男の顔に刹那は無表情に告げる。

「降りろ」

男も自分が悪いことをしたという自覚はあるらしく、刹那の言葉に従って一緒にバスから降りた。
バスから降りたのは刹那と痴漢男の二人だけで、普通は痴漢した男と二人きりなど女の子は恐いと思うところだが、刹那は違った。

「痴漢、謝罪は」

「すみませんでした」

「良し。帰れ」

刹那は痴漢男に背を向けて、この距離なら歩いて学校に行っても十分間に合うと歩き出した。けれど。

「あ、あの。待ってくれ!」

痴漢男に呼び止められて、刹那は取り敢えず振り向く。何の感情もない顔で。

「何だ」

「えっと、だな。その…」

「俺は登校中だ。見て分かるだろ」

はっきりしない痴漢男に時間を取られるのは面倒だと言外に言えば、痴漢男は意を決したように刹那に近付き、その細い肩を両手で掴んだ。
俺の尻を触った手で俺の肩に触れるなと言いたかったが、その言葉は痴漢男の言葉で頭の中から掻き消されることになる。

「好きだ!付き合ってくれ!!」

目を見開いて驚く刹那に痴漢男は自分が早まったことを口にしていると気付いていないかのように真剣な瞳で刹那の瞳を見つめていた。
言われた刹那は返答に詰まり、状況が可笑しいことに気付くのに数秒掛かったが、理解すると痴漢男の手を自分の肩から退かすように払い、男を睨み付ける。

「俺はお前のことなんか知らない!」

「俺は知ってる!」

は?とまた刹那が驚いた表情を浮かべると、痴漢男は自分が知っている刹那の全てを語り始めた。

「刹那・F・セイエイ。この先の私立高校に通う一年生。趣味はガンプラ。一人暮らし。身長162センチ。体重49キロ。干支はヒツジ。血液型はA。誕生日4月7日。スリーサイズは上から」

「待て!」

バストサイズが言われる前に刹那は痴漢男の発言を止めた。
この男どこまで知っているんだという気持ち悪さに好奇心など萎えるばかりで刹那は男から後ずさり、ぐっと足に力を入れると痴漢男から完全に背を向けて走り出した。

追い掛けてこない痴漢男に安堵するが、痴漢男は自分の名前を刹那に届くように大声で叫んでいる。
耳を塞ぎたかったが、刹那には痴漢男の名前が頭に入ってきてしまっていてた。
その証拠に校門の前まで必死に走り酸素を途切れ途切れに吸い込み落ち着いてから痴漢男の名前をポツリと呟いてしまう。

「ロックオン・ストラトス…」

そして後々、直ぐに警察に被害届を出さなかったことを悔やむ日が来るとは考えもしなかった。






















『groper』女性の身体に触る人。

エ○動画で痴漢バス見たのがきっかけです(お前何見てんだよって話ですよね)
動画はもっとあんなことやそんなことになってましたが、そこまでは書けないので微エロまで(?)

しかし、こんなロックオンは嫌だ。本当に。
痴漢から始まる恋……ありえねー。
ガンプラ(BB戦士までも網羅)だらけの刹那の家に侵入するロックオンの話も考えているんですが…なんか微妙すぎるか、な。

刹那の干支、西暦を計算したつもりですが間違っていたらすみません。



更新日:2008/11/14


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